蘆澤 雄亮

元・グッドデザイン賞の事務局員、現・大学教員です。

蘆澤 雄亮

元・グッドデザイン賞の事務局員、現・大学教員です。

マガジン

  • グッドデザイン賞を受賞した「よきものたち」

    グッドデザイン賞を受賞したものたちの中には「これはみんなにも知っておいて欲しい」というものもたくさんあります。そんな「これは知っておいて欲しい」というものについて解説してみたいと思います。

最近の記事

2-2 進化生物学的にみた「人間」(2章:「よいデザイン」という難題)

(Last Updated : 2019.10.11 / Version.1.1) 前回のノートでは「よいデザインとは?」というお題に始まり、人間の行動がいかにして非合理的かつ不確実なものであるかを説明しました。このノートでは人間を「生物」というレベルから俯瞰して眺めてみながら、人間の行動法則と「よいデザイン」へのヒントを探ってみたいと思います。 「人間の生きる目的」から始まる世界人間を生物として考えた場合、ひとつの大きな質問が我々の目の前に立ちはだかります。それは「人間

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    • 2-1 よく分からない「人間」(2章:「よいデザイン」という難題)

      (Last Updated : 2019.10.1 / Version.1) 前章では「デザインとは?」というお題について述べました。その中でデザインの歴史を踏まえつつ「デザインの中心には人間がいる」ということを説明しました。そして、この中心たる人間はデザインの基本構造において「想像」という場面で「評価」として機能することを説明しました。 ということで、2章ではこの「評価(Evaluation)」に着目してみたいと思います。簡単にいうなれば「よいデザインとは何か?」という

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      • #005 2013年度特別賞「非常用圧縮毛布」

        私がグッドデザイン賞の職員だった頃、熊本地震が発生しました。その前には東日本大震災もありました。そのような中にあって日々「グッドデザイン賞で何か役に立てることはないか?」を考えていました。 そんな時にふと「そういえば、グッドデザイン賞を受賞したモノの中にも防災に役立つデザインがたくさんあるよなぁ」というコトに気がつき「ならばそのよきデザインたちを世に紹介するのが役目か」と思い「そなえるデザイン」というプロジェクトを立ち上げました。半ばワガママのように始めたプロジェクトですが、

        • 1-2 デザインの基本構造(1章:デザインとは?)

          (Last Updated : 2019.10.25 / Version.1.3) 前のノートではデザインの歴史を簡単に紐解きながら、デザインの重要な核は「人間(ユーザ)を中心に据えて考え、何かしらを設計する」ということあるのを説明しました。このノートでは「これを構造的に考えた場合、いかなる構造になるか?」について迫ってみたいと思います。 ご近所のアートさんデザインの話をしようとした時に、よく一緒について回る話がひとつあります。それは「アートとの違い」です。何か「新しい物

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        • グッドデザイン賞を受賞した「よきものたち」
          5本

        記事

          #004 2013年度ベスト100「木箱212構法」

          今回ご紹介するのは木造住宅用のラーメン構法として受賞した「木箱212構法」です。建築に関してはズブの素人な私ですが、これについては「なるほど〜」と感心しました。もしも私が家を建てるならば、この構法で建てたいなぁと思う次第です。ちなみにこの構法は葛西潔建築設計事務所が特許を取得しています。いわゆるフリーランス系といわれるような建築設計事務所が特許を取得している点も注目ポイントのひとつです。 そもそもラーメン構法とは?ラーメンというとズルズルっと食べるあのラーメンを想像するかも

          #004 2013年度ベスト100「木箱212構法」

          1-1 デザインとはなんぞや?(1章:デザインとは?)

          (Last Updated : 2019.8.14 / Version.1) このノートではデザインの歴史についてザッと振り返りながら「デザインとはなんぞや?」について解説します。 「デザイン」を説明するのは難しい!?実は「デザインとは何か?」について断定的に説明するのは極めて難しいです。というのも、言葉の意味は時代とともに変わってしまうからです。 例えば「おどろく」という言葉は、現代語では「びっくりする」という意味ですが、平安時代の文書では「ハッと目を覚ます」といった

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          1-1 デザインとはなんぞや?(1章:デザインとは?)

          #003 2016年度特別賞「トーコーキッチン」

          インタビュー取材をしたこともあり、個人的にも思い入れのある事例です。デザイン的には「仕組みづくり」がとても面白い事例です。 「トーコーキッチン」とは?トーコーキッチンとは淵野辺の不動産会社である東郊住宅社が運営する「東郊住宅社で管理する物件の入居者"のみ"が使える食堂」です。より正確に表現するならば「"入居者とその仲間たち"のみが使える食堂」です。なんのことやらさっぱり分からないという方が大半かと思いますので、もう少し丁寧にご説明したいと思います。 まず、東郊住宅社ではす

          #003 2016年度特別賞「トーコーキッチン」

          #002 2014年度金賞「剣フック」

          これはデザインの導入授業で必ずといっていいほど紹介する事例です。まさにプロダクトデザインの真骨頂とも言うべきデザインだと思っています。 「剣フック」はランヤードの環剣フックはランヤードの構成部品のひとつです。ランヤードとは和名で安全帯と呼ばれている「高所作業者が落下しないように命綱を体につなげるための装備品」を指します。構成部品は大雑把に分けて 1.環(カラビナ)と呼ばれるフック部分 2.紐 3.体につなぐベルト部分 の3つで構成されています。使用シーンはどのような状態

          #002 2014年度金賞「剣フック」

          @001 印西市のカフェ「宮崎邸」

          先日、妻の誕生日ということで休みを取り、ちょいと遠出をしてみました。訪れたのは千葉県印西市にある古民家カフェ「宮崎邸」です。たまたまご主人と雑談をしたのですが、これまた面白かったので、その話を少し。 そもそも宮崎邸とは?千葉県印西市は「千葉ニュータウン中央」駅から車で約10分程度のところにある古民家カフェです。家がぽつぽつと建っている農村地帯の中にあります。営業は「木・金・土」の11〜17時のみです。ランチは日替わり1種類のみで1,800円です。今回はランチのみでお邪魔した

          @001 印西市のカフェ「宮崎邸」

          #001 2014年度金賞「桜ライン311」

          私がグッドデザイン賞事務局をやっていた時代に見た受賞対象の中でも、最も「これはすごい!」と思ったのが、この桜ライン311です。 そもそも桜ライン311って?東日本大震災において発生した津波によって甚大な被害を被った陸前高田市、多くの方がお亡くなりになりました。いつの日かもう一度、同じ災害が発生した時に被害をどうにかして少なくできないか?ということを考え、始まった非営利活動です。やろうとしていること自体はとてもシンプルです。 津波が到達したラインに桜を植樹して、桜のラインを

          #001 2014年度金賞「桜ライン311」