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くせ毛


小学生の頃、
髪が濡れた状態のまま三つ編みをして寝るのが
流行った。

朝、起きて髪を解くと
ほどよくパーマのようになっている。
衛生状態どうかは置いておいて、
子どもながらによく考えたものだ、と思う。

くせ毛の子はもちろんやらない。

さらさらストレートの子は
パーマに憧れ、
くせ毛の子は直毛に憧れた。

子どもの頃はないものねだりが
わかりやすかった。

ある程度歳をとった。
くせ毛からテーマはどんどん移り変わって
仕事や結婚の話が増えた。

残業をする者は
定時を求め、
定時のものは賃金が足りないから
残業したいと求める。

彼氏がいる者は
自由に夜遊びをする者を羨み、
独り身は
彼氏のいる日々を羨む。

一見わかりやすい
ないものねだり。

では本当にあるものと、ないもの。
この判別ができているのだろうか。

残業代の出ている者は
残業代がない生活にもはや水準を合わせることが
できない。
定時帰りの者は
定時後のお食事会なしでは
元気に働くことができない。

彼氏の有無についてもそうだ。

もはやないものねだり自体が
ないものねだりなのだ。

人間は必ず満たされない部分があると思う。

この部分を
満たそうとする見かけ上の行為が
ないものねだり、ではないだろうか。

ただ、すべて限界を超えているものについては
除外する。たとえば法定量を超える
ありえない量の時間外業務や
暴力行為を伴うような交際関係である。


全て満たされているように見える人間は
叩かれる。
つまり批判の対象になる。

だから
「私はこんなにも満たされてませんよ」、
という意思表示のために
ないものねだりをする。

一種の自己防衛だ。

なんて
小難しいことを考えてみることもある。

そんなことを書きながら
私は今日もくせ毛を抜いているし
雪がたくさん降ればいいと思っている。

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