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読書感想文まとめ

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今までにあげた読書感想文です。
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2015年4月の記事一覧

三島由紀夫「潮騒」

 本作を読んで驚きました。完全にラブコメのつぼをおさえた現代ラブコメの基本形といってもよいのではないかというほどラブコメでした。いったいいつの時代の小説なのか。しかも、漁師見習いの若者と海女の娘の恋愛劇です。……海女ときたか!! 数年前に海女をテーマにしたドラマが流行りましたが……。いったいどこまで先取りしているのでしょうか。

 舞台は歌島という離島です。物資の乏しい時代であり、かつ離島というこ

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C・プリースト「奇術師」

 クリストファー・プリーストはイギリスのSF・ファンタジーを手がけるベテラン作家です。個人的な印象として、氏の作品はタイトルが短い。本作の「奇術師」はもとより「伝授者」、「逆転世界」、「魔法」、「双生児」などなどタイトルが短い。さらに本が分厚い。図書館などで氏の本がならんでいるのをみるとどの本も分厚いのです。個人的な意見として、「タイトルが短い」+「本が分厚い」=「内容がお堅いやつだろうからとっつ

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G・オーウェル「動物農場」

 ジョージ・オーウェルは監視管理社会的なディストピア(ユートピア(楽園)の反対語)を描いた『一九八四年』や本作が代表作です。似たような世界観の作品は「オーウェリアン」と呼ばれるようになるほど社会的な影響度も大きく、著名な作者ですがわたしは今回『動物農場』で初めて著作を読みました。どうにも社会派な作家さんのようで『一九八四年』にしても『動物農場』にしてもかなり政治的なメッセージが強い作品になっている

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F・カフカ「カフカ寓話集」

 一般に「変身」で有名な作者であり、その著作は世界中で読まれていますが、生前はさっぱりと芽が出ず、25歳でデビューしても鳴かず飛ばずで出版にもなかなかこぎつけず、やっと出版できてもほとんど売れなかったようです。役所に勤めるかたわらで小説執筆に集中するために、雑事に煩わされない実家で暮らし、家庭をもたず、勤めが終わると夜遅くまで小説を書いていたという彼の名声がはじまったのは、皮肉にも彼の死後、友人の

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S・キング「図書館警察」

 スティーブン・キングは世界有数の人気作家であるとともにホラー界の重鎮でもある奇異な作家だと思います。なにせ、ホラーというのはこれまであまり脚光を浴びてきたジャンルではないからです。「へぇ~、趣味が読書なんだ。好きなジャンルは?」「ホラーです!」「あ……、そう……。変わってるね」となってしまうジャンルなのです。現に、「キャリー」というホラー作品でデビューしたS・キングでしたが、次作品「呪われた町」

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歌野晶午「絶望ノート」

 歌野晶午は「葉桜の季節に君を想うということ」がベストセラーになって有名になったイメージです。作風からするとなんとなく若い作家さんなのかな、と思っていたのですが調べてみると1961年生まれ(!)ということで現在50代なかばのようですね。作風や文章に年齢は関係ないということでしょうか。ちなみに私は20代なかばですが、いかがでしょうか? せめて年相応の文章が書けていたら幸いです。

 本書は、推理小説

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中島敦「悟浄出世」

本作は中島敦の短編集「山月記・李陵 他九篇」の内の一篇です。

中島敦は「山月記」が高校の教科書なんかに多くとりあげられている関係で有名な小説家ですね。私も大方の例にもれず「山月記」で中島敦を知りました。三十三歳という若さで亡くなったせいなのかなんなのか寡作な作家さんのようです。しかも著作はどれも短編のようです。短編好きな私としては全然かまわないのですが、いままで読んだ中島敦著の本はどの短編も面白

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