トラウマ

私には今、トラウマがある。

2022卒として、4月から新社会人として働いていた私だが、7月25日をもって退職した。

理由は色々あるため、順番に話していく。

まず1つ目に、合わない人がひとりいたからだ。

仕事には作業手順が書かれた「マニュアル」というものが存在するが、明らかにマニュアルとはそれたことをする先輩がいた。

私もマニュアル通りに完璧に作業しているかと聞かれたらしていないとは思うが、この先輩だけはどうもついていけなかった。

私は真面目で、ルールにはきちんと従いたいため、マニュアルと違ったイレギュラーなことをされると、強く不安感を感じた。

その不安感から、仕事中も鬱っぽくなる。

人前で笑顔が出せなかったり、コミュニケーションがうまく取れなかったりした。

このことがきっかけとなり、私は仕事を辞めたいと思うようになった。

薬を飲んでも鬱が治らず、被害妄想はどんどんと悪化していき、ついに耐えられないと思い、私は心療内科を受診した。

結果、「抑うつ状態」と診断され、1ヶ月の休職を取ることになった。

7月上旬から8月上旬の休職である。

1ヶ月休む前に、上司が「面談をしたい」というため、私は上司と話すことになったのだが、これがまたきっかけで「辞めたい」と思うようになってしまった。

上司と面談をしている時のことだった。

まず私が、仕事で何が起こったのかを説明していく。

「マニュアルと違うことをされて不安になった」

「コミュニケーションがうまく取れなくなってしまった」

「目標を達成できなくて焦ってしまった」

これらを上司に話した。

そうすると、上司から傷つく言葉が何個も飛んできた。

「マニュアルに従わないってそこまで重要なのか?」

「ああいう人はどこにでもいるから」

「あなたは『〇〇じゃないといけない』っていう思考が強いからそうなるんだ」

私は衝撃的だった。

まさか、全て私のことを否定してくるだなんて、思ってもいなかった。

否定の意味で言っていなくとも、私には耐えられない、傷つく言葉だった。


ここで私の意見を言う。

仕事のマニュアルというものは、仕事がより安全に、事故なくできるように作られたものではないのか。

そして、そのマニュアルというものは、社員は従わなくてはならないのではないのか。

さらに、マニュアルに従わない人は叱りを受け、罰せられるべきではないのか。

私はこのような思考をもっていたため、頭の中がこんがらがってしまった。

なぜ、私が、否定されなければいけないのか、わからなかった。

私が間違っているのか?

私はきちんとマニュアルに従って、注意しながら仕事をしていたではないか!

どうして私が、どうして、どうして。

その後の上司との会話はよく覚えていない。

とにかく、パニックになっていた。

泣きそうだけど、とにかく話をしなきゃ。

私が我慢すればいいんだ。

私が耐えればいいんだ。

自分が自分じゃなくなっていくのを、ひたすらに耐えた。

上司はいかにも、「休まれるのは迷惑」と言わんばかりの対応をしていた。

この面談は、私が理不尽な思いをするだけの会話だった。


この日の夜、再び面談を振り返る。

傷つく言葉を言われ、心はボロボロになり、夜寝る前には涙を流していた。

「私が我慢すればいいんだ」って、自分を責めていた。

私が間違っているのかもしれない、いや、上司が間違っているんだ、と、両方の思いが頭の中でぐるぐるとしていて、わからなかった。


次の日も、また次の日も、「私が悪かったんだ」「私が、私が」って泣く日が続いた。

生き地獄みたいだった。

被害妄想が止まらないし、幻覚や幻聴が見えたり聴こえたりして、「死にたい」が口癖になった。

次第に「殺してくれ」と思うようになり、ツイッターの病み垢で殺人募集をかけたこともあった。

とにかく殺して欲しかった。死にたかった。

1日中気分が下がり、誰とも会話をしたくない。

幸いにも食欲はあったため、ご飯は食べられた。

自殺願望が襲ってくる日が数日間続き、本気で死のうと思ったが怖かった。

リストカットしたくてカッターを持ってみたが、持つだけで震えた。

「あぁ、死ねない、死ねない」と、また泣いてしまった。

私は弱いのだ。弱いから、死ねなかったのだ。


そして数週間が経った頃、会社の先輩から電話がかかってきた。

私のことをよく気遣ってくれる、優しい先輩だった。

電話が怖いながらも、電話に出た。

郵送物に関しての電話と、また数日後に体調の確認の電話をする、とのことだった。

私はその時、不健康ながらも、電話で「元気です」と言ってしまった。

嘘をついてしまうのが、私の悪い癖である。

電話が怖いのは元からだったが、また他の不安が襲ってきた。

「もう、誰とも会話をしたくない、会話が怖い」と思ってしまった。

本当はこの時に、「仕事を辞めたいです」と言っておけばよかった。

だけど、言えなかった、怖くて。

またあの時の上司のように「辞めるな」と言われるかもしれないから。

そう言われなくても、「どうして、なぜ」と理由を聞かれるかもしれないから。

それがたまらなく無理だった。

上司のあの言葉がトラウマで、もう話したくなかった。

もしできることなら、誰とも会話せず辞めてしまいたい。

そう思った私は、ある決断をすることになる。


私は、退職代行を使うことにした。

代行の人が、辞める手続きをなんでもやってくれる。

いいサービスだなと思った。

これを使えば、誰とも会話せずに辞められる。

私はすぐお金を払い、退職日を7月25日とした。


そして、25日に無事退職できた。

今まで私の中で溜め込んでいたものが、スーッと外に流れていくのを感じた。

休職してから数日間、生き地獄のような日々が続いていたが、ようやく解放された。

もう何も考えなくていいのだ。

仕事のことも、マニュアルのことも、上司のことも。

もう誰とも会話をしなくていい、気を使わなくていい。

頭の中も、心の中も、何もかもスッキリした気分になった。


会社を辞める数日前に、LINEを消した。

電話番号も、着信拒否にした。

もう何もかも終わったんだ。

辞めてからしばらくは、安心感に浸っていた。


しかし、辞めてからも、トラウマと自殺願望は消えることはなかった。

自問自答の日々が続いていた。

私は本当に会社を辞めてよかったのか?

これについては、辞めてよかったと思っている。

仕事中ずっと鬱っぽくて死にたいと思うくらいなら、辞めたほうがよかった。

私と上司、どちらが正しかった?

これについては、今は、私が正しいと思っている。

私はルールに従ってきちんと仕事をしていた。

冷静に考えれば、私は何も悪いことをしていないのだ。

私がなぜ病まなければいけないのか、わからなかった。


そして、仕事を辞めて次にすることは、新しい仕事探しである。

先ほども言ったように、私は人と話すことが怖いのである。

新しい職場でまたコミュニケーションを取らないといけない、会話をしなくてはならないと考えたとき、非常に怖いのだ。

もう私は、否定をされたくない。

自分をもっと認めてほしい、理解してほしい。

そう思えば思うほど、仕事が怖くなっていくし、遠ざかっていってしまう。


また、新しい職場でマニュアルに従わない人がいたらどうしようという不安もある。

今回私が仕事を辞めた理由のきっかけが、「マニュアルに従わない人がいて不安になる」ということだったが、新しい職場でもこのような人がいたら嫌だ。

マニュアルというものは会社のルールだ。

私はきちんと守っていきたいし、相手もきちんと守ってほしい。

私は間違ったことはしていない。

だけど、もし、またそういう人がいたらと思うと怖くなってしまう。

仕事を見つけては辞め、また探して辞め、というループに入ってしまいそうなのだ。


親にはバイトをしなさいと言われるが、バイトも怖い。

接客業なんて尚更怖い。すぐに辞めてしまいそうだ。


ここまで話したように、私のトラウマは、人と話すことが怖くなってしまったこと、マニュアルに従わない人がいたらどうしようと不安に思っていることである。

私はこのトラウマを乗り越えることができるのだろうか。

人と普段通りに会話ができて、マニュアルと違ったことをされても「それでいっか」と思える日が、くるのだろうか。

毎日「死にたい」が口癖になっているが、死にたいと思わないような日々がいつかくるのだろうか。

今はまだわからない。

これから私がどうやって生きていくのかもわからない。


このトラウマがいつか、消えてくれることを、願うしかない。


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