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「上から書店員」13:ヴィレヴァンを目指せ!

いらっしゃいませ。

先日、Twitterで「本の品揃えがつまらない書店が多い」「だから本が売れないのでは?」「興味ある本の品揃えを工夫した方が…」というごもっともな意見がバズっておりました。

魚住もそう思います。

特定のジャンルの専門書店でもない限り、大手出版社発行の雑誌や書籍、ベストセラーなど、ターゲット(読者層)がボンヤリしてる本(例えるならテレビの深夜帯でやってた面白い番組がゴールデンタイムになった途端つまらなくなるって感じ)だけが全国どこに行っても手に入るダメダメ商売になっています。本当に欲しい、興味が湧く本が置いてないよね!

付録つけたってダメなもんはダメです。「仮面ライダースナック」のようにカードほしさに中身を捨てられる事態になっているでしょう。

でもね! 元書店員からひと言言わせてもらっていいすか?

実はね、書店は本や雑誌の仕入れや配本に、一切口出しできないようなシステムになっているんです!
(※有象無象書店ホルス無双店など、チェーン店の場合)

店長なのに品揃えも配本数も自分の裁量で仕入れることなんて不可能なんです! 何の意見も通りません。言いなりです。配本されるがままです。

本屋さんは、日本の最大手「取次先」の末端で、何の権限もありません。
近年、小さな取り次ぎ先が頑張っているようですが、まだまだです。
特例は大手の老舗チェーン店である紀伊國屋書店です。「取り次ぎ先」とは一線を画し、独自の仕入れができるはずです。歴史と主義主張がハッキリしていてチカラがあります。
それと、特定ジャンルの専門書店ですかね。

セレクトショップ的な書店もあり、頑張っている書店も増えてきてはいますが、圧倒的に目立つのが廃業する書店。売り上げが落ち込んでいるのと、万引きが原因の一つ。

業界の上層部にいる人たちは、本が売れないのをインターネットやスマホ、電子書籍、アマゾンのせいにしたいようですが、全く見当違いです。あの人たちは誰かのせいにしたいだけです。

確かにコンテンツ発売数は史上最多といわれているのに、本やマンガの売り上げは落ちているのは事実。無料で読める●●村とかいう犯罪サイトのせいもあるかもしれないけど、確実にそれだけじゃない。

やはり最初に申し上げた「本の品揃え」は大切です。それはベストセラーの品揃えではなく、「お客さん、それぞれが興味が湧いてくる品揃え」です。
本やマンガを「ビジネスの道具」としか考えていない人は「書店の品揃え」なんて考えるセンスは持ち合わせていないのです。

ここでちょっと流れを説明します。
取り次ぎ先と契約すると配本してもらえます。
もちろん、タダじゃありません。いくらか分かりませんが、それなりに取られます。

それと、昔から日本の書店には「返本」というシステムがあります。書店を守る制度と言われていました。売れ残ったら返本できる。書店は在庫を抱えておくわけにいかないから返本する。
書店に損は出ない……と思っていませんか?

実は配本でお金取られるうえに、「返本する時にも1冊につき何%か払わなければならない」のですよ! どんだけ金取られるんじゃ!

それともう一つ、返本がほぼ出来ない「責任販売制」というのもあります。
いわゆる「買い取り」です。

魚住が有象無象書店ホルス無双店で働いていた時期に世の中を騒がせた出来事がありました。事実関係がハッキリしないのと、今更なので、実名は伏せて書きます。

A出版社の小説大賞(賞金2000万円だが、後に辞退された)をBさんの作品が受賞したが、後にBさんは実は有名人気俳優だということが分かって「出来レースじゃないか?」「ゴーストライター説」など飛び出して騒動となりました。追い打ちをかけるように「大賞を取るような作品じゃない」「作者が誰であれ、おもしろくない」とバッシングも多かった作品です。

話題にはなって、日本中大騒ぎなワリに作品の前評判が良くない。それを出版社サイドが「責任販売制」にすると決定し、配本数は有象無象書店チェーン店本部が各店何十冊と決めて配本されましたが、まーーーったく売れませんでした。もうねぇ、書店も哀れだけど、本が可哀想です。せっかく生まれてきたのに読まれないなんて……自分の身に置き換えると大声で泣きたい気分です。

▲イラスト:(c)布施月子

ところで最近、コミックスはヴィレッジヴァンガードで探すようにしています。行きつけの美容室のすぐ近くにあるので1カ月に1回のローテですね。
何も前情報も知識もなく、お店に入りフラフラと店内を巡り、表紙買いやタイトル買いする楽しさを思い出しました。
コミックス以外にも目がちかちかする面白い物がいっぱいあるし、写真集やマニアックな文献も見つけられる。軽いヘンタイにはちょうど良い品揃えですね。

ああ、そうだ……。
全国の書店がどんどん廃業して「書店は今後どうなるんだ」なんて寂しい気持ちと勝手な改善案がぐるぐる回るだけだったが、ココがあったよ。

そうだよ。こう思うんだ。

ヴィレヴァンみたいになればいいんだよ……今後、書店が生き残るには。

そして全国の駅前に1軒必ずヴィレヴァンがあればいいのになぁ。

ありがとうございました。またお越しくださいませ。
この連載終了まであと2回ほどです。


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