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マッチングアプリ交遊録 Vol159

マッチングアプリをかれこれ3年ほど続けた。
そして、かれこれ150人程の女性に会った。
食事だけで終わることも、
千載一遇、一夜で終わることも
夜の関係が継続することもあった。

とりわけ大きな出来事は、
昨年、苦節2年半、漸くマッチングアプリで
彼女ができた。
そして、2021年のクリスマスの日に、
交際約4ヶ月で別れた。

文字にするとギュッとして、
中身の無い出来事のように、
思えてしまうのは、
単に筆力の無さなのかすらも
わからないままマッチングアプリを続けている。
でも3年も続けるって凄くない?
なんて言ってくれる人どこかにいますか?
いたら、いいねしてください。 

Vol 159 夏の匂いと冷めた現実

来月にはボーナスが控えている。
溜まったエポスカードの負債から
解放される。
不安からの解放感で一心不乱に散財した。
本末が転倒して、酔いのせいか、
酔いが覚めかけた時の現実への焦燥感からか、
いたたまれなくなって駐車場で寝る。

駐車場で寝るのはやはり、やめた。
学生時代までだ。と言い聞かせて
翌朝何もない顔で出勤。
そしてまたストレスで散財。
無限ループから出られなくなった時に、
一筋の光が差したのは日曜日の昼間だ。

いつも通り、下北のサウナで整えていると、
マッチングアプリの通知が鳴った。

「もし良ければこれからキンキンのビールでも!
 キンキンのキリンビールで乾杯しませんか?」

僕は無類の赤星派だったし、
正直何を言っているのかわからない文章だが、
何より、脱衣所の椅子に座り、
窓から溢れる光に照らされてたら、
そんなことどうでも良くなった。

Aさんは、前日にいいねしておいた。
土曜日に家で深酒をしたテンションで、
一心不乱にいいねを押した。

プロフィール写真は、
アー写か?あー釈迦?と思うほどに、
夜の渋谷を背景に気取っていたAさん。

ショートカットの前髪と横髪が、
シンメトリーに顔に枝垂れている。

些か不穏な空気を感じたが、
それもまた一興。
酔いは心を広くする。

「いいですね!下北でどうですか?」

「私今日比谷にいるんで意外といきやすいかも。
 17時で良いですか?」

トントン拍子に予定が決まり、
下北駅前の喧騒に繰り出す。

不穏な空気は、晴れ間と
Aさんが持っていたイッセイミヤケの紙袋、
身にまとう黒のワンピースで一蹴された。

センセーショナルなプロフィール写真とは
裏腹にシンプルな服装と見た目。

この時期のノースリーブは、
爽やかで良いですね。
ノースリーブをつまみに飲めたら、
四文屋でも極上の居酒屋ですよ。

ということで、下北の四文屋へ。

長いこと下北で邂逅してきたけど、
四文屋は初の試みだった。
マッチングアプリの初デートが
それで良いのかというなんの根拠もない
持論があったから。
まあそれも160人と会ってきた今なら、
屁理屈なんて気にしない。

160人と会ってきたのに、
相変わらず話は弾まない。

くるり、フジファブリック、森見登美彦。
音楽や本の趣味は合うはずなのに。

弾まない会話は酒を進ませる。

梅酒割りという劣悪な酒を飲んでから、
意識が朦朧としていた。

うん、黒のワンピースから覗く脇。
セクシーだ。
細身だけど、出るとこ出てないけど長身には
そそられる。

すけべな思いを見透かされたのか。

「Bさんって時々ニヒルな笑みを浮かべますよね。」

変体コミュ障が浮かべるニヒルな笑み。
ニヒルな笑みか悪くないじゃないの。
俺はクールでニヒルな男さ。
じゃあもう一杯行こか。

と、意気揚々と店を飛び出したのは20時。

まだまだ夜はこれからだ。

と思った時に、週末にかけて散財した現実が
ふっと脳内を掠める。

並んで歩くアベックは、
須く恋に落ちるであろう良き陽気。
夏の匂いを感じる夜気。

緯度が180度違う国にいるのでは?
と思うほど、
借金に追い込まれた現実のせいで、
気持ちは冷めていく。

下北。
下の北。

金もないし、苦し紛れに誘った
安い場末の立ち飲み屋、よっちゃん。

案の定、
「私は、入り口まで見送りますね。」

と言われ意気消沈。絶望のまま解散。

冷房の効いた自宅で飲み直す。
冷食のたこ焼きはやっぱ美味しい。

翌朝、二日酔いでカラカラの喉。
おはよう、蒸し暑い月曜日の朝。
また1週間が始まった。
ボーナスが入ってもまた散財して、
マッチングアプリを繰り返すのだろう。

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