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山﨑白露
2023年8月28日 21:15
美味いさかな、それはなんと言っても、少数の例外は別として関西魚である。さかなによっては、紀州、四国、九州ももちろん瀬戸内海に同列するものである。伊勢湾あたりから漸時西方に向かい、瀬戸内海に入るに及んでは、誰しもなるほどと合点せざるを得ないまでに、段違いの美味さをもつことは、つとに天下の等しく認めるところで、関東魚はこの点、一言半句なく関西魚の前に頭を下げずにはいられない。しかし、例外の逸品にかか
2023年8月23日 19:18
鮎は水が清くて、流れの急な、比較的川幅の広い川で育ったのでないと、発育が充分でなく、その上、味も香気も、ともによくない。これが鮎のよしあしを決定する大体の条件である。 食べるにははらわたを抜かないで、塩焼きにし、蓼酢によるのが一番味が完全で、しかも、香気を失わないでよい。醤油をつけて照り焼きなどにすれば、醤油の香りや味醂に邪魔され、その天稟の香気は、たちまち滅してしまう。また、そのはらわたを抜
2023年8月12日 22:16
鮎の美味いのは大きさから言うと、一寸五分ぐらいから四、五寸ぐらいまでのものである。それ以上に大きく育ったものは、第一香気が失われ、大味で不味い。卵を持ち始めると、そのほうへ精分を取られるためか、香気を失うばかりでなく、肉が粗野になり、すべてに下品になる。 鮎のどの部分が一番美味かと言えば、はらわたを持った部分である。もちろん、新鮮でなくてはいけない。頭も特殊な味はあるが、四、五寸にもなると、ガ
2023年8月5日 17:19
あゆをうまく食うには、あゆの成長と鮮度が大いに関係する。京阪や東京でいうと、七月がよい。地方によっては、早い遅いがある。子を持つ前の最大なのがよい。子を持ってからは二番目といってよい。見た目に見事なのを喜ぶ者もあるが、これは素人の話、東京でも盛んにあゆを賞味するので、河岸には日本全国からイヤというほど送られて来るが、東京であゆをうまく食おうとするのは土台無理な話で、かれこれいうのがおかしい。あゆ
2023年7月30日 12:36
あゆがうまいという話は、味覚にあこがれを持ちながら、自由に食うことのできない貧乏書生などにとっては、絶えざる憧憬の的である。わたしも青年の頃、ご多分に漏れず、あゆを心ゆくまで食いたいと夢にまでみた時代があった。この夢を実現したのは二十四、五歳のころであったろうか。もちろんそれまでにあゆを全く口にしなかったわけではない。だが、あゆ通の喜ぶ上等のあゆによって、あゆの美味をテストするという意気込みで食
2023年7月24日 20:13
いろいろな事情で、ふつうの家庭では、鮎を美味く食うように料理はできない。鮎はまず三、四寸ものを塩焼きにして食うのが本手であろうが、生きた鮎や新鮮なものを手に入れるということが、家庭ではできにくい。地方では、ところによりこれのできる家庭もあろうが、東京では絶対にできないといってよい。東京の状況がそうさせるのである。仮に生きた鮎が手に入るとしても、素人がこれを上手に串に刺して焼くということはできるも
2023年7月18日 21:43
小島政二郎君 シカゴの話の続きを書きます。シカゴでは、もう一軒、アイルランド人の経営している料理屋へ行ってみました。ここはやはりロブスター(伊勢えびの類。ただし伊勢えびには鋏がないが、ロブスターにはザリガニのように大きなはさみがある。はさみの大きさ、全身の三分の二くらい)の料理を売り物にしています。 水族館のように、ガラスのケースの中に塩水を満たし、それがロブスターの生簀というわけです。客は
2023年7月13日 22:23
この料理は、東京に昔からあるものだが、大きいのでちょっと厄介である。金串を打つのにコツがあり、なにも知らずに、ただやたらに何本も串を打ってはいけない。 最初に金串を扇形になるように打つ。それからあとは何本打とうと、扇の要のところを中心にすれば適当に打ってよい。そうすると、手で持つのに便利であるし、焼けても扱うたびに身がこわれるという心配はなくなる。実際やっているのをごらんになれば、一目で納得さ