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書評 #83|欠落

 今野敏の『同期』の系譜を継ぐ『欠落』。同期である大石陽子の誘拐事件と別の死体遺棄事件の二つによって生まれた渦に翻弄されながらも、主人公である宇田川亮太は解決の糸口を見つけ出そうと奔走する。

 遅々として進まない捜査。徐々に交錯し始める二つの事件。暗闇から一筋の光を追い求めるような探究はじれったくもあり、快くもある。宇田川は未熟さを残しつつも、本質を見極めようとする意志が周囲の人々を巻き込み、真実をも手繰り寄せる。

 解決へと向かう過程における、いくばくかの拍子の良さは否めないが、読者の興味を持続させる、物語としての完成度の高さは健在だ。


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