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齢と孫子(続き)

   日記より28-3「齢と孫子」 (続き)        H夕闇                  四月十四日(日曜日)晴れ                                                                                        人にも依(よ)るのだろうし、深い浅いの差(感受性の度合い)も有るかも知(し)れないが、巧(たく)まずして訪れる転機が有り難い。齢(よわい)を重ねることは(「加齢」の語感に反して

    • 齢と孫子

           日記より28-2「齢と孫子」         H夕闇                 四月十四日(日曜日)晴れ  この春は、桜(さくら)の並み木道を一人で散歩した他、夫婦でも随分(ずいぶん)あちこち花を愛(め)でて回った。但し花は桜とは限らない。  先ず今月五日に末の娘の案内で横浜の山下公園へ出掛(でか)けた。港のハイ・カラな洋風庭園で、「赤い靴(くつ)履(は)いてた女の子」の像が異国情緒を醸(かも)し出した。今週十日には、長女に誘われて、孫を子供園へ迎えに行った足

      • 学友

             日記より28-1「学友」           H夕闇               令和六年四月九日(火曜日)雨  首都圏は緑が少ない、との先入観に反して、車窓から眺(なが)める沿線は桜の花が多く目に付いた。ちょうど新幹線から花見した今月四日(木曜日)東京は桜が満開になったと聞く。花に祝福されるかの如(ごと)く、畏友と再会する旅だった。  数年前の初対面では、我が家で文学や学問に就(つ)いて親しく議論し、大変に愉快だった。やはり庭に福寿草が咲く季節で、やや凩(こがらし

        • 財布3

               日記より27-21「財布」3         H夕闇 **              三月二十四日(日曜日)晴れ  一族でA温泉へ梅見に出掛(でか)けた。  長女の桜好きと一対で、婿(むこ)殿は梅が好きらしい。前から誘われていたのだが、天気が悪くて、二度も延期。三度目の本日、偶々(たまたま)むすこ父子が我が家に一泊していて、車二台で三世帯七人の一行と相(あい)なった。幼稚園を卒業したばかりの孫と、いとこで離乳食中の乳児、この二人は入場無料だったが、T自然公園の入場料

        齢と孫子(続き)

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        • 24年目16番目~
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        記事

          財布2

               日記より27-20「財布」2         H夕闇            三月二十一日(木曜日)曇り(続き)  金銭に代え難い貴重品を危(あやう)く失い掛(か)けたこと、その上その事実を忘れてさえいたことを、僕は改めて思い知らされた。大切な思い出も、時の重みに流れ去る。そうして過去は失われ行く。軈(やが)て僕の人生その物も同様になるだろう。そうした冷たい認識が、暫(しば)し僕を自失させた。                            又、依然「そんな筈な

          財布1

               日記より27-19「財布」1         H夕闇                三月二十一日(木曜日)曇り  財布(さいふ)を無くした。  新聞の折り込み散らしにSドラッグの割り引きクーポンが入り、それで昼前に乳児用の果汁を買った。更にスーパーBへ行って、週末対策の商品を選び、レジに並んだ所で、はたと紛失に気が付いた。  慌てて、来た道を逆に辿(たど)り、、、煩(わずら)わしいから、以下は中略。  自宅にも無い。中にカードも入っていたので、取り敢(あ)えず銀行へ

          灯台3

               日記より27-18「灯台」3         H夕闇             二月七日(水曜日)晴れ後に曇り  又これらの報道を僕らは決して忘れまい。かれらは人々が軈(やが)て出来事を忘れてくれるのを待ち、この世から事件が風化することを望んでいるのだ。ほとぼりが冷めたら、頃合いを見計らって、次ぎの手に出よう、とて虎視(こし)を眈々(たんたん)と身構えているのだ。だから、僕らは対抗手段として絶対に忘れては成(な)らない。オーム真理教も名前を変えて若者に接近しているそう

          灯台2

               日記より27-17「灯台」2         H夕闇             二月七日(水曜日)晴れ後に曇り  ミニかまくらの灯(とも)し火(び)にも、同様の思い入れが有った。例えば、人が傷心の旅に出たとしよう。眠れず所在ない夜汽車の窓には、遠く底の知れない闇(やみ)が続く。或(ある)いは、氷った月が雪の原を照らして、ボンヤリ青く雪明りがしているかも知(し)れない。暫(しば)らく眺(なが)めていると、かなたに小さな灯火が目に留まる。いなかの一軒家に明かりが灯るのだろ

          灯台1

               日記より27-16「灯台」1         H夕闇             二月七日(水曜日)晴れ後に曇り  きのうの雪は(半月前に比べると、)ズッと少なかった。夜来の積雪は五センチとか。裏の道の雪掻(ゆきか)きが(隣家の前も含め)三十分程で済んだ。前回は薄明から一時間半も掛(か)かったことを思えば、遥かに楽だった。集めた雪の山も、(この前の半ば融(と)けた残雪に積み上げたのだが、それでも)脱衣所の窓の半分程の高さ。これじゃ、子供が入って遊べるような本格的かまくら

          幸先(続き)

               日記より27-15「幸先」(続き)      H夕闇  その夕刻、久々の緊急地震速報が鳴った。この地では空騒ぎに過ぎなかったが、能登半島に死者二百人を越える大きな被害が出た。活断層に因(よ)る最大震度七、津波も約四メートル。僕らは十二年前を思い出し、冷え込みを思(おも)い遣(や)った。心底から温もりが恋いしかった。  翌日夕方、その被災地へ支援物資を運ぶ海上保安庁の飛行機が、羽田空港C滑走路へ誤って進入、着陸滑走のJAL旅客機A350‐900と衝突炎上する大事故が起

          幸先(続き)

          幸先

               日記より27-14「幸先」            H夕闇              令和六年正月十四日(日曜日)晴れ  年賀状を呉(く)れた教え子と旧同僚へ、きのう寒中見舞いを投函して、ホッとした。ここ数年来は虚礼廃止の方針で、こちらからは出さないのだが、それでも新年の挨拶(あいさつ)が来る相手は、有り難く、必ず答礼することにしている。  肩の荷が下りた、と言えば、きのう七回目の新型コロナ・ウイルス感染症のワクチン接種も果たした。昨秋は二回も立て続けにキャンセルして

          阪神大震災

             日記より27-13(2-31)「阪神大震災」       H夕闇                 平成七年一月二十四日 火曜  日本中を震撼(しんかん)させるニュースが走って、既に一週間。この間、僕は家に居(い)る限りはテレビに齧(かじ)りついていた。  一年前に米国カリフォルニア州ロス・アンジェルス市の高架ハイ・ウエイが地震で陥没した時、日本ではこのような事は絶対に起こらないと、何人もの学識経験者が口を揃(そろ)えたが、正(まさ)しくそのような事が実際に起こったのだ。

          阪神大震災

          孫の花(続き)

             日記より27-12「孫の花」(続き)          H夕闇  ここ一月程ガザ地区の病院から届くニュース映像は、残酷だ。発電所の爆撃で保育器が止まり、未熟児たちが力なく手足を動かす姿など、正視に堪(た)えない。あの子たちの親は強い敵意を募らせるに違い無い。  親が死んで子が生き残った場合いも、悲惨だろう。物心が付いて直ぐ、(他の子と違って)自(みずか)らに親の無い事実を、身を以(も)って痛感するだろう。その辛さの分だけ、親を殺したイスラエル軍を憎むだろう。幼い心の奥底

          孫の花(続き)

          孫の花

               日記より27-11「孫の花」         H夕闇        十一月十五日(水曜日)小春日和りの七五三  娘から久しぶりのSOS。早朝の電車で出掛(でか)る筈(はず)だった。  前日からの呼び出し予約だったので、予(あらかじ)め握りめしやら稲荷(いなり)ずしやら、妻は前夜から用意周到(しゅうとう)、おさおさ怠(おこた)り無かった。所(ところ)が、当日の朝、いつも早起きの夫婦が(こんな日に限って)六時まで寝過ごしてしまった。その上、余り外出などせぬ者だから、出掛

          熱帯夜の夢

            日記より27-10「熱帯夜の夢」             H夕闇    八月三十一日(木曜日)晴れ+熱帯夜(今夏三十日目:最多更新中)  夜中に目が覚めた。暑くて、寝苦しい。この夏は、枕頭(ちんとう)の小机(こづくえ)に水筒を用意して寝る。冷たい飲み物を口に含むと、救われた気分になるが、昨夜それだけでは済まなかった。  手足などに執拗(しつよう)な不快感が有るのは、蚊(か)に喰(く)われたらしい。厭(い)や厭や乍(なが)ら起き出して、居間(いま)へ急ぐ。出窓の小引き出しが

          熱帯夜の夢

          キャンプ孝行3

               日記より27-9「キャンプ孝行」3        H夕闇                   八月十二日(土曜日)雨  噴火口(カルデラ)に背を向けて腰を下ろすと、足下の駐車場とレスト・ハウス。その向こうで、小火口が噴煙を上げる。周辺は地肌が黄色い。硫黄(いおう)の臭いも懐かしい。  三好達治の詩「艸(くさ)千里(せんり)浜(はま)」が胸に浮かんだ。登った山その物は(阿蘇山(あそさん)と浄土(じょうど)平(だいら)で)違うが、曽遊(そうゆう)の地(ち)に蘇(よみがえ

          キャンプ孝行3