おれだ。バーチャル蠱毒の本選が12月5日夜8時に終了した。12月9日に最終面接が非公開で行われ、翌10日に受肉して活動が始まる。得票数や課金で全てが決まるのではなく、最終的には運営が決めた者が受肉するのだ。これに対して、おれは特に文句はない。おれは時間こそ多少注ぎ込んだが、課金は一銭も行っていないし、九の五も富次郎も妙に面白い魂だった。どうにかなるだろう。受肉できずとも、またどこかで会えるさ。そう思った。

本選終盤はこんな感じだった。ただこのツイートはスレッドだ。詳しいことはそれをみろ。（言われれば消します）

12月5日。本選最終日。おれは九の五の18時からの配信を視聴した。数の力でぶっちぎりの一位だ。シャンパンコールが次々と行われ、ワイワイ賑やかないつもの光景だ。そして宴は終わり、おれは晩飯を食い、下のツイートをして、遅ればせながら富次郎を見に行った。

富次郎は泣いていた。ぐしゃぐしゃに泣いていた。おれはやや心を動かされたが、泣くほどではない。星を投げ、コメントして励ました。笑虹の枠ではNo.006が一位で、富次郎は二位だった。用意された器に受肉できる魂はひとつだけだ。笑虹というよりは富次郎としか言いようがない富次郎は、最終面接で勝利をおさめて笑虹として受肉できるかわからない。富次郎ラーメンに受麺、すなわちラーメン転生するかもしれないし、受肉（チャーシュー）かもしれない。黄衣の王、空飛ぶラーメンモンスターとして、あの黄色い雨合羽の下に触手めいて麺を隠しているのかもしれない。いや、そうではない。普通の弱々しい女子大生がそこにはいた。おれは恋愛感情も性欲も独占欲も彼女らには全然抱かない。いい年なんでな。魂はやらん。祭りを見物に行って雰囲気を楽しみ、周りに合わせてサイリウム振りめいたことをし、元気をもらい、頑張ってる若いやつをできる範囲で応援しただけだ。いらんミームも与えたが。ヘッズとかは少し自重しろ。おれもだが。

そして本選は終了。参加者の自発的な打ち上げ会として「九条家の食卓」というイベントが催された。下の記事をみろ。おれのよりだいぶましだ。

九条林檎の魂たちが、全員ではないが一堂に会し、30分ごとに場所を変えて連続して配信を行う。九の五が九の九（Q様）のところへディナーどもをトレインしたのがきっかけらしい（おれは忍殺実況と被ったのでトレインには参加しなかった）。やや強引だが、別の配信者同士、それに連なるファンたちの交流がハイスピードで始まったのだ。Twitterとも連携し、実況しながらだ。おれがほとんど知らなかった、噂に聞くだけの他の九条たちに直接触れた。各々の「領地」や「民」の文化の違いにも驚き、大規模な文化接触が起きた。クロスオーバー、マッシュアップだ。それは各々の九条の統率力によって和やかに行われ、混乱は起きなかった。5分間ずつ九条同士だけで話し合う「スーパー九条家タイム」というイベントもあり、その間はファンたちは黙って聴いていた。トリの九の九のところでは九条以外の配信者も加えた10分間のイベントとなり、互いの健闘を称え合った。富次郎もいた。

リアルにマネーが飛び交う戦場と化したバーチャル蠱毒の場に、殺伐とした雰囲気や銃弾を撃つ快感を求めて参加した者も多いだろう。相争う魂やファンたちを見下ろして、コロシアムのグラディエーターたちを見るような暗い快感を覚える者もいただろう。おれもそんな感じだ。パロロワや聖杯戦争でさんざん見てきたからな。だが……参加者たちは、そうではなかった。健全に、アンタイ勢を作らないように動き、生き残り、転生し、リアルでDEEPな人生を送り、レポートをコピペし、じゃがりこをかじっていた。アイドルの華やかで浮ついた生活や、大きな物語、サーガというよりは、素朴な人間の営みがそこにあったのだ。おれは感銘を受けた。

この体験をどう言い表わせばいいのか、今もよくわからない。いい年なので泣きはしない。知的、感覚的、歴史的に、この場に立ち会えたことを感謝する。将太の寿司やニンジャスレイヤーにも相当する物語体験の断片に、おれは触れた。それは確かだ。言い表せる人はぜひしてくれ。noteやTwitter、その他の記録媒体に書き記し、拡散してくれ。それぞれの体験は間違いではなく、それぞれがおおいなるなにかの真正の断片だ。それをいつか誰かが編纂し、ひとつにするのかはわからない。それを全て体験するのは困難だろう。配信者の側からも、視聴者の側からも。これから何が起きるのだろうか。

以下、なんかツイートを並べる。うまく言語化できない。感じろ。

今は……以上だ。また整理するかも知れない。

【以上です。】