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Yusuke Terauchi 2nd Album "Two have,Two-faced"の全編解説

このnoteでは
2023年12月21日にリリースした
Yusuke Terauchiの2nd Album 
"Two have,Two-faced"を解説したいと思います。
(作曲、録音からミックスまで自分でしているのでその話もある程度掲載しています。)

まだ聴いてない方はこちらから
サブスク、配信リンク↓

bandcamp、ダウンロード購入リンク↓

※bandcamp版のみダウンロード購入するとボーナストラックが一曲付いてきます。
SpotifyやApple musicのサブスクには配信予定の無い曲なので是非ともbandcamp版をオススメします。

敬愛するアーティストの方々のコメントや情報諸々をHPに纏めているので、そちらも合わせて是非よろしくお願いします。



まず始めにあまり本当は解説したくありません。
なぜなら先入観になってしまって、聴き手のイメージを作り上げる阻害をしてしまう可能性があるからです。

前作、1st Album "Human package"もCDを買って頂いた方だけが観れる限定公開の対談動画の中で少しお話させて頂きました。
(ちなみに前作のCDは↓こちらのリンクから購入出来ます)

サブスク、各種配信リンク↓

音楽は作り手だけではなく、聴き手も自由な世界だと思っているので
初めての音楽に触れる初動、そしてそこで生まれた感情やイメージを
何よりも大切にして欲しいという思いがあるからです。

表現や芸術はあくまで受け取り手が価値を感じるものなので、そこに少しでも余計な情報を植え付けたくありません。

しかし、コンテンツとしては、「どういうものなのか知りたい」と思う方もいるとは思います。
なので出来るだけクローズな場で書けたらなと思っています。

ここからはある意味パンドラの箱なので、
この記事を読んだら元の感性では戻って音源を聴くことは出来ません。

嫌だという人はブラウザバックを、
それでも知りたいって人は先へどうぞ。




では

Yusuke Terauchi 2nd Album

Two have,Two-facedについて


前作のHuman packageもそうなのですが、僕は基本的にコンセプトと曲名、曲順を考えてから作品を作ります。
これは曲自体のベクトルを揃えるという意味と、
作った曲の無作為な寄せ集めのようなアルバムは作りたくないからです。

ちょうどコンセプトとしては2022年の8月くらいに作りました。

タイトルである、
Two have,(2つ持っている)
Two-faced(2つの顔、2面性)
は昨今のSNSの普及によって、誰しも外側(Outer)と内側(Inner)を生み出さなければならないような状況が出来てるな、と感じた所にあります。


誰にも波風を立てずにSNSを運用すると、
自分の個が失われる感覚をここ数年で感じてきていて、
外側を意識すればするほど内側は隠れていってしまう、本当はすべて1つなのにな。という感覚がありました。


そして自分の体験でも過去にあった人間の男女の性、
「ただこの人と男女関係なく仲良くなりたいだけなのに」
自分にも相手にとっても
その2つの性別=種として人間のもつ2つの顔、
に壁を感じる瞬間が多々ありました。

その2つのテーマを結びつけてこのタイトルにしました
(あと2枚目やからTwo使えるのいいとか笑)

そして聴いてくれた人にはもうお分かりかもしれませんが、人間の種も、内側も外側も、全部1つにしようぜというのが今作のメインテーマであります。

ただし人間の性別は、イコール2面性では無いと感じているところもあるので、
男女というのは裏表では無いかなと僕は感じています。

昨今多様性を求める時代、差別しないということがそもそも差別なら「別」で無くなればいいなと思います。

なのでこの歌詞の主人公たちはフィクションであるということの示唆と、
そうなればハッピーじゃない?って希望を込めて制作しました。

前作の好きな曲が皆バラバラな方がいいというよりは、今作はアルバムごとで好きかどうか捉える感じです。

その点を踏まえて、このアルバムで変遷していく2人の人間を強く感じ取ってもらえればなと思います。

では曲毎の解説に入ります。

M.1 Outer (外側)

この曲が出来たのは2022年、Human packageの対談を撮影していた時期でした。

アルバムのコンセプトが完成、8月にデモが完成して、
自分の中でもすごく特別に思える曲だなって感覚があって、この流れでアルバムの曲を作ろうと思い制作モードに入りました。

しかし、デモ作りは難航、アルバムの中でこの曲とバランスを為せる他の楽曲が作れなかったのです。
数十曲ボツにした上で、一度制作を止めました。

Outerのタイトルの通り、外側を意識した楽曲になっています。
Outerで描いている人物像は、
何か分からないけど自信に満ち溢れ、内側(Inner)と融合したい欲求がある人間を描いています。
どちらかと言うと男性的目線の曲と僕は思っています。

"花をたたえて幹を見ない"
"虚栄の先に何があるの"
"捨てる外側 いらない僕には"

外側に対して揶揄や疑問を持ち合わせていて、それを取っ払ってしまいたいと思う主人公を描いています。

"感情は置いてこないで"
"僕の中に全部招きたい"

など内側にあるようなものを知りたい探究心を強く感じる内容です。

ちなみに
"誰も知らない正体のソレ"
とは歌詞を書いている自分にも分かりません。
この曲の主体である主人公だけが把握して感じている"ソレ"です。

サウンドとしてはアルバムの導入という部分もあり、意外とシンプルな構成です。

コード進行が複雑ではあったりラストのAメロをリハーモナイズ(コード進行を再構築すること)してたりと音楽的にはかなり緻密に作りました。

アルバムの中では比較的演奏も難易度は低めです。
個人的にはラストAメロ前のギターリフが好きです。
この曲ではメインギターはL側で鳴っています。

ボーカルトラックは新しいマイクで録音しました。
真空管マイクという種類のマイクなのですが、声の存在感が素晴らしく、且つ音が温かく、感動しながら録音していたのを今でも覚えています。

ちなみに今作のアルバムは全曲このマイクでボーカル、コーラスを録音しました。

Outerのコーラスのトラックはなんだかんだで20トラック超えになりました。

ラストの部分はコーラスを分厚くするために同じ音程×4トラック、それを3パート録ったのでそれだけでも12トラックです。

ギターに関してはVigierのEXPERT、
Kieselのzeusを使用してHelix floorで音作りをしてライン録音しました。
ライン録音感をもうちょっとアナログ感で汚したいのでライントランスを通して、
UADのApolloで録音しています。

基本的に録音方法はギターのアンプのみ(基本の音色)のドライ音を録音して
DAW側でリバーブとかかけてます、
Helix系統の音ならHelix Nativeでエフェクトだけあとがけって感じです。

全曲そうなのですが、アルバムのコンセプトとして「2面性」や「2つの顔」と謳っているので、ギターは2本ともまんべんなく使ってます。

個人的聴きどころはラストの「誰も知らない正体のソレを知る」の時の周囲のコーラスの音像がどんどん狭くなっていく所です。
(気付いてたらセンスありすぎ)

アルバムの導入としては最高かつ、単曲としても光るものがある曲になりました。
そしてアルバムの1つ目の大きな伏線でもあります。
(後に解説します、お楽しみに。)

M.2 Two Karmas (2つの業)

タイトルの意味である「2つの業」。
これは人間における3大欲求の
「食欲」と「睡眠欲」を表しています。

個人的にはこのアルバムのインスト曲のリードソングで、テクニカルで疾走感のある幸福感を意識しました。

食欲と睡眠欲が満たされるときは幸せ度が高いイメージがあるので、それを曲にしました。

今作のアルバムではこの曲とM.4のLibidoのインスト曲は人間の3大欲求を表しています。

実質、血の通った人間が滲み出れば出るほど「人間」を食らわせてやりたいと作品を作る度に強く思うので、センシティブであるべきだなと。

ラストのギター部分、真ん中で鳴ってるギターと両端で1/8ズレたディレイのギターフレーズが絡み合って一つのフレーズになるようになってます。

食欲満たされたら、眠くなる感じでセットかなぁとも思うのでそれを表現してみました。

今作ではアナログシンセを多用しているんですが、1から音作りをしています。
ソフトシンセのPigments 4のみで流用しています。
大体どの曲にも入ってるのでその辺も含めてお楽しみください。(もちろんこの曲にも。)

実は2023年の春にこの曲を録ったんですが、録音での演奏が難し過ぎて、一旦録音の気持ちが燃え尽きました。笑
それでM.3〜M.6は10月にまとめて録音しました。

今自分の持つギターの技術をフル活用して良い楽曲を作りたい、というコンセプトも今作にはありました。なのでアルバムの中でも屈指の難易度です。

プレイスルー動画も載せておくので、是非ともコピーしてみてください。

3.Inner (内側)


内側とタイトルの意にあるように揺れ動く心境を繊細且つ大胆に描いた楽曲。
Outerとは対比的に女性をイメージしています。

"右頬に触れた温もり"
"どこか冷たくて"
"食い込む指に笑うしか出来ない"

この部分はOuterのBメロ、
"左手でなぞったあなたの表情を"
"笑っていた いつでもそこに在るように"
"怒り 妬み 悲しみが全てを"
"僕の左手を歪ませたんだ"
を逆側の立場で受け取っている表現になっています。
そういう所も対比的に表現してみました。

"注ぐ肌 きれいな流線を"
"崩してしまうほど乱れて"
"痛みを超えて混ざり合いましょう"

性行為を詩的な表現で美しく描いています。
そして個人的には液体が混ざるようなイメージを性行為に持っているので
溶け合うとか注ぐみたいな表現を曲中でしています。

"選ばれた細胞が結びつく間に"
"失いたくない個を忘れて"

選ばれた細胞とはDNAのことで、
失いたくない個とは自分自身のことです。

でも、初めて聴いたときに"失いたくない子"とみんな認識するだろうなという、歌詞を見てそっちだったのか!って認識するのも面白いポイントです。

"もう口は開けない"

というのは今後混ざり合う時には話せないことと、話したかったことを言葉にせず押し殺している心境を描いています。

ラストの歌詞
"私はどうなるの?"
"握りしめた手を離さず ぎゅっと強く"

はこの曲の一番の不安を表現しています。
どうなるか分からないことを受け入れてたとしても、
いざその瞬間になってみたら不安が募るものだと思っていて、それを表現してみました。

基本的にR側でメインギターが鳴っています。
ギターで言うと途中の変拍子パートが難所です。
それ以外は割と簡単だと思います。

シンセベースの壁のような低音の強さとギターのクリーンのトレブリーで繊細なイメージが対比になっています。

そしてこのアルバムの伏線の2つ目でもあります。
(もう少しで解説します)

4.Libido (性衝動)


Two karmasで表現していたのは食欲と睡眠欲でしたが、
残りの人間の3大欲求、「性欲」「性衝動」にフォーカスしたインスト曲です。

力強さの中に儚さや侘びしさが漂うような表現をしてみました。

ディストーション(歪み)をかけたギターにはゲート(音量を特定以下になると切ったりするもの)をかけていてソリッドなギターを意識しました。

後半部の左右に移動する不安定なディレイの音が鳴るコード部分は、
4/4の中で3連符で弾いていて、でもドラムは4分や8分で叩いています。

そしてディレイの不安定さはSoundtoysプラグインのLittle Alterboyでフォルマントを下げていくオートメーションを書いています。

ギタートラックの音色が違ったり、処理が違ったりで14トラックもあるので、録音が大変でした。

ちなみにこの曲中にはシンセは使ってません。(ラストにピアノ出てくるけど)
基本的にギターとドラムとベースのみです。

アルバムの中でもシンプルかつ複雑で格好良い曲になったと思います。

ラストのピアノのフレーズは、
Become oneに繋げるための転調と流れを兼ねた部分になっています。

5.Become one (O+I) (1つになる)

ここまで聴いてお分かりかもしれないですが、
(O+I)とはOuter+Innerということです。
つまり2つの曲を融合させた曲です。

Become oneのサビ前で左右から流れる
OuterとInnerのサビをAメロとして。

これはマッシュアップというリミックスの手法です。
別の曲同士を1曲にまとめたりする、リミックス的な手法ですが、自分の曲や作品でやってる人が少ないなぁと思ったのでやってみたいって思ったのがきっかけでした。

なのでOuter、Inner、
そしてこの曲のキーは同じ(C key/Am key)です。
それを分かりにくくする為に
間にキーの違うインスト曲を2曲挟んだということです。

アルバムの起伏として、演出としても
とても良い伏線(Outer、Inner)を張れつつ
それを聴いた人だからこそ、
この楽曲の意味を理解できるという仕組みが今作の最大の仕掛けです。

"なんて素敵な思い出でしょう"

とは融合する前のOuterとInnerの歌詞で互いに感じていた過去です。

"君がいたあの日々を忘れることもなく"
"「また、会えたら」意味のない約束へ"

OuterとInnerの2人は融合したので、もう何もかもを共有している描写です。

"生まれた日々を笑う"
"見下す 1番後ろの席で"
"現実を満たして"
"ありふれたフィクションの中で過ごす"

これは2人の人間が融合したことは、
もちろんフィクションなのですが、本当にあったとしても、それを嘲笑する人々、許容できない人々を表現しています。

人間社会において、好みは存在するものなので、すべてを許してしまえるマインドが自分にとって最強であるということを、その視点から揶揄として言葉を選びました。

嘲笑、もったいねぇなって感じです。

"1つの夢 触れた夜を越えて"
"愛した欲望 誰もが交じり合う"

"1つの夢"というのはOuterとInnerの2人が融合すること。
"愛した欲望"というのはTwo KarmasとLibidoの3大欲求のことです。

"誰もが交じり合う"は、混ざるではなくこれから人と人が交差していって欲しいのでこっちの漢字を選びました。

"言葉はいらない"

前作、1st AlbumのHuman packageの
M.1 Heartでも"言葉はいらない" という歌詞を繰り返すという終わり方だったのですが、

Become oneでの"言葉はいらない"は
「2人が融合したので意思疎通の為の言語化、言葉はいらない」という意味で、

前作のHeartで歌っていた
"言葉はいらない"は
「分からなくていいから言葉はいらない」
と「残りが全曲インストである」という示唆でした。

これが同じ言い回しでも
「2つの意味を持つ」っていうので
アルバムタイトルのTwo have(2つ持っている)を伏線回収していたりします。

OuterでメインだったL側のギター、InnerでメインだったR側のギターがこの曲でも共通点としてサビで鳴っています。

ストリングスはチェロ(L側)とバイオリン(R側)の2つなのですが、OuterとInnerに添わせてチェロを男性に見立ててバイオリンを女性に見立てています。

鳴ってる楽器も多く終盤に相応しい曲です。
全員の力を合わせて大きな希望の一撃を放つ感覚です。

Outerが滲みならInnerは闇、
Become one (O+I)は希望の光です。

6.Life is sculpture (人生は彫刻)


アルバムのラストの曲ですが、これは自分の中の大切な言葉を曲にしました。

今作を作る上で、自分の中で落とし所がわからなかった思い出を表現しました。

その事象が長く自分を苦しめていたりしたこともあったので、それに一旦の終止符を。

あえてそれはここでは書かないので、
聴いてくれたあなたや、誰かに当てはめてみて考えて下さい。

僕は「考えられる音楽」を掲げているので。

"変わればよかったのは僕の方"
"変わればよかったのは君の方"

"付かず離れずが未だ此処に"

答えは分からないけど、
分からないままにしておくのも
一つの答えだと僕は思います。


最後に


ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました。

この解説を読んだ上で、アルバムを聴き直すとまた新しい聴こえ方になるかもしれません。

自分の中にあるモヤモヤした感情をこのタイミングで作品化出来たことにとても幸せを感じます。

昨今、SNS等で誰でもたくさんの人と触れ合う機会が増えてきている中、その中でも外側と内側を使い分けないと、うまくやれないことに歯痒さを感じています。

むしろ使い分けて上手くやってる人は、自分というものを何処かで犠牲にしていると思います。

僕は人間は本当は誰とでも仲良くなれる訳ではないと思っていて、ましてや芸術や音楽は、好みがあってこそのもの、人に刺さるものを作ろうと思うなら、
内側や外側も曝け出して、嫌われてもいいという覚悟は必要だなと思います。

それを越えてでも愛してくれる人を大切にしたい。
それがこのアルバムに込めた思いです。

2人の人間(男/女)(外側/内側)が融合すること、フィクションだとしても、それを受け入れることに共感してもらえたらな、と。

改めてにはなりますが、
「音楽は自由である」ということは
聴く人の感じ取り方も自由だと思っているので、考えて/考えず、たくさんのことを感じ取って欲しいです。

どういうことか考えてもいいし、
考えずシンプルに音楽を楽しむのもいい。

それがこのアルバムの制作者、
「考えられる音楽」を掲げる
Yusuke Terauchiの望みです。

あなたの中で深くこの作品は琴線に触れて刺さりましたか?

末永くこの作品を愛してもらえたら嬉しいです。

たくさんの愛を込めて。

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