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市内RPG 41 扉の向こう

レベル11のぼくら。勇者、戦士、魔法使い、僧侶の高校生パーティー。市役所で勇者登録をし、魔王討伐の旅を続けている。

子郡市のエオンショッピングセンターのダンジョンを探索中だ。ここでは、ドラゴンから逃げ、トーテムポール提灯を倒し、魔法使いの将棋を制し、扉を守るゴーレムを倒した。

拾ったペンダント2つを重ねると、円形の枠に「子」の文字があらわれた。それを扉のくぼみに押し込むと、それはゆっくりと開いたのだ。

奥にうっすらと緑の光が立ち上っているのが見えた。とりあえず、ペンダントをくぼみからはずした。扉は動かなかった。

「入ってみましょう」僧侶カナが、戦士ヤスをつついた。

「おう」戦士ヤスは魔法使いヒラをつついた。

「勇者様、お先に」魔法使いヒラはぼくをつついた。

やれやれ。

緑の光は床から出ているようだ。見ているうちに、目が慣れてきた。青いレンガの壁で囲まれている広い部屋になっている。学校の教室1つ分くらいだろうか。緑の光以外には何もなさそうだ。

ぼくは、ゆっくり部屋に入っていった。ヒラもヤスもカナもそのあとに続いた。

「吸い込まれそうな光ね」カナが言った。

「この輪っかから出てるのかな」ヒラも足下を見ながら言った。

「熱くはないみたいだ、、、」そう言って、ヤスは緑の光の上に手をかざした。

そのとたん、ヤスは消えていた。

?????

「ヤス?」ヒラもカナも同じだった。目をそらしたわけではない。見ていたのに消えたのだ。

「吸い込まれた?」カナがつぶやいたとき、ヤスが現れた。

「これ、外に出れる。外につながってるよ。運動公園にもこれと同じものがあった。触ったら、戻れた」

ヤスの話によると、光に触れると、運動公園に飛ばされるらしい。飛ばされた先も同じようなものがあって、それに触ってあわてて戻ってきたらしいのだ。

「とにかく外に出ようぜ。光に触ればいいから」ヤスが言った。

おそるおそるぼくらは手を伸ばして、緑の光に触った。あっと言う間だった。

子郡運動公園の球場そばにある牽牛星の噴水。大きな牛の角をイメージした巨石の彫刻が大小1対建っている。大きい方は4メートルくらい、小さい方でも2mはある。そして、その周りが小さな泉になっているのだ。よくよく見ないと、牛かどうかわからない。

ぼくらは、そのすぐそばに現れた。地面からダンジョンと同じ緑の光が立ち上っている。

「これがトリップサークル」魔法使いヒラが、倒れたゴーレムの言葉を思い出しながら言った。

「市内のいろいろなところにあると言っていたわ」カナも言った。

「まあ、とにかくダンジョンから出られてよかったよ」ヤスも安心したように言った。

「魔王にはたどり着かなかったね」ヒラがそう言ったとき、公園の掲示板が目に止まった。

「ねえ、これ、、、」

そこには「小原合戦記念武道大会」のポスターが貼られていた。注目すべき文言は「優勝者には賞金10000円と退魔の剣を与える」。

「退魔って!?」
「魔王をやっつけるって意味だよね」


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