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「若者の気持ちがわかる」は幻想かもしれない

マツコ&有吉のかりそめ天国で、若者との距離感についての意見が印象に残っている。

「若者の気持ちがわかると思っているおじさんいるけど、本当に分かり合うなんて絶対無理だと思う」

人は心のどこかで、「話せばわかりあえる」と思っている。実際テレビドラマでは、上司や先輩が年下の社員の悩みを聞いて、きずなを深めていくシーンがある。もちろん先輩や上司に悩み相談したり、関係性が深まることはあるけれど、それはレアケースだ。ゆとり世代とかさとり世代だからというわけでもなく、自分より若い世代と完全に分かり合うのはかなり難しいと思っている。育ってきた環境が違うのだから、当然と言えば当然だ。

それなのに「話せばわかりあえる」精神からか、若者の気持ちをわかっていると思い込んで、必要以上にラフに話しかけたり、先輩として面倒を見ようと意気込んだりする。もちろん悪いことではないけれど、その距離感の見誤りで本人が気づかぬうちにどんどん距離が開いてしまう場合もあるのだ。

後輩の気持ちがわかる先輩ぶってたわたし

思い返せば、昔のわたしもそうだ。後輩の気持ちがわかるいい先輩だと思っていた。高校の部活で1年下の後輩が入ってきたとき、「そんな敬語とか気にしなくていいから~」なんて話していた。後輩なら、先輩への接し方のルールがない方がいいと思ったのだ。そして教育担当だった後輩の誕生日や引退時には手紙を書いていて、たくさんのアドバイスを手紙に書いていた。つい1年前まで後輩の立場だったので、後輩の気持ちは分かっていると思っていた。だから気持ちがわかると示せれば、後輩にとっても嬉しいはずだと思っていた。

ただ実際は、後輩のことはほとんどわかっていなかった。同じ学年を経験していても、年によって状況は全然違う。また当然個人によっても考えは大きく異なるので、「去年同じ学年だったから」なんて理由じゃ後輩を理解できるわけない。それなのに後輩の分かる先輩としてわたしは後輩に接していた。後輩にとって、勝手に「わかってる」と思っている私は結構厄介な先輩だったんじゃないだろうか。高校生の時はいろいろおしゃべりをして、1度遊びに行ったこともあったけど、卒業後に会うどころ、連絡すら全然取っていない。

若者は違う世界の人。そう簡単に分かり合えない

「話せばわかりあえる」は幻想だ。もちろん数十歳差のふたりが結ばれる恋愛や友情のケースを否定しているわけではない。ただ一般的な年下や若者は、それぞれ考えが違う。だからよっぽど親しくない限り「分かっている」感を出さない方がいい。一気に距離を近づけすぎると、相手はさーーっと引いてしまう。だからちゃんと関係を築いていくには、自分と違う環境で育っている人とはわかりあえない!!と思っていた方が適切な距離感がとれるはずだ。

自分の部署に、新入社員が配属された。新入社員だったときの出来事は、今でもありありと覚えている。それでも「分かってるよ~」感を出しすぎるのはぐっとこらえ、適度な距離感を保つようにしたい。

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