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「ラブライブ!」は、全米ではウケないのか?

今から10年ほど前のことになるけど、ある海外サイトが「日本の偉大なるアニメ監督TOP10」というランキングを発表したんだ。
その内容は、以下の通り。

日本の偉大なるアニメ監督TOP10

【1位】
宮崎駿
【2位】
手塚治虫
【3位】
渡辺信一郎
【4位】
石黒昇
【5位】
今敏
【6位】
高畑勲
【7位】
庵野秀明
【8位】
富野由悠季
【9位】
押井守
【10位】
大友克洋

・・ん?
と思った人も多いだろう。
とりあえず違和感を覚えたのは、2位、3位、4位だね。
まず2位の手塚先生は、日本だと漫画の神様という認識で、アニメーターという認識はあまりない。
でもまぁ、アニメ界の礎(虫プロ)を作った偉大な人物に違いないんだし、いいとしよう。
それより、3位の渡辺さんにビックリ。
「カウボーイビバップ」が向こうで人気と聞いてはいたが、まさかここまでとはね。
どうやら「カウボーイビバップ」だけでなく、「サムライチャンプルー」もかなり人気あるらしい。

サムライ+ヒップホップという、音楽通の渡辺さんらしさと独特のダンディズムがある異色作

そして4位の石黒さん。
この人誰?という人もいるだろう。
「マクロス」の監督だよ。
ただ、この人は「ガンダム」の富野由悠季とは全くタイプの違う監督である。
基本スタンスは、「才能のある若い奴らに好きなようにやらせる」。
よって、「マクロス」は河森正治、美樹本晴彦、板野一郎、大野木寛、平野俊貴といった当時まだ20代の若手スタッフが中心になったわけで、彼らは今流行ってること、自分がカッコいいと思うことを素直に表現していったんだ。
それがバイクだったり、戦闘機パイロットだったり、美少女アイドルだったり、変型メカだったりしたわけさ。
そう、「マクロス」は良い意味でチャラかったのよ。
河森・美樹本・大野木は高校からの同級生だというし、しかも慶應義塾。
げっ、パリピじゃん?
一方、「ガンダム」はバリバリ全共闘世代の富野・安彦が中心で、真面目に「戦争とは!」「国家とは!」などと論じてるオヤジ臭い空気感・・。
世代的にも、「ガンダム」スタッフと「マクロス」スタッフとでは親子ほど齢が離れている。
で、アメリカなんかは「マクロス」の方がウケがよかったみたいだね。
まぁ、そりゃそうだろう。
いつまでも全共闘ひきずってる「ガンダム」より、青春にフィーチャーした「マクロス」の方がアメリカっぽいし。
事実、あっちでは「ロボテック」という名でテレビ放映され、かなり人気を博したらしい。

奇しくも渡辺信一郎の監督デビューもまた、「マクロスプラス」なんだよね(渡辺さんと河森さんはほぼ同世代)。
で、「マクロスプラス」で渡辺さんが菅野よう子と出会ったことにより、後の「カウボーイビバップ」に繋がったわけよ。
河森さんが「変型メカ」、板野さんが「バイク」というような趣味の領域が各々にあるとすれば、渡辺さんの領域は明らかに「音楽」である。
確か、彼はアニメーターであると同時に、音楽プロデューサーという肩書もなかったっけ?
やっぱ音楽センスある奴は、国境を越えて強いよ。
彼にはハリウッドからのオファーもきて、「ブレードランナー」のアニメを制作している。

めっちゃカッコイイじゃん!
つまりアメリカで売れる為には、ある程度のスタイリッシュさ、カッコよさが必要だということさ。
・・ん?
カッコよさはいいんだが、かわいさの方は?
日本アニメの売りのひとつである、「萌え」は向こうじゃウケないのか?

じゃ、ここでアメリカのあるサイトが発表した、「ジャパニメーション人気ランキング」をご紹介しよう。

アメリカ人が選んだ日本アニメ人気ランキング

【1位】
DETH NOTE(2,179,021票)
【2位】
進撃の巨人(2,066,907票)
【3位】
ソードアートオンライン(1,913,811票)
【4位】
鋼の錬金術師(1,902,463票)
【5位】
ワンパンマン(1,778,470票)
【6位】
東京喰種トーキョーグール(1,592,204票)
【7位】
僕のヒーローアカデミア(1,562,170票)
【8位】
STEINS;GATE(1,554,758票)
【9位】
NARUTO -ナルト-(1,532,673票)
【10位】
ノーゲームノーライフ(1,528,898票)

なるほど。
10位に「ノーゲームノーライフ」がランクインしてるところを見るに、必ずしも萌えに対してアレルギーがあるというわけではないようだ。
とはいえ、全体的にバトル系ばかりである。
特に上位はシリアス度が高いし。
少女漫画系、きらら系などはほとんど上位に見当たらない。
うむ、たとえば日本国内ではかなり人気の高い、「ラブライブ!」を代表とするアイドル系、「ウマ娘プリティーダービー」を代表とするCygames系、「けいおん!」「ゆるキャン」「のんのんびより」を代表とする日常系、そういった作品が全くといっていいほど上位にきてないんだよ。
ひょっとして、こういうのって日本人にしか良さが分からない、独自の感性なのか?

「ラブライブ!」
「ウマ娘プリティーダービー」
「けいおん!」

多分だけど、アメリカ人はこれらを見て「何で女子しか出てこないんだ?」と思ってるはずだよ。
そりゃ向こうにも女性グループ中心のドラマ(セックスアンドザシティ等)もあるが、そこでは彼女らの恋愛が描かれるから当然男性が絡んでくる。
でも、↑↑の日本アニメは違うでしょ?
ほぼ恋愛は描かれない。
ちょっと百合要素を含む作品もあるにはあるが、しかしそれらもアメリカのガチなレズビアンを満足させるには程遠い、ノンセクシャルのオママゴト的なやつだからね。
でもまぁ、「ラブライブ!」「ウマ娘プリティーダービー」の場合は、一種のサクセスストーリーというドラマ性でイケる可能性はあると思う。
向こうでも「ハイキュー!!」は大人気らしく、ああいう部活系が人気ならきっと大丈夫でしょ。
それより問題は、「けいおん!」「ゆるキャン△」「のんのんびより」の方だよ。
こういうのは見る人によっては退屈にしか感じないものだろうし、特に海外の人には伝わりにくいだろうなぁ・・。
ハリウッド映画や海外ドラマで、こういうテイストは見たことないもん。

なんか向こうの学生さんって、日本と全然違うよな・・

「ゴシップガール」などと比較すると、日本のアニメの女子高生はどうしても幼く見えてしまう。
というか、萌えキャラというもの自体、敢えて幼く見えるようにデフォルメされてるわけで、でも逆にアメリカからすれば「はぁ?」となるはず。
なぜ幼く見せる必要があるんだ?と。
そうなんだ。
向こうでは、ロリ=尊い、という感覚がない。
いや、厳密にはないこともないんだろうが、それを口にしてしまうと、小児性愛者というマズいレッテルを貼られてしまうし。
ゆえに、アメリカの学校で「のんのんびより」ってイイよね~、なんて素直に言おうもんなら、一気に教室がざわっとするのよ。
ましてや「にゃんぱす~」とか言おうもんなら、クラスの女子から唾を吐きかけられるかもしれない。

にゃんぱす~

さて、日本ではなぜロリが尊ばれるのか?
そしてなぜ、女子ばかりしか出てこないアニメが多いのか?
これらは全て、日本人ならではの処女崇拝なんだよ。
これは日本人の宗教観とでもいうべきか、処女喪失=汚れた、という感覚がある。
いや、もちろんいまどきの女子中学生、女子高生が援交などをしてることも分かってるさ。
というか、年々そうした貞操観念が緩くなってきてる現実も確かにある。
いや、だからこそ、せめてアニメの中では処女しか出てこない理想郷を実現させたいと思ってるんだ。
一体、誰がそう思ってるのか?
そんなの、アニメを作ってるオジサンたちに決まってるじゃん。
ひとつ、はっきり言おう。
日本のアニメを作ってる人間の大半は、オジサンである
というか、日本経済を動かしてるスポンサーもまたオジサンだからね。
そして、それらオジサンの大半は、処女を尊いものだと思ってるんだ。
だから、「ラブライブ!」「ウマ娘プリティーダービー」「けいおん!」「ゆるキャン△」「のんのんびより」という理想郷が作られるわけよ。
アメリカ人にはこの感覚、分からんだろうな~。
ちなみに、私が入手した極秘情報なんだが、男子は30歳まで童貞を守れば魔法使いになれるらしい。

話題を渡辺信一郎氏に戻すが、もし彼がアメリカにも顔のきく存在だというなら、その音楽プロデューサーの辣腕を振って、「ラブライブ!」あたりのアイドル系作品を全米1位というところまでもっていけないものだろうか?
今まで日本のアーティストは数多く全米に挑んできたが、大体は微妙な結果に終わっている。
たとえ成功しても、あくまで一過性というか・・。
もはや3次元で限界があるなら、2次元でいいじゃん?
こっちは初音ミクという前例もあるし、プロデュース次第では3次元よりも可能性あるのでは?
今後、渡辺信一郎氏の動向に注目である。


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