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【詩】生誕の災厄

生まれなくてもよかったけれど
生まれさせられてしまったので
真夜中に爪を切っている

生まれなくてもよかったのに
生まれさせられてしまったので
浴室の排水溝に絡まった髪を眺めている

生まれないほうがよかったのに
生まれさせられてしまったので
友と談笑しながら孤独を肥大させている

生まれたくはなかったが
生まれさせられてしまったので
「目標は何ですか?」にヘラヘラと嘘をついている

生まないでほしかったが
生まれさせられてしまったので
倦怠と痛みの起こる生を持て余している
 



詩のタイトルは、ルーマニア出身の思想家エミール・シオランの著作から拝借しました。
厭世的かつ力強いアフォリズムに満ちた一冊です。日々「生きるってしんどいなー」「ポジティブな言葉って、かえって死にたくなるなー」と思っている人にオススメ!


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