マガジンのカバー画像

短編小説集

4
運営しているクリエイター

記事一覧

安楽死研究

安楽死研究

 5月某日。とある研究所に、安楽死を求める5人が集まった。

 会長職の老年男性。バスケ部の女子高生。新卒二年目の男性。セクシャルマイノリティである事を隠している売れっ子アイドル。17歳と15歳の子を持つ主婦。

 全員が研究所の前に集まると、映画に出てくるようなやたらと真っ白な屋に通された。

 5分ほど経っただろうか。
 部屋よりも白い白衣を着た男性が、冷たい足音を奏でながら入室してきた。科学

もっとみる
あぁ、男らしく生きたかったな

あぁ、男らしく生きたかったな

あぁ、男らしく生きたかったなぁ

だって、筋骨隆々で強くて優しい人になって。好きな人を包んであげたいんだもん。

あぁ、女らしく生きたかったなぁ

だって、彩りあざやかな服を身にまとって、可愛く凛として、「私」を実感しながら生きてみたいんだもん。

あぁ、子供のように生きたかったなぁ

だって、自分の好奇心にあんなに真っ直ぐに向き合って、毎日楽しく明日にワクワクして

もっとみる
お母さんの請求書 【短編小説】

お母さんの請求書 【短編小説】

ある日、台所に立つと冷蔵庫にこんなものが貼ってあった。

--------------せい求書---------
おるすばん代 200円
おつかい代 150円
赤ちゃんのおせわ代 300円
------------------------
合計 550円せい求します。

書かれた文字はとても上手で、思わずほれぼれしてしまった。きっと何かほしいものでもあるだろう。そんな事を

もっとみる
【短編小説】来世は人間がいいなぁ

【短編小説】来世は人間がいいなぁ

「あーあ、来世は猫になりたいなぁ」

わっちの主はいつも、いつもこんな言葉を吐いている。窓の外が青白いうちに外に出ていって、窓の外が黒くなる頃にわっちのもとに帰ってくる。目の奥が黒く、パリパリと乾燥した唇。少しぐったりとして帰ってくる。

そんなにもなっちゃうくらい、楽しい事がお外にはあったのだろうか。毎日毎日、空の色が変わるほどまで遊んでいるんだろうか。

こっちは暇で暇で、10

もっとみる