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スコラ哲学の入口~トマス・アクィナス


古代ギリシャ・ローマの後、ヨーロッパは1000年に及ぶ中世の時代を迎えます。そしてソクラテス、プラトンを主な源流とした西洋思想史は、キリスト教の「神学」に座を譲りました。

しかし12世紀ごろ、アリストテレスによる著書が知識人たちの間で読まれるようになります。

プラトンの弟子であった「万学の祖」アリストテレスは、自然科学を追究し、ソクラテスからプラトンへ引き継がれた観念論(イデア論)とは袂を分かちました。

また、彼は論理学の祖でもあったので、そのロジカルな思想は後のキリスト教とは相容れないものでした。
アリストテレスの考えでは「神様は人間を救済しない」「最後の審判などない」ということになり、キリスト教の神は否定されてしまうのです。

こうして神学(信仰)×哲学(論理)という対立軸が発生し、教会にて「スコラ哲学」が育まれていったのでした。

スコラ哲学とはざっくり、キリスト教神学とアリストテレス哲学との矛盾を解決し、神の実在を証明しようとした学問です。

その代表的人物が、主著「神学大全」などで知られるトマス・アクィナス(1225頃~1274)でした。

アクィナスは、哲学や理性では到達できない領域に神学があると説明しました。つまり、理性(科学・論理)から成る世界の上位に観念的な神学の世界があると説明したのです。こうして教職者の立場で神の領域を守ったのでした。

しかし、カソリシズムからの解放を経た16~17世紀ルネサンス成熟期に、科学の発展とともに西洋哲学史の振り子は理性・論理による「合理主義」へと大きく転じて行きます。

トマス・アクィナス(1225頃ー1274~イタリア・神学者)
聖書研究とアリストテレス研究をきわめた、中世の最も偉大な神学者。
主著「神学大全」「異教徒反駁大全」は、キリスト教思想の百科全書的な要約とされている。彼の著作は、種々の反発や批判を受けながらもローマ・カトリックの思想界において卓越したものとなり、それは現代まで続いている。

哀れみのない正義は冷酷だが
正義のない哀れみは
解体の母である

Justice without mercy is cruelty;
mercy without justice
is the mother of dissolution.


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