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【詩】夕暮れ前

夕暮れ前、近所の保育園から子どもたちの声が聞こえる
ふと、それを恐ろしいことのように感じてしまう
みんな、いつまでこれを続けるつもりなのだろう

少子化だ少子化だと騒いでいるが
子どもはあとからあとから生まれさせられて
年少さんがやがて年長さんになり
やがて卒園し、すると次の子どもたちが入ってくる
彼らの多くは、そのうち労働市場に出荷されてゆく

少子化だ少子化だと騒いでいるが
毎年毎年、新たな子どもが供給されて
子どもたちの声には切りがない

夕暮れ前、近所の保育園から子どもたちの声が聞こえる
生まれさせられたからには、どの子にも幸福でいてほしいが
彼らのうちの何人かは、虐待されているだろう
彼らのうちの何人かは、食事も衣服も足りていないだろう
彼らのうちの何人かは、いじめられたり搾取されたり性的被害に遭うだろう
彼らのうちの何人かは、重い病や障害を負わされるだろう
彼らのうちの何人かは、そのうちみずから死を願うだろう

ここはそういう世界であるのに
これだけ次々子どもが供給されるということは
多くの人は、まだこの世界を続けるつもりのようだ
それが何より、恐ろしいことだ

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