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【詩】トロッコ問題

線路を走るトロッコ一台
制御不能のトロッコ一台
トロッコの行く手に母親ひとり
分岐の先には少女がひとり

母も娘も金縛り
身動き取れず金縛り
迫り来るトロッコ一台
分岐の前までトロッコ一台

白い翼の使者が舞い降り
黄金の笏を一振りすれば
トロッコは止まれど
母と娘は金縛りのまま

あの娘はお前の子どもか
そうです、私の娘です
あの娘はお前が作った子か
そうです、私と良人おっとの愛の証です
あの娘はお前が生んだ子か
そうです、お腹を痛めて生んだ子です
あの娘をお前は愛しているか
そうです、誰より何より大切な子です

使者はまた笏をひと振り
トロッコはまた走り出し
使者はまた笏をひと振り
分岐の切り替えレバーが切り替わり

少女めがけてトロッコ一台
叫びに叫ぶ母親ひとり
撥ね飛ばされる少女がひとり
白い翼の使者がひとり

どうして!
どうして娘を殺したの!

生き残る苦しみを背負うべきは
この世に子を生み出した親のほうだからだよ
 



◆実際の「トロッコ問題」とは↓



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