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マッチングアプリ交遊録 Vol160

マッチングアプリをかれこれ3年ほど続けた。

そして、かれこれ150人程の女性に会った。

食事だけで終わることも、
千載一遇、一夜で終わることも
夜の関係が継続することもあった。

とりわけ大きな出来事は、
昨年、苦節2年半、漸くマッチングアプリで
彼女ができた。

そして、2021年のクリスマスの日に、
交際約4ヶ月で別れた。

文字にするとギュッとして、
中身の無い出来事のように、
思えてしまうのは、単に筆力の無さなのかすらも
わからないままマッチングアプリを続けている。
でも3年も続けるって凄くない?
なんて言ってくれる人どこかにいますか?
いたら、いいねしてください。 

Vol.160 罪と罰イチ

女心と秋の空、移ろいやすい季節が来た。
ボーナスで完済した借金が
早くも積み上がっている。

当然、僕のメンタルも安定しない。
「秋の空のようだなあ」と、
自己肯定を繰りかえす。

肯定すべきことなんて一つもない。
最近、実家に全く帰っていない。
親不孝だ。
「ふらふらと安定しないのは、
まるで、秋の空のようだなあ」
自己肯定の殻に逃げ込んでいる。

「弟のことで話があります。電話しても良いですか?」平日の夕方に親から届いたLINE。

父、妹、末っ子が鬱の家族の中で、
一番安定していた夏のような弟が
奥さんの借金で不安定な状況にあるようだ。
寝耳に水だった。

金を工面しようか、
と言い出せる財力も
母親が一人奮闘する裁判沙汰に加勢する器量も
何もかも持ち合わせていない。

弟に、「それも経験だな。」と
もっともらしいLINEメッセージだけ投げて、
兄貴面して、現実逃避した。

「頼りない兄貴ですまん。」

もやもやが募る秋の夕暮れ。
僕は一人の女性と会った。

Aさん、32歳。
不動産屋で働いている。

場所は高円寺。
秋になるととかく、高円寺で酒を飲みたくなる。
自立しない人間の墓場のような街で、
屍を肴に飲む酒は、最高の美酒だ。
と、管を巻く酒飲みの自分に
ノスタルジーという冠をかぶせて、
自己肯定の鎧を身にまとう。

いつも行く喫煙可の居酒屋で、
話は運んだ。

恋愛経験が少ないと
会う前の電話で聞いていたけど、
そぐわないクルクルの巻き髪と
長いネイルはキャバ嬢のようだ。
加えて、マシンガントーク。
まるで嘘じゃないか。
ただ、彼女は村上春樹が好きと言う。
なかなかどうして、読書家でもあるらしく、
好きな本の話は止めどない。

光速相槌のリズムに合わせて酒を飲んでいたら、
割と酩酊してしまった。
やれやれ、僕はいつもこうだ。

ただ、なんだかいけそうな気はしていた。
勢いに任せて、彼女の自宅付近にある、
行きつけのバーに向かう。

道中、なんだか様子がおかしい。

「私黙っていたことがあるの。」

ドラマじみたセリフ。
初めて聞いて青天の霹靂。
彼女はバツイチらしい。

しかしここへきて、あとには引けまい。
泥酔に身を任せ、盃を重ねて、
彼女の自宅になだれ込み、
いっそこの邂逅を泥試合としてしまおう。
泥のように眠って、明日になったら、
何もなかったように過ごそう。

と、勢い込んだものの敢えなくノックアウトして、
中座した。
何を隠そう、東北出身の彼女は
酒豪だったのだ。

一人、ラーメンを啜って帰路につく。

やれやれ、一軒目の酒代13000円。
また負債だけ積み上げてしまった。

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