見出し画像

かわいい怪獣たちのハートフルな物語。映画『山海経 霊獣図鑑』中国、2022年

『山海経』(せんがいきょう)というのは、中国の大昔の本。奈良時代か、それよりももっと前に日本に伝わっていたらしく、奈良の遺跡から出土した木簡の中にも文章の一部があったとか。日本の『風土記』の参考書になったり、遣唐使のガイドブックになったのではと考える学者さんもいるそうです。

一方、中国の伝統からいえば、荒唐無稽すぎる『山海経』はずっと無視される存在。なぜなら、空想上の怪物がたくさん描かれていたので。顔がたくさんある動物、翼のある動物、身体やしっぽがたくさんある動物などなど。この本の面白さが注目されるようになったのは、ようやく明の時代以降。そのおかげで、日本でも江戸時代に絵のついた和刻本が出回るようになったそうです。

まあ、由来はさておき。アニメ映画『山海経 神獣図鑑』は、中国でみんなが知っている怪物たちが冒険活劇するお話。深い意味とか考えなくても、楽しく見れるお話になっています。

主人公の医者は、白沢(白澤)。ヒロインは九尾狐。主人公に助けを求める子供の麒麟、助っ人はかわいい大根ちゃん。青龍に玄武、朱雀、白虎みたいな超有名所は長老として登場。みんなかわいい3Dキャラクターになっていて笑えます。

白沢(『怪奇鳥獣図鑑』より)
九尾狐(『怪奇鳥獣図鑑』より)

舞台は海に浮かぶ島、崑崙にある病院の崑崙医館。ここで、謎の疫病・黒霊の感染が大拡大して、医館は大破。自信満々だった医者の白沢は、治療に失敗して追放されてしまいます。それでも、あきらめない白沢。どうにかして黒霊に感染した人を治そうとしますが、うまくいくのかどうか。子供向けアニメなので、ハッピーエンドはわかっていますが、それでも楽しいのがキッズアニメのいいところですよね。

その昔、ディズニーがつくった中華的アニメを見ていたら、主人公が北へ旅しているのに、背景がだんだん水墨画の世界(=南の風景)になっていくのでゲンナリした記憶があります。でも、中国で作られたアニメならそういう心配はないのがうれしいです。

ディズニーのアニメだよって見せられても、意外と抵抗なく見れそうなキャラクター・デザインは万人受けしそう。中国それほど興味ない人に勧めても、見てもらえそうなところが実は一番の長所かもしれません。

邦題:山海経 霊獣図鑑(原題:山海教之再見怪獣)
監督:黄健明
制作:中国(2022年)99分


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?