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緩和ケア病棟の特別室が画廊になった日


この画廊も次の日の朝までだった

Facebook では「思い出」と称して同じ日の過去の投稿が表示される。
そりゃ いろいろ 思い出すね。
いいことも そうでないことも。

思い出。
受け容れられないこともある。
そんなときは 受け流せばいい。

それらはすべて 事実として起きたことではあるけれども
とどめかたは いろいろあって いい。

今朝 そんな思い出が表示された。

1年前の今日は 病院にいた。
緩和ケア病棟の特別室に いた。

まだコロコロ規制が続いていた頃で
24時間そばにいる方法は 特別室一択しかなかった。

母は 穏やかに肉体から離れようとしていた。
それでもリアクションは 精一杯してくれていた。

外で拾ってきた金木犀のにおいを かがせてあげたり
ほんとはだめなんだけど コーヒーを少し口に届けてあげたり
そうすると ちょっと 反応してくれた。
唯一 意思表示してくれる 左足の先を 動かしてくれた。

部屋ではずっと 俺のCDをかけっぱなしにして
俺の絵で ベッドのそばをいっぱいにした。
それはもう 個展だった。
画廊のようだった。

母ちゃんの愛をたくさん受けて育った 俺は
こんな絵をかけるようになりました
こんな歌をうたえるようになりました
ありがとう
ありがとう

って 精一杯伝える
とてもだいじな時間だった。

そして
次の朝に
母ちゃんは
肉体を離れたんだ。

・・・・・


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