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【本の感想】クダマツヒロシ『令和怪談集 恐の胎動』
怪談師として、語りもこなすクダマツヒロシ氏の単著一冊目。
本作の収録話は、彼の語りも含めてクダマツヒロシらしい切り口の話が並ぶ。
全31話の中でも、王道の様式を保った怪談もある(「訪問者」「理科室の女」)。
だが、本書に収録されているものの大半は、怪談の定石と外しの狭間をいくような、スレスレのものだ。例えば「御厨子開帳」や「豚の椅子」「恐の胎動」では、生理的嫌悪を衝く描写が隅々まで行き渡って
Ghost In The Motel
携帯電話のボタンを押す。
薄闇の中に浮かび上がる、蛍光色の黄緑色。発光するボタンは気持ち悪いほど無機質で、吐き気を催すほど有機的に見える。
安上がりのモーテル。
誰もいない。きっとここは、昔からわたししか住んでない。
唯一の持ち物でもある携帯電話は、汚れることも破損することもなく、わたしの手の中に納まっている。いつ頃から持っているのか、具体的にはわたしは知らない。ううん、わからないと言っ