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岡山県・西粟倉村「ローカルベンチャー」の事例から気仙沼市の発展に必要な要素を考える|地域視考

地域を視て考える「地域視考」として、前回は地域のお役に立つ会社がどうして成長するのかを考えた。

地域を再生、あるいは活性化させるには、そこで事業を営む企業が成長する必要がある。少子高齢化や人口減少が課題とされる地方(の自治体)だが、実のところ少子高齢化が進もうと、人口が減少しようと、地方(の自治体)が再生、活性化するのは可能だ。

そもそも自治体にとって、少子高齢化や人口減少が生み出す最たる問題は税収の減少である。つまり自治体の住民の稼ぐ金の総額が減り、行政サービスを運営できなくなってしまうからこそ、少子高齢化や人口減少が頭痛の種となっている。

俯瞰的に考えてみて欲しい。現実問題として少子高齢化や人口減少それ自体を原因として立ち行かなくなっている自治体はないに等しい。たとえばA村の人口が明日突然0人まで減ったとする。そうなったとき、一体誰が困るだろうか。A村の名前が消えるだけで、誰かが困るわけでない(もっともその事務処理に追われる人間は一時的に困るだろうが)。

問題となるのは、A村の人口がある日突然0人にならず、そうならない限りA村は行政サービスを維持し続けなければならないからである。行政サービスを維持するにあたり、何もA村に人間がいる必要はない。金さえあればいくらでも業務を委託可能だからである。

しかしながら住民の数が減っていく中で、人間の数よりも深刻な速度で税収が先細っていく。おかげで行政サービスを維持するための業務を委託することもできず、かといって職員だけでは対応できず、もちろん時々刻々と発生する費用の支払いもできなくなることである。

逆を言えば、金さえどうにかできれば、A村は困らない。だから国や東京都のような多くの金を稼得できる都市がA村に代わってA村の財政を支えるのである。そうした共助の構図が、筆者たちの暮らす現実社会で、多くの自治体を延命させている。

別の観点で考えると、A村の少子高齢化や人口減少がいくら進もうとも、A村の税収が確保されるのであれば、A村は行政サービスを維持でき、国や東京都のような都市も自身の身を切らずに済む。

つまり、A村に金を稼げる企業や人が増えさえすれば、少子高齢化や人口減少はあまり大きな問題にならない。そこで考えたいのが、地域の外から金を稼いで来られる企業である。ということで、今回は「ローカルベンチャー」をテーマに「地域視考」を実施しようと思う。

今回、「ローカルベンチャー」をテーマにするにあたって読んだ書籍が「ローカルベンチャー 地域にはビジネスの可能性があふれている(※上記リンクは広告)」である。

主に多数の起業や多種多様なチャレンジ、移住者の増加などによる”地方の成功例”として取り上げられるケースの多い西粟倉村(にしあわくらそん)での取り組みについて語られた書籍である。

今回のnoteでは、従前通り本書の感想を伝えた後、散策を通じて視た地域の状況などに照らし合わせて、本書で伝えられている内容をどのように気仙沼市に生かせそうかを書く。

前回は2記事に分けたが、今回は本noteのみにまとめるため、ぜひ購入して読んで欲しい。なお、本書の感想を一言でまとめるならば『”地方の成功例”というブランディングに成功した地域の話』である。その感想に至った理由から書いていこう。


岡山県・西粟倉村は本当に成功しているのか

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