見出し画像

新刊『マネジメントの正念場 真実が企業を変える』(ロバート・フリッツ著)「日本の読者の皆さんへ」無料公開

日本の読者の皆さんへ

この何年かにわたって私は日本のマネジャーの人たちと仕事をしてきており、その経験から本書の原則と方法がいかにマネジメントの役に立つかを痛感しています。人と組織の力を高めて業績を改善していくにはどんなアプローチが最適か、については常に議論があるものです。一般的に、人は変化に抵抗するものだという考えがあります。これは間違いです。変化が正しく動機づけられていれば私たちは抵抗などしないのです。タイプライターからワープロに、手紙から電子メールに、図書館でのリサーチからインターネットでのリサーチに変化するとき、そうした変化はたやすいものでした。世界が変わるとき、日本の企業もまた大きく変わる必要があります。変化が正しく動機づけられていれば、会社の従業員の抵抗を受けることなく組織を変革していくことができます。正しい動機づけさえあれば、変化は受け入れられるばかりか感謝されるのです。では正しい動機づけとはどういうものでしょうか。たとえば、人は自分がプロフェッショナルとして向上したいということです。あるいは、大きな目標に向けて皆と力を合わせて働きたいと思うことです。上からの指図に従うばかりでなく、足並みを揃えて仕事をしたいと思うことです。そして、チャンスに恵まれれば真のプロフェッショナルとして自分の仕事を改善したいと思うことなのです。ところが残念なことに、どうやってこうした素晴らしい成果を上げたらいいのかわからないのがよくある現実です。本書はその謎を解き明かします。誰にでも使える明確な技法によって、これまでの仕事の経験から学び、これからの仕事の成功に役立てることができます。MMOTの形式は単純明快です。一方で、単純な形式が明らかにする中身はちっとも単純ではありません。MMOTの形式によって失敗や失望を前にして現実を客観視することができます。MMOTはまた、優れた業績を学習機会と捉えてさらなる成功のための洞察を生み出すことにも使えるのです。

私は、本書の方法を日本のマネジャーが手に入れることによって企業に大きな影響を与えることができると思っています。困難な状況に直面したとき、その状況に反応するのではなく、状況から学習するのはとても難しいことです。事態が期待通りでないとき、それを成長や発展や構築のチャンスだとは思わないのが普通です。私たちはすぐに問題解決モードになってしまい、その状況を有効活用する機会を見失います。企業のマネジャーは困難から抜け出すことができずに立ち往生、八方塞がりだと思ってしまうのです。なぜそうなるかといえば、彼らが現実の経験を使って学び、改善し、成長するための基礎にするという方法を知らないからです。

共著者のブルース・ボダケンは私がともに仕事をした中でも最も優秀なCEOのひとりです。MMOTが生まれたのには、私がブルースのエグゼクティブコーチであり、ブルーシールド社の経営幹部チームのコンサルタントであったという背景があります。私が呼ばれたのはブルースがCEOに着任したばかりの頃でした。その頃、ブルーシールド社は30億ドル規模の旧態依然たる企業で、行き詰まっていました。そこへブルースは非常に優れた実用的なリーダーシップ原則を次々と導入していったのです。しかし私の見るところでは、そうした優れた原則が実行に移される可能性は高くありませんでした。というのは、組織の中で真実が語られていなかったからです。嘘をついていたというわけではありませんが、何を語るにしても非常に柔らかく婉曲的に語られすぎていて、何が語られているのかを理解するのがとても難しかったのです。その結果、正しい情報に基づいた意思決定が行われていませんでした。大きな企業組織によくあることですが、何か失敗があれば巧みに隠蔽されていました。そこで私はMMOTという技法を開発し、この状況に充てることにしたのです。ここでブルースは新しい方法を組織に導入するのに素晴らしいアプローチをとりました。いきなり全社に導入するのではなく、まず経営幹部チームの十数名から導入を開始したのです。数か月の実践を経て、幹部メンバーはMMOTを習得し、活用し始めました。それを見届けたブルースは、続いて次の30名の上層部にMMOTを教え、彼らが活用し始めると、さっそくその効果が現れ始めました。数か月を経て、ブルースは次の層の100名のマネジャーにMMOTを導入します。さらに数か月を経ると、上層部と中間管理職の全てのマネジャーがMMOTを習得して活用するようになりました。そうなると会社中の他の社員たちが変化に気づき始めます。どんな状況においても真実を伝え合うことに対してオープンであることに気づくのです。ここまでの変化を見届けたブルースは、全社にMMOTを導入するための研修プロセスを導入し、人材育成担当の部署が教育プログラムを導入することになりました。8か月のあいだに組織全体にMMOTが浸透し、その影響は甚大なものでした。そしてブルースがCEOに就任して5年のあいだに、ブルーシールド社は30億ドルから70億ドル規模に拡大し、業界内で最も革新的な成長企業になっていたのです。

もちろん驚異的な発展はMMOTという技法だけによるものではありません。たくさんの構造的な変革によって市場におけるビジネスが拡大したのです。そしてブルースが明快なリーダーシップを発揮して組織を発展させました。しかしブルーシールド社の成長にはMMOTが欠かせない方法でした。MMOTによって他の変革努力が実を結んだのです。

組織のキャパシティを成長させることは、企業において最も重要なリーダーシップの任務のひとつです。あまりに多くの企業がキャパシティと業務負荷のアンバランスに苦しんでいます。組織において人が任された仕事をやり遂げるために必要なリソースが足りていないのです。これによって誰もが疲弊し、企業の競争優位は損なわれます。どんな会社においても、業務の要求に十分応えられるキャパシティのバランスを保つことは最も重要な戦略原理のひとつです。あまりに多くの企業において、利益重視の短期思考のためにキャパシティへの投資が不足し、企業体力を長期的に失わせることになっています。MMOTという技法の大きなメリットのひとつは、会社全体で導入されたとき、大きな追加投資なしに既存の社員だけで大幅な業績改善を行い、生産性向上を望めることです。MMOT導入によって、人員増加を伴わずに、25%から40%の生産性向上が起こっています。

本書の日本語翻訳版は初めての完全翻訳です。この翻訳を可能にした翻訳チームに感謝しています。

ロバート・フリッツ


PRTIMES プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000106682.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?