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7月9日、泣く。

感情の閉じ込め方を忘れてしまいました。泣いた。人の目も気にせず泣いた。生きているということが、生活を続けるということが、記憶を残すということが、こんなにも、怖くなったり、嬉しくなったりするなんて。わたしがわたしであることを疑う日があった。わたしの存在価値をだれかの中に見出そうとした日もあった。こんな毎日が、昨日が、今日が、終わってしまえばいいのに、なかったことになればいいのに、消えてしまえばいいのに。過去に放った言葉たち、わたしの中に残り続けて、消化不良。そんなどうにもならない苦しみを、ぎゅっと詰め込んで、全てにありがとうとさようならを言った。言えた。だから泣いた。今日はそんな日だった。

都会はやっぱり嫌いでした。ひさしぶりの人混み、冷たいまち、ひとりのわたし、駅の真ん中で立ちすくんでしまった。当たらないように歩く、たったそれだけの行為が、わたしには難しかった。歩く速度を合わせると息切れ、ゆっくり進むと人の切れ目に上手く飛び込めない、大変なまちだ、都会。

人身事故の影響で駅はいつもより人で溢れかえっていた。遅延に関する情報は一番早いTwitterで。乗換案内のアプリに誘導されるようにTwitterを開く。遅延を嘆くもの、それを非難するもの、淡々と駅の状況を呟くもの。飛び込んだあの人が見たかったのは、どのツイートだったんだろう。駅員さんは電車が来るたびに謝っていた。待合室に詰め込まれた人々はイライラしていた。わたしは、なにもできなかった。

あなたが死んだ。そうすると、ある人は悲しんで、ある人は怒って、ある人は謝って。それを、客観的に見ている気になっているわたしがいて。人間って不思議だね。わたし、「今日まで生きていてくれてありがとうございます」という言葉に号泣した、たった30分後、人身事故が起きていたことを知った。もしあなたがわたしと同じ場所に居て、同じ言葉に涙したなら、あなたの人生は続いただろうか。それとも、「今日まで生きた」という事実に満足して、同じように命を落としただろうか。そんなことを考えても、なんの意味もないけれど。こんなわたしの存在は、あなたがあなたを終わらせた意味を作ることができただろうか。

最近、お風呂場、顔を手で覆うと涙が出てきてしまう。今日声をかけてくれたお兄さん、わたしが誘いを断らなければ、わたしが生きるということを肯定してくれただろうか。人との出会いは尊いものなのに、お兄さんは「ナンパでもキャッチでもない」と言ってくれたのに、「恋人がいます」というとすぐに諦めてくれる良い人だったのに、イケメンだったのに。お兄さんから逃げるように、適当にまちを歩いた。綺麗な歌声が聞こえてきて、なんか、よくわからないけれど、立ち止まってしまった。人、人、人に囲まれている男性が二人、まちの光に負けないくらい、キラキラしていた。まちに響く真っ直ぐな歌声、あっという間に曲が終わる。「ありがとうございます~!」の声、高いテンション、きらきらしていた二人の男性が、ただのチャラいお兄さん二人組になった。一気に現実に連れ戻された気がして、また歌が始まる前に、その場を離れた。わたしが生きていたいと思える場所は、ここでもなかった。

頑張っていないうちはいくらでも弱音を吐ける。頑張っていないから、口から出た言葉は全て、はっきりとした「弱音」だ。でも、頑張っているのに上手くいかない時、どうしたらいいか分からない時に出る言葉は?弱音?弱くはないのに。全力で、本気で、強くなった結果、思うようにはいかなかった現実だけが残ってしまって。そんなことは、もちろんいっぱいあるけれど、頑張り方が分からなくなったのは初めてで、もうわたし、なにをどう頑張ればいいのか、分からない。

死にはしないです。簡単に折れてしまうけれど、だからこそ戻る強さを持っている。でも、最近そうもいかなくて、自分で自分をコントロールできない日々が続いています。わたしはわたしを制御することがどんどん下手になっている。自分にとって一番格好いい行為は自分に嘘をつかないことだ、と誰かが言っていた。わたしの生活は、人に嘘をつかない代わりにわたしに嘘をつき続けている。自分への嘘はやめる。でも、人にも嘘はつかない。

ただ、今日、今日だけ、初めて、悪い嘘をつきました。初めては嘘かも。気持ち的には初めて。貴重な時間、「わたしのため」を優先して、「だれかのため」を排除してしまった。結局、わたしは今日一日、ひとりだった、心も、体も。でも、わたしはひとりになれた。慣れた、成れた。ひとりでランチを食べた。ショッピングをした。映画を観た。泣いた。ナンパもされた。ひとりは、やっぱり嫌だなって、気づいた。今日も、いい日だった。

7月9日。7(な)9(く)。泣く日、だったのね。今日も涙をお風呂場で洗い流した。大丈夫。わたしはまだ、わたしでいられる。






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