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第一暗室

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詩と散文
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冬の間は、ときたまビニールハウスに生けてあるネギを引っこ抜いて
土がついたまま肥料袋に入れ、それを勝手口の外に置いておいたり、
育って混み合ってきた水菜を摘んで台所のコップに挿しておいたり、
庭の枯れた金木犀に据えた餌台にスズメのための古米をあてがったり、
部屋の出窓に貼ったプチプチ断熱シートが午前中の日の光でいっぱいになるのを眺めていた。
それくらいしか、することがなかった。

春が来て草の種が

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蜘蛛

第四コースをクロールで泳いでいると、水色のペンキで塗られたプールの底に蜘蛛が一匹いるのが見えた。
親指の先くらいの茶色い蜘蛛で、死んでいるなら水中をただよいそうなものだけれど、底にしっかりつかまっているように見える。
コースは並泳禁止で右側を泳ぐことになっている。飛込み台のある側からスタートし、コースのほぼ中間地点にさしかかるとちょうど真下に蜘蛛がいるのだった。

人が泳いでもプールの底の水には動

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かみなり様が来たよ

ピカピカっと光る と、かえるの声が 恐れをなしたようにちぢこまる かみなり様が 渋る雨の手をひっぱって 連れてきてくれたよ またピカッと光ると 今度はぴたりと黙ってしまった 雨がざんざん降ってきた お祭りがはじまった

掃除

籐のくずかごにぎゅうぎゅうと圧縮して押し込んでいたプラスチックごみがいっぱいになったので、ひとつずつ取り出して捨てることにした。

岩塚製菓の黒豆せんべいのパッケージが、次から次へと6袋も出てきた。

後ろで見ていたお猿が「手品か?」と聞くので違うと答えた。
お猿は七色の、ナイトキャップのような帽子をかぶっている。