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ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)のマジックリアリズム

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ハリウッドを代表する天才監督ポール・トーマス・アンダーソンが映画の中で体験させてくれる魔法のように現実的な瞬間、あたかも現実であるかのように魔法がかかった時間の謎に迫るシリーズで… もっと読む
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アメリカを精神分析する映画入門  〜フィンチャーの『ファイト・クラブ』とポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』からはじめる〜

アメリカを精神分析する映画入門 〜フィンチャーの『ファイト・クラブ』とポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』からはじめる〜

・はじめに

先日、とある方からアルコール依存や薬物依存をはじめとするさまざまな依存症を患っている方たちが運営する互助団体DARC(ダルク)の話を聞いた。曰く、「あそこは半分宗教みたいなもん」なんだそう。
実体験を伴ういきいきとした話しぶりが非常におもしろく、個人的にいろいろと触発される部分があったため、メモ代わりに以下を記す。
結果として、ダルクが掲げるケアの思想“Narcotic Anonym

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おとなとこどもを通り抜けるための技術コンクール  〜『リコリス・ピザ』は青春映画にあらず!〜

おとなとこどもを通り抜けるための技術コンクール 〜『リコリス・ピザ』は青春映画にあらず!〜

イマドキ珍しい正攻法の真っ直ぐなボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーで思春期のきらきらした青臭いときめきを思い起こさせてくれる快作!
という一般的な評価は的外れ。とまではいかないが、その線に沿って考えを進めるとうっかり本質を取り逃してしまうおそれがある。
これは徹頭徹尾、技術を巡って展開される大人の映画だ。

・開巻劈頭2秒でミーツしたボーイとガール、ゲイリー(クーパー・ホフマン)とアラナ(アラナ・

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運命的な失敗作『インヒアレント・ヴァイス』 とちょっぴり小粒な 『アンダー・ザ・シルバーレイク』〜メタディテクティブストーリーと言語学的アポリアについて手のつけられないだらだらしたスピードで語る〜

運命的な失敗作『インヒアレント・ヴァイス』 とちょっぴり小粒な 『アンダー・ザ・シルバーレイク』〜メタディテクティブストーリーと言語学的アポリアについて手のつけられないだらだらしたスピードで語る〜

PTAことポール・トーマス・アンダーソン監督の『インヒアレント・ヴァイス』見た。
冒頭ホアキン・フェニックス演じるドラッグ中毒のヒッピー探偵がディテクティブストーリーの定型たる一人称文体を模倣するモノローグをキメながら朝焼けの港町を闊歩する姿に重ねて世界一かっこいいロックバンドCANのキラーチューン「Vitamin C」が流れはじめヤキ・リーベツァイトの機械のように正確なドラミングのクラッシュのバ

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『パンチドランク・ラブ』 〜電話、移動、連結が生むマジカルなラブストーリー👊🏻💞〜

『パンチドランク・ラブ』 〜電話、移動、連結が生むマジカルなラブストーリー👊🏻💞〜

ポール・トーマス・アンダーソン監督の『パンチドランク・ラブ』(02)見た。
なんで?
なんでこんなおもろい映画が作れんの?

・プロローグ

内気で冴えない青年がデジタルラブ、シミュレーションラブの世界から脱し、走る、殴る、抱き合うといった身体性を伴うアナログラブの世界へ開かれていくお話。
ついでに子供の頃から言いなりになってきた姉に正面切って物申せるようになったまではいいものの、それまで内に向か

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(メモ) “美男美女映画”とホモソーシャル・ホモセクシュアリティ

メモ

・PTAとフィンチャーはホモソーシャル?
PTAのシャクレ好き、フィンチャーのガチメンヘラ好き=なぜそのチョイス!?VSなんか一応みんなが認めるキレイどころも出すんだけどびみょ〜に愛がない感じ。
もし二人に女性嫌悪的な側面があるとすれば、『ゴーン・ガール』と『ファントム・スレッド』をどう見るか?(あるいは反動的な自己弁護?)

・フィル厶の官能の半分ぐらいは美男美女によって作られているので

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