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井上毅郎評 アンナ・アスラニアン『生と死を分ける翻訳――聖書から機械翻訳まで』(小川浩一訳出、草思社)
人間とともに存在し続ける営み――通訳・翻訳という営みの本質を、歴史上の出来事に著者自身の知見を交えながら紐解く
井上毅郎
生と死を分ける翻訳――聖書から機械翻訳まで
アンナ・アスラニアン 著、小川浩一 訳
草思社
■翻訳・通訳という仕事はおよそ人間が言語を使い始めたときから存在していると考えてよいだろう。そして歴史の中であらゆる仕事が消滅する中、今日に至るまで生き残っている仕事でもある。この事
品川暁子評、B・S・ジョンソン『老人ホーム――一夜の出来事』(青木純子訳、創元ライブラリ)
老人ホームのある一夜を描いた実験小説 九人の意識と行動が同時進行する!
品川暁子
老人ホーム――一夜の出来事
B・S・ジョンソン 著、青木純子 訳
創元ライブラリ
■一九七一年に発表された『老人ホーム 一夜の出来事』は、九人の意識と行動が同時進行する大胆な実験小説だ。登場人物ごとに章立てになっており、それぞれが三十四ページを割り当てられ、ページに番号が振られている。八人の老人と一人の寮母は、同
森田千春評 リカルド・アドルフォ『死んでから俺にはいろんなことがあった』(木下眞穂訳、書肆侃侃房)
疎外感を抱えて生きる移民家族の、切なくもユーモラスな珍道中――世界共通の深淵なテーマを読者に問いかけてくるような作品
森田千春
死んでから俺にはいろんなことがあった
リカルド・アドルフォ 著、木下眞穂 訳
書肆侃侃房
■主人公の男は母国で郵便配達の仕事に就いていたが、ある事件を起こし、妻と幼児と三人で外国に逃亡。現在は不法滞在の身で求職中。掃除婦として生活を支える妻の気晴らしにと家族で散歩に出
江戸智美評 リチャード・ライト『地下で生きた男』(上岡伸雄、作品社)
物語という形で「Black Lives Matter」と声を上げたリチャード・ライト――表題作の完成版が初邦訳、そして多才なライトを知ることのできる多彩な日本語版オリジナル
江戸智美
地下で生きた男
リチャード・ライト 著、上岡伸雄 編訳
作品社
■第九十六回(二〇二四年)アカデミー賞脚色賞を受賞した『アメリカン・フィクション』は、黒人のステレオタイプ満載の作品を“これこそリアルだ”と歓迎する
圓尾眞紀子評 群ようこ『老いてお茶を習う』(KADOKAWA)
よそのお稽古場をのぞき見しているような臨場感――自分を棚に上げて笑った後は元気がもらえる群さんからのお茶の世界への招待状
圓尾眞紀子
老いてお茶を習う
群ようこ
KADOKAWA
■群ようこさんといえば着物関連のエッセイもたくさん書いておられるのでお茶やその他の和のお稽古などはすでに長くご経験済みかと勝手に想像していたところ、このたび六十八歳にして初めて師匠についてお茶のお稽古を始められたとの
岩本明評 キム・チュイ『満ち足りた人生』(関未玲、彩流社)
一人の移民女性が語る、強くしなやかな人生再生の物語――繰り返し何度も味わいたい一冊
岩本明
満ち足りた人生
キム・チュイ 著、関未玲 訳
彩流社
■本作はケベック在住の作家キム・チュイによる『小川』(二〇〇九)、『ヴィという少女』(二〇一六)に続く三作目の小説である。自身も移民であった作者が、カナダに暮らす移民女性を主人公として新たな物語を描く。
主人公であるマンはベトナムで生まれた。生母は
三角明子評 ジョン・バカン著、エドワード・ゴーリー画『三十九階段』(小西宏訳、東京創元社)
逃亡劇の成否は協力者の見極め次第――退屈な日々から一転して命がけの冒険に乗りだした主人公の心は多いに揺れ動く
三角明子
三十九階段
ジョン・バカン 著、エドワード・ゴーリー 画、小西宏 訳
東京創元社
■第一次世界大戦前夜のロンドン。約三十年ぶりにアフリカから帰国したリチャード・ハネーは、退屈のあまり、余生を英国で過ごす計画を反故にして、アフリカへ戻ろうと思いはじめていた。ある日、外出から戻り
田籠由美評 アーロン・グーヴェイア『男の子をダメな大人にしないために、親のぼくができること――「男らしさ」から自由になる子育て』(上田勢子訳、平凡社)
「有害な男らしさ」から脱却しよう――特に男の子をもつ父親は一度読んでみてはどうだろうか
田籠由美
男の子をダメな大人にしないために、親のぼくができること――「男らしさ」から自由になる子育て
アーロン・グーヴェイア 著、上田勢子 訳
平凡社
■世の中に潜在する歪んだ形の男らしさを、著者は「有害な男らしさ」と呼ぶ。悲しくても男だから泣けない、男たるもの人の助けを求めない、キレイなものや可愛いものは
小平慧評 コーマック・マッカーシー『アウター・ダーク――外の闇』(山口和彦訳、春風社)
人間の意識と無意識の構造を射抜く現代的な射程――貧しい人々の暮らしの描写は「生活感」にあふれている
小平慧
アウター・ダーク――外の闇
コーマック・マッカーシー 著、山口和彦 訳
春風社
■社会から孤立して暮らす兄キュラと妹リンジーの兄妹に、近親相姦による赤ん坊が生まれる。キュラは赤ん坊を森の中に捨て、行商をしていた鋳掛屋がその子を拾って連れ去る。リンジーは赤ん坊のことをあきらめられず、家を出
眞鍋惠子評 イアン・ボストリッジ『ソング&セルフ――音楽と演奏をめぐって歌手が考えていること』(岡本時子、アルテスパブリッシング)
音楽好きのあなたへ――音楽家の心の内をのぞき、音楽への新しいアプローチを
眞鍋惠子
ソング&セルフ――音楽と演奏をめぐって歌手が考えていること
イアン・ボストリッジ 著、岡本時子 訳
アルテスパブリッシング
音楽好きのあなたへ――音楽家の心の内をのぞき、音楽への新しいアプローチを
■イギリスを代表する世界的テノール歌手による音楽とアイデンティティにまつわる評論集である。「世界に名だたるスーパーテ
玉木史惠評 メアリ・ノリス『GREEK TO ME――カンマの女王のギリシャ語をめぐる向こう見ずで知的な冒険』(竹内要江、左右社)
愛しいギリシャ――ちんぷんかんぷんな人生の救世主
玉木史惠
GREEK TO ME――カンマの女王のギリシャ語をめぐる向こう見ずで知的な冒険
メアリ・ノリス 著、竹内要江 訳
左右社
愛しいギリシャ――ちんぷんかんぷんな人生の救世主
■推薦するという意味の「推す」から派生した「推し」は、熱心に支持する対象を表す俗語として日常的に使われる。 雑誌『ニューヨーカー』で校正者として二十四年間勤務し、カ
佐藤みゆき評 シェハン・カルナティラカ『マーリ・アルメイダの七つの月』上・下(山北めぐみ訳、河出書房新社)
主人公の人生とスリランカの闇が一つまた一つとあぶりだされる――2022年にブッカー賞を受賞した小説
佐藤みゆき
マーリ・アルメイダの七つの月 上・下
シェハン・カルナティラカ 著、山北めぐみ 訳
河出書房新社
主人公の人生とスリランカの闇が一つまた一つとあぶりだされる――2022年にブッカー賞を受賞した小説
■二〇二二年にブッカー賞を受賞した小説である。作者はスリランカ出身の小説家シェハン・カル
馬場理絵評 パッツィ・ストンマン『シャーロット・ブロンテ:過去から現在へ』(樋口陽子、彩流社)
「作家シャーロット・ブロンテ」と「私たち」――『ジェイン・エア』を中心に
ブロンテの作家としての人生の軌跡を丁寧にそして鋭い洞察力をもって解説
馬場理絵
シャーロット・ブロンテ:過去から現在へ
パッツィ・ストンマン 著、樋口陽子 訳
彩流社
「作家シャーロット・ブロンテ」と「私たち」――『ジェイン・エア』を中心に<br>ブロンテの作家としての人生の軌跡を丁寧にそして鋭い洞察力をもって解説
■パッ
上原尚子評 閻連科『中国のはなし――田舎町で聞いたこと』(飯塚容訳、河出書房新社)
息子が父に、父が母に、母が息子に殺意を抱く、奇妙な家族の物語――すさまじいまでの熱を持つ、猛烈に面白い小説
上原尚子
中国のはなし――田舎町で聞いたこと
閻連科 著、閻連科 訳
河出書房新社
■すさまじいまでの熱を持つ、猛烈に面白い小説だ。表紙を開くとたちまち小説の世界に引き込まれ、土埃の舞う雑踏に立ち、鮮烈な赤を目撃し、強烈な太陽の光を浴びることになる。
まず、著者である閻連科(エンレン
竹松早智子評 ルーシー・ウッド『潜水鐘に乗って』(木下淳子訳、東京創元社)
現実と空想の狭間で出会う物語――英国コーンウォール地方の伝承が新たな短篇集に
竹松早智子
書籍名・作品名:潜水鐘に乗って
著者名・制作者名:ルーシー・ウッド 著、木下淳子 訳
出版社名・制作者名:東京創元社
■『潜水鐘に乗って』には十二の短篇が収められている。いずれもイギリス南西部のコーンウォール地方に語り継がれてきた伝承や伝説をもとに生み出されたものだ。
コーンウォールは神秘的な土地である
岡嵜郁奈評 キャサリン・マンスフィールド『アロエ』(宗洋訳、春風社)
評者◆岡嵜郁奈
百年を経てなお生き残る作品とはどんなものか――百年前に早世したニュージーランドの国民的作家、キャサリン・マンスフィールドの初邦訳作品
アロエ
キャサリン・マンスフィールド 著、宗洋 訳
春風社
百年を経てなお生き残る作品とはどんなものか――百年前に早世したニュージーランドの国民的作家、キャサリン・マンスフィールドの初邦訳作品
■百年前に早世したニュージーランドの国民的作家、キャ