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【詩】耳栓

「最近は、乾杯のときにビールを強制しちゃいけないらしいよ」
「めんどくさい世の中になったなあ」

君の声だけ、聞こえればいいのに
どんな音も声も、防ぐことはできない
耳を塞いでも、薄汚れた音は漏れ聞こえてしまう

君の声だけ、聞こえればいいのに
体ごとやわらかく包み込むタオルケットのような声
みずみずしく輝く花の香りのような声
南国の、とろりとした甘いフルーツのような声
小さな光の粒を束にしたような声

愛の言葉じゃなくていい
希望の言葉じゃなくていい
むしろ、そうじゃないほうがいい
下らなくてもありきたりでも
君の声だけ聴いていたい

カビの生えたパンを後生大事に抱えて
そのパンを周囲に配ってまわるような
そんな声は、もうたくさんだ

「コンプラとかポリコレとか、ほんとめんどくさい」
「昔は、上の人間の言うことは絶対だったのに」

君の声だけ聴いていたい
君の声を、耳栓にするの
 



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