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鍼灸師 弱視で盲導犬ユーザー 関東から四国にUターンし 過疎地で治療院経営の傍ら 執筆…

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鍼灸師 弱視で盲導犬ユーザー 関東から四国にUターンし 過疎地で治療院経営の傍ら 執筆活動にいそしんでいます

マガジン

  • 犬のエッセー集

    2020年6月。我が家に盲導犬・エヴァンがやってきました。大阪生まれの♂。やんちゃながらも健気に生きるガイド・ドッグの毎日を、エッセー風に綴ります。

  • 村の少年探偵・隆

    主人公は田舎の少年。舞台は昭和40年前後の四国の山間部。村や学校で起こる数々の“事件”を少年探偵が解決していく。敵役は近所の権蔵爺さん。 (初出:カクヨム)

最近の記事

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My図書室

 はじめに  Uターンに伴う、超めまぐるしい日々から解放され、ブログに投稿する余裕が出てきました。最初、エッセーが中心でした。そのうち、フィクションにも手を染めました。  関東から完全にUターンするのに8年かかりました。この間に視覚障害が進みました。途中でパソコンの画面を白黒反転して、入力するようになりました。多作でした。今年になって立て続けに出版できたのは、これまでの「貯金」のお陰です。  貯えが尽きた時、あるいは完全に失明した時どうするか。創作の喜びは、私を鼓舞し続ける

    • こども施策のゆくえ

       ◆消えゆく自治体  2050年までに、日本では4割の自治体が消滅する可能性がある――こんな分析が24日、発表された。  民間の有識者グループ「人口戦略会議」が国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来人口推計を基に、20~39歳の女性人口が50%以上減少する自治体を「消滅可能性自治体」とした。  ◆ショック療法  日本中に動揺が走った。  分析手法は異なるものの、10年前にも同じような予測が発表され、いわば「第一次ショック」を与えていた。  昨年、こども家庭庁が

      • 『横丁暮色』出版余録

         ◆たわごと  少し気恥ずかしいタイトルではある。「横丁」とは、知る人ぞ知る「人世横丁」のことである。 「あんたに、人世横丁のことがどれだけ分かっているんだ」  と言われれば、黙ってしまう。  しかし、観光ガイドではない。単なる酔客の思い出話である。それに、人世横丁は2008年に灯が消えているのだから、今さら案内しても詮無(せんな)いことだ。  ◆おすそ分け  人世横丁は東京・池袋にあった。故・青江三奈の『池袋の夜』で、全国的に知られるようになった飲み屋街だ。  筆

        • 『イジメ バスターズ』出版余録

           ◆古くて新しいテーマ (いつか書かなければ…)  と思っていたテーマのひとつが、イジメだった。  子供が学齢期の時代はよくイジメに遭った。その頃は学校への対応に追われ、もちろん小説に書くことなど思いもよらなかった。  ◆調査委の報告  私が目を悪くしたので、妻は早くから勤めに出ていた。子供が成人になって就職し、家庭を持って、孫もできた。この境遇に至って、改めてイジメについて考えてみた。  イジメは学校、職場、地域でますます潜行している。イジメの事案が持ち上がるたび

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        My図書室

        マガジン

        • 犬のエッセー集
          12本
        • 村の少年探偵・隆
          15本

        記事

          『イジメ バスターズ』を電子出版しました いろいろな事例が出てきます 「あとがき」では高校のクラスメイトだった大杉漣(本名=隆)の話も書いています https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%A1%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA-%E6%96%B0%E8%A6%8F%E9%9A%8A%E5%93%A1-%E5%A4%A7%E5%8B%9F%E9%9B%86%E4%B8%AD%EF%BC%81-%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%AB-%E5%B1%B1%E8%B0%B7%E9%BA%BB%E4%B9%9F-ebook/dp/B0CW1NMCBD

          『イジメ バスターズ』を電子出版しました いろいろな事例が出てきます 「あとがき」では高校のクラスメイトだった大杉漣(本名=隆)の話も書いています https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%A1%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA-%E6%96%B0%E8%A6%8F%E9%9A%8A%E5%93%A1-%E5%A4%A7%E5%8B%9F%E9%9B%86%E4%B8%AD%EF%BC%81-%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%AB-%E5%B1%B1%E8%B0%B7%E9%BA%BB%E4%B9%9F-ebook/dp/B0CW1NMCBD

          消費者対応

             ◇ああ、サプリメント  大阪の製薬会社が発売したサプリメントによる健康被害が広がっている。  気の毒に、良かれと思って購入し、飲み続けていたのだろう。有害な成分が含まれていた、とはブラックユーモアをさえ通り越している。  関係筋から、会社側の対応の遅さ・まずさが批判されている。人命、人の健康をなんと思っていたのだろう。万死に値する。   ◇昆虫食  東京で仕事をしていた頃、飲んで遅くなりホテルで泊まることがたまにあった。朝、空腹を覚える。コンビニでパックにな

          消費者対応

          たかが学校されど学校

           ◇カンニング  大阪の、いわゆる名門私立高校が不適切な指導を行ったとして、自殺した生徒の両親が訴訟を起こす、と報じられた(毎日新聞 3月22日)。  当該生徒は試験でカンニングが見つかり、叱責の末、処分された。その2日後、自殺しているのが発見された。  学校では常々、カンニングはひきょう者のやることだと説いてきた。生徒はひきょう者と思われながら生きていく方が怖くなった、と遺書を遺していた。  学校は、指導と自殺に因果関係はない、としているらしい。  いずれにしても、痛ま

          たかが学校されど学校

          春雪

           ◇起き上がり小法師  いつになく、盲導犬のエヴァンが鳴いた。  一声だけだった。何かを要求しているか、何かを知らせている鳴き方だ。  寒くても、起きるのが辛いと感じたことは、あまりなかった。 「トイレ、我慢しているだろうな」  と思い、跳ね起きることにしていた。  関東に住んでいたころ、健康のために合気道教室に通ったことがある。ほとんど身に付かなかった。ただ、受け身を応用し、起き上がり小法師よろしく、体を起こす方法を考案した。  今朝はそれが役立った。眠いのは春がき

          村の少年探偵・隆 その15 スクーター

           第1話 少年探偵・健  I街道は、四国の大河・Y川の支流・I 川に沿って山奥まで抜かれている。小杉隆の通った学校は街道のそば、猫の額ほどの校地に建てられていた。そこから先は集落もまばらになり、いよいよ秘境に足を踏み入れた感が強くなった。  I街道は御多分にもれず、昔は舗装されていなかった。クルマは曲がりくねったデコボコ道を、土煙を上げながら往来した。それかあらぬか「I街道を行くバスの運転手の腕は日本一」などと言われたものだった。  メインの街道からして、このような道路

          村の少年探偵・隆 その15 スクーター

          村の少年探偵・隆 その14 事ども

             第1話 門付  四国の山間部、とりわけ千足村のような陸の孤島では、外部との接触はほとんどなかった。  ふだん顔を合わせるのは、馴染みの村人か郵便屋さんくらいだった。このため、外部の出入りがあると、いやがうえにも目立った。  そのうちの一人が、三番叟まわしだった。  村に、天秤棒で前後に箱を担いだ人間が現れる。  何軒かの家の玄関に立つ。足元に置いた箱から、何やら取り出す。人形だった。手足が長く、だらんとしている。服の中に手を入れると、まるで生きている人間の

          村の少年探偵・隆 その14 事ども

          村の少年探偵・隆 その13 地図

           第1話 陸蒸気  隆には密かな自負があった。  洋一きょうだいにも、その従弟の修司にも、自慢したことはなかった。  それは、蒸気機関車を見たことがあるということ。さらに、一人で乗った経験があるということだった。  生まれ育った千足村そのものは、周囲を山に囲まれていた。母親の実家が隣村にあり、幼いころから遊びに行った。北方へI川の渓谷が延びる。その先に駅があった。名もI口駅と言った。秘境の入り口であることを意味する。  運が良ければ、蒸気機関車が煙を吐くところが見えた

          村の少年探偵・隆 その13 地図

          村の少年探偵・隆 その12 ヤングケアラー

           第1話 天才ハンター  田舎の生活はまったりしていた。村の衆は少々のことでは腹は立てなかった。  それでも、例外はあった。蜘蛛の巣だけは、シャクにさわった。朝一番に道を通ったりすると、体にベチャとくっついた。中には強力な粘着質のものもあって、剝がすのにひと苦労した。  別に蜘蛛が人間の領域を侵犯したわけではない。逆である。  蜘蛛はせっせと糸を張る。空中ブランコよろしく、要所要所に糸を結んでいく。外枠ができれば、中心に向けて糸を張っていく。  後は獲物が通り掛かるの

          村の少年探偵・隆 その12 ヤングケアラー

          村の少年探偵・隆 その11 汚染

           第1話 憂鬱の春  I街道の左右に、小さな商店街が軒を連ねていた。I川を渡って山道に入ると、千足村の入り口までは、出会う人は希だった。  子供たちは道草しながら、帰宅した。植林された杉が大きくなり、道の下手のものは子供たちの背丈くらいに育っていた。  春先には、重く垂れた杉の枝を棒で叩くと、パーッと煙が立った。杉花粉である。意味もない遊びではあるが、子供たちにとっては春の風物詩のひとつだった。  通学路の周囲に、杉林が広がっていった。  隆の家の奥にも、杉林はあった。

          村の少年探偵・隆 その11 汚染

          村の少年探偵・隆 その10 上には上

           第1話 山の学校の今昔  隆たちの通った学校は、I街道沿い、I川とM川との合流地点にあった。狭い校地だった。ただ、あの辺りで学校建設地を探すとなると、ほかに候補地は見つからない。選択の余地はなかったのだろう。  まず中心部に小学校が建てられ、運動場はその手前に整地されたものと思われる。次に奥の山を削って中学校が建てられ、運動場の隅を幼稚園舎に充てた。  途中、小学校には分校も開設されるなど、戦前・戦中・戦後の学校教育史が凝縮されたような「山の学び舎」だった。  隆は

          村の少年探偵・隆 その10 上には上

          村の少年探偵・隆 その9 動物愛護

           まえがき  拙作を、人権学習講師にお招きいただいた、W中学1年生の皆さんと関係者に捧げます。  第1話 猫やーい  昔から、捨て犬・捨て猫はあったはずだ。ところが四国の山奥で育った隆には、捨て猫を見た記憶があまりない。特に生まれたばかりの仔猫にとって、山間部の環境は生存していくには厳しかったのかもしれない。  隆の家でも、猫を飼っていた時期があった。  普段なら洋一や修司と山に遊びに行くところを、その日に限り、飼い猫を連れて山に入って行った。  猫はあちこち寄り道

          村の少年探偵・隆 その9 動物愛護

          村の少年探偵・隆 その8 妖怪

             第1話 タヌキ県・徳島  狐狸。キツネとタヌキは昔から、あまり人間に信用されていない。人を化かす、とかの理由で警戒されてきたのである。 「狐狸妖怪の類」などと一緒くたにされるが、徳島では妖怪と言えばまずタヌキ。キツネとは格が違うのである。  確かにI地方では「自分は本当にキツネに化かされた」と証言する人もいることはいる。また、千足村の近くのY村には、多くの妖怪伝説が残る。やはり特徴的なのは、タヌキに化かされた話が多いことだ。  徳島の妖怪タヌキを代表するのが「金

          村の少年探偵・隆 その8 妖怪