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「終戦」記念日に日本の「デジタル敗戦」について考える。〜『2025年日本経済再生戦略』は激オススメです。

 8月15日は太平洋戦争の終戦記念日として、TV等で戦争に関連する特別番組が放送されます。普段は気にしてない「終戦」という言葉ですが、日本の産業界がデジタル化に背を向けて、高度成長期の成功体験が捨てられずに、高齢の経営者の、保守的で自己保身的な経営判断で「デジタル敗戦」になってしまっている現状を考えると、日本軍首脳部の明らかな判断ミスで大負けした戦争を「終戦」という言葉でふわっと美化している日本と、それを追認しているマスメディアの姿勢が気になりますね。
 また、あのくらいの国民全体が大変な思いをする「大負け」をしないと、日本は浮上できないのではないかと思うと憂鬱な気持ちになります。
 そんな問題意識でも、この本を読むことを、多くの日本人に強く薦めたいです。大学生や若手ビジネスパーソンや起業家たちにも、子供の進路について考える親にも、大企業の経営者の皆さんにも、それぞれの立場で受け止めて、取り組むべき問題が、具体的かつ、わかりやすくまとめられている本だと思います。

 知見も経験も豊富な二人が、交互に寄稿するような形で、イノベーション、起業、就職、などの論点で、これからの日本人にとって必要なマインドセットを書き記しています。読みながら毎ページで頷き続けて、首が疲れるほどでした。
 全編で通底しているのは、製造業と大企業を中心とした高度成長時代の昭和の仕組みから脱却が必要で、その発想から抜けられない「オジイチャン」たちにこれからの日本の未来の邪魔をさせないことが重要だという主張です。
 まったくもって同感です。今月出版した『最新音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本』は、音楽業界を業界外の方にわかりやすく伝えるという本ですが、僕の問題意識はお二人と共通しています。

音楽業界の迷走は、日本の産業界のあちこちに見受けられる典型的な負けパターンです。一方で、製造業で勝ち組でなくなった日本では、テクノロジーの進化によって始まる次のフェーズで、広義の文化力、ソフト力を活かすことが、世界トップランクへの再浮上の鍵を握っています。そのためには的確な処方箋が必要です。音楽業界低迷の原因を分析し、復活の可能性について考えることは日本の産業界全体に意味があるのではないでしょうか? 「神は細部に宿る」といい ますので、本書ではできるだけ具体的に記述していきますが、同時に抽象化、普遍化のヒントを散りばめていますので他の業種の「再生」にもお役に立てる内容になっているはずです。

はじめに〜~音楽ビジネスと音楽業界について正確な知見を持とう~

 日本の音楽は大きな可能性を持っています。
 多様性と歴史をもったポピュラー音楽の蓄積は世界有数です。アニメやコミックのお陰で、世界中に潜在ファンも存在しています。いまは、有効性を失った「昭和の仕組み」が阻害しています。僕らの世代には、不要になったものは壊し、 整地する責任があると思っています。障害物をどけさえすれば、ポテンシャルを持った若い世代が、日本カルチャーを背負って、グローバルで活躍してくれると信じています。

むすびに~デジタルとグローバルに乗り遅れた国がリープフロッグするためには?~

 本当に微力ながら、日本の未来のために「昭和の仕組み」を壊して整地することにできることから取り組んでいきたいと思います。
 本書で共感した部分の一つに、一流大学出身の人脈=ギルドが有効性を失ッタ時代には、トラステッドなコミュニティの身を置くことが大切という主張です。

 大学などの属性ではなく、個性や敬意、興味によって結びついたコミュニティは年令を重ねるほど、純度が高くなっていく。避けたい相手や疎ましい相手は最初から寄り付かなくなり、逆に、自分とどこか似たような好ましい若者たちが加わるようになってくる

P178

  大学にほとんど行かず、就職経験のない僕には、いわゆる「同期」みたいな友人はいなくて、単純にいうと、尊敬できない人間関係がほとんどありません。「無駄な人付き合い」という経験が希薄なのです。著者のお二人に自分を比べるのは恐れ多いことですが、結果的にですが、トラステッドなコミュニティを若い頃から形成した来たんだなと、この本を読んで思いました。これまでの人間関係とこれから起きる新しい出逢いを本当に大切にしようと改めて思いました。

 他にも、グローバル型の経済や人材に目を奪われすぎずに(それも大切だけれど)人数的には圧倒的に多い国内ローカル型で、エッセンシャルワーカーの収入増みたいな視点が日本経済を強くするために重要だという指摘もありました。
 明治以降の200年を日本の伝統などと決めつけずに、江戸時代の暮らし方を文化を大切にするイタリアも意識するのが、これから日本人のライフスタイルとして参考になるというのも、僕が感じていることです。

 StudioENTREとの関連で言うと、地方の会社に対して、

今どき、わざわざ東京に進出せずとも、地方から一気にグローバル繋がるほうが身軽であり、手っ取り早い

P139

 というのは、ぼくが普段している主張です。とくにエンタメコンテンツ領域では「東京経由」は不要で、無駄な動きになってきました。日本の音楽界、芸能界は東京集中していますが、その価値は大きく目減りしている一方でデジタルサービス経由で「いきなりグローバル」が自然な環境になっています。実は、ほとんど経営が成り立たなくなっているローカルのTV局、ラジオ局は、この「いきなりグローバル」発想で、地域の文化的アイデンティを発信し、インバウンドや越境ECを担うことで、ビジネス構造を変換して「再生」させることが可能だと常々思っています。機会をいただければ、取り組みたいテーマです。

 示唆に富みまくり、日本の未来に向かう処方箋が満載されている『2025年日本経済再生戦略』。デジタル敗戦の大敗北を受け入れて、日本の再生をするために、エンターテック領域は重要です。若い起業家たちと連携して頑張りたいと勇気をもらいました。是非、みなさんも呼んでみて下さい。
 僭越ながら、拙著『最新音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本』にも興味を持っていただけるとありがたいです。

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