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鱧の骨切りができない。

久しぶりに冬瓜を炊いた。
前炊いたのはいつだろう。確実にコロナ前。もう四、五年は経つだろうか。

きれいな緑が出てよかった。

一度目は失敗。
二度目は合格点。
三度目は完璧。
四度目は出汁をジュレにし柑橘を添えた。

やってるうちにいろいろ思い出した。


冬瓜は、あのラグビーボールみたいなひと玉で千円もしない正直安価な夏野菜。(そのまま放置しても冬でも食べれる瓜科の夏野菜だから”冬瓜”)

それでも煮崩れしやすいから丁寧に扱わないといけないし、皮むきはピーラーを使わないし、外は硬いのに中は柔らかいから全体を程よい硬さに茹でるのは難しいし、何よりあの緑を出すにはいろんなコツが要る。ひとつでも手を抜いたらそれまでのすべてが台無し。


そうしてできた『冬瓜と海老の冷やし鉢』。
お客さんが褒めてくれた。とてもうれしかった。



僕は鱧の骨切りができない。

京都の料亭や割烹に勤めた日本料理人なら最終ゴールとして課されるもの。できないと笑われる。
僕は結局そこまで到達できなかった。
何度か鱧を扱ったことはあるけど、とてもじゃないけど『合格点』を出せる自信はない。食べるのは好き。有り難くいただきます。


それでも僕は野菜が好きだし、野菜には愛を持って接していきたい。
実は小出刃包丁も苦手。それだったら僕は、鋭角じゃない蕎麦切包丁の方と仲良くしたい。尖端恐怖症が少しあるのかもしれない。それでも自分と相性のいい包丁を選べばいい。

花板までいかなくたって八寸場で学んだことを精一杯出せればいい。


茹で加減。
色出し。
大きさ形。
そして驚き。



冬瓜こそお番菜だなと思う。


日常的なお野菜。適当に炊いたっていい。色がきれいに出なくたっていい。多少グズグズになったってもちろん食べられる。


それでもなんとかかして美しく、食感もよく提供したいなぁと思う。そのためならいっこいっこの手間なんて惜しまない。



「ウチのと全然違う。なんで?」

そう言ってもらえたなら、あぁ、ちゃんと料理修行してきてよかったなと思う。冬瓜ともちゃんと向き合えた気がする。



ちなみに銅鍋があれば(化学反応の関係で?)もっときれいな緑が出る。けど銅鍋は高い。四~五万はする。
冬瓜をきれいに炊くためだけに、重くて、手入れがめんどうで、値が張る銅鍋を買うのかどうか。

次に儲けが出たら何を買おうか。

悩ましい。

クスっと笑えたら100円!(笑)そんなおみくじみたいな言霊を発信していけたらと思っています。サポートいつでもお待ちしております。