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懐かしの名著といったら怒られる?『京都人だけが知っている』入江敦彦


学生時代に、友達に何度も案内してもらった京都。その後、しばらくして久しぶりに歩いた京都の変わり様にびっくり。とくに、河原町は私の知っている河原町じゃなくなっていました。

本屋さんの看板が変わり、京都っぽい店が減って、ゲームセンターや安売りのお店になっていました。なじみの紅茶屋さんは、なんとか見つかったけど、値段がすごく上がっていてショック。寂しさをかみしめながら、本屋で見つけた、この『京都人だけが知っている』を読みました。

「三代住まないと京都人になれない」。「京都の人にとって”前の戦争”といえば、応仁の乱のこと」などなど、友達から聞いたホンマカイナ?というような京都的こだわりは、この本を読むとすごくよくわかります。

   京都人は知っている
   外からくるものは、かならず悪いものである。
   外からくるものに、とりあえず逆らってはいけない。
   外からくるものもいずれ外へ帰ってゆく。
   外からくるものの名。それは、よそさん。

京都の有名(?)な「おばんざい」の本当の姿、水についての京都のこだわり、喫茶店の若旦那文化、花の都のつけものパリパリ、着倒れ京都の和服について、京都ならではの御利益や「あの世」感、和菓子の伝統に料亭のこだわり、そしてそれらをたばねるところの「幻想都市」京都。

こういうのって、日本人のパリとかニューヨークも同じで、とにかくイメージ先行で、実態は二の次みたいです。今までの本は、そういうイメージを語っていて、現実を言うのは野暮みたいだったけど、入江さんの本は、それを歴史とユーモアで語っているから新鮮です。

入江さんの京都っぽいプライドと、職人的に的確な文章表現は、デフォルメ(=遊び)も含めてイチイチおもしろいです。もちろん、京都的なイケズへのつっこみを笑えるのは、私がもともと東日本のニンゲンだからかもしれませんが。

そして、この本を読んでから、さらに20年ほどたった今。河原町には大好きだった紅茶の店がなくなり、ドラッグストアが増え、おしゃれ系のチェーン店が入って、さらに見知らぬ町になっていました。娘と散歩しながら、学生時代とは全く別の河原町を楽しんでいます。

高校生の娘は、世界史を履修していないけど、この本にある京都を笑えるかな?どうかな??


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