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ドイツの婚活サイトに侵入し、国際結婚した話①

■第1章■ 現実を知る

32歳10ヵ月。
7年間務めた飲食店を辞め、派遣社員として働き始め1年が過ぎた。
それまで生活の大半を仕事に捧げていたため、あまり経験の無かった花金 & 合コン三昧を、初めの頃は新鮮に感じ謳歌していたが、いくら時間を費やしてもなかなか彼氏ができない現状に、焦りを募らせていた。
周りを見渡せば結婚して子供を持つ人たちや、既に離婚を経験している人もいた。何年も彼氏のいない私には、入口すら分からない遠い世界に感じられ、自分が結婚し、子供を持つというイメージが全く沸かなかった。

家族や親戚をはじめ、周囲の人達から「早く良い話を聞きかせてよ。」「子供は早く産んだ方が良いよ。」という無責任な言葉を投げかけられる度に、彼氏すらいない私には、その場を速やかに収めるための、はぐらかしの言葉を探すことしかできなかった。
そして、知らず知らずのしかかるプレッシャーから、誰もが納得する相手を見つけなければならないと考えるようになっていた。

なぜ私は結婚どころか彼氏すら出来ないのだろう。私に足りない物は何だろう。どうすれば自分にぴったりな人と出会えるのだろう。
私の何がいけないのか。
もう誰でもいいから愛されたい!

10代から途切れることのなかった彼氏が5年も出来ずにいたことは " 自分には価値がない " と自信を失うに十分な歳月だった。
相手に気に入られようと、どんどん弱気になり、婚活をすればするほど自己肯定感が低くなっていった。
接客業が長かったこともあり、相手に合わせ、相手が望む答えを見つけ出し、相手の期待に応えようという職業病が抜けず、知人の紹介や新たな出会いの場でも、それまでと変わらない仕事の延長線上にいるようで、何の為にこの新しい生活を選んだのか自問自答する日々を送っていたが、そこから脱却するにはこの方法を続けて行くしかないと思い込んでいた。

自分だけの力では答えが見つからず途方に暮れた私は、なぜ私は結婚が出来ないのか周りに聞いてみた。しかし、返ってくるのは遠回しで曖昧な表現が多く、あまり参考にならなかった。
まぁそりゃそうだよね。みんな地雷踏みたくないよね。

分からないことや知りたいことは、常にインターネットで調べる習慣があったので、婚活や結婚についても毎日インターネットを駆使し、匿名で多くの人々が自由に意見を交換するサイトを読み漁った。
そこには建前が一切無く、辛辣な言葉が並んでいて衝撃を受けたが、私の求めていた本音だらけの答えがいくつもあった。
その中で一際タイムリーな言葉が私の心臓を突き刺した。

" 33歳を超えたら自分から男の人を選ぶなど、図々しいにも程がある "

「まだまだ焦らなくても全然大丈夫だよ。」という慰めの言葉を鵜呑みにしていた私は、この受け入れ難い厳しい内容にショックを受け、今まで騙されていたいたような感覚に襲われた。
やばい! あと2ヵ月しかないじゃん!
婚活では特に女性の年齢は1番と言っていいほど重要らしく、私にはとにかく時間が無いことを再認識した。

そして調べていく中で、結婚後の生活や離婚の原因も知っておくべきだと思った。
俗に言う結婚はゴールではないというやつだ。様々な意見や体験談を聞いたりネットで調べてみると、一貫して皆が同じことを語っていた。
お金だ。結婚しても自分も働けばいいし、お金はあるに越したことはないが、無きゃ無いでもなんとかなると楽観的に考えていたが、現実の厳しさを先に経験した先輩方の綺麗事では無い意見を、しっかり頭に叩き込んだ。

長年婚活を続けている方は経験があるかもしれないが、これでもかというくらい何度も打ちのめされる。次こそ、次こそはと思い続け、今度こそ、これで最後だと願うが、残念ながらその最後はいつまで経ってもなかなか訪れない。結婚を意識し始めてから、出来るだけ多くの男性から気に入られようと、どこにでも書かれているようなモテテクニックを実践し、自分のストライクゾーンを広げ、とにかく打率を上げるように努めた。
でもなぜかこれらをすればするほど、男の人から相手にされない、雑な扱いをされることが以前より増えたように感じた。
どれもこれも年齢のせい?好きになってくれる人ならもう誰でもいい!

私の心は完全に折れ、良い子を演じたり理解のある女を装うのは止めていっその事、我が道を行く物凄く悪い女にでもなってやろうと開き直った。
" 悪女 = 好き放題に生きていて欲しい物はすべて手に入れる "
そんなイメージがあった私はまず初めに、自分がこの先どのような人生を歩みたいのか、魔性の女になったつもりで紙に書き出してみた。
誰にも迷惑はかけないし、書くだけなら文句は言われないだろうと気楽な気持ちでさらりと。

・結婚して子供は3人欲しい
・年に1回は家族で海外旅行をしたい
・子供には語学など充実した教育が受けれるようにしたい

そして次に、どうせあと2ヵ月で選べなくなることだしこの際だ、結婚相手に求める理想の男性像も嘘偽りなく書いてみた。

・真面目で誠実
・出来れば身長と収入は高め
・きちんと話し合いが出来る人

え、これってもしかしてあの 三高じゃない? 高身長! 高収入! 高学歴~!

それにしても誰でもいいって思っていたくせに、書き出してみたら自分が物凄く欲深い女だったことが判明した。




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