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中盤以降の駆け足展開が残念。実写版「幽☆遊☆白書」感想

全5話は、どう考えても短いって。

2023年12月14日、ついに配信開始となった実写版「幽☆遊☆白書」
以前から色んな意味で注目していた本作の、全話視聴後のレビューをお送りします。

原作要素の抜き出し&再構成はお見事

実写版は原作でいうところの1巻から13巻、霊界死闘編・霊界探偵編・暗黒武術会編の要素を分解し、約50分×5話に再構成しています。

個人的には、ストーリーのまとめ方はお見事だったと思います。
必要な設定やエピソード、キャラクターや台詞は残し、違和感のないように再構成。
実写で表現が難しい要素は潔く切り捨て、深みが出る部分はディティールまで表現する。
違和感がある部分もなく、ソツなくまとまっています。

魔界との繋がりをど頭に入れてしまって、最初から皿屋敷市をやや不気味な街として捉えていたり、冒頭の幽助が死ぬくだりにその要素が加わっているのも見事な改変。
これだけの要素をうまく5話の中に入れ込んだなー、という。

鴉の「トリートメントはしているか?」、戸愚呂の「お前に足りないものがある。危機感だ」、幽助の「しがみついてでも守る」等、名ゼリフは多少シチュエーションが違えど可能な限りそのまま使用されていますし、魔回虫界境トンネル霊界の三大秘宝等原作ファンが歓喜するワードをストーリーにしっかり盛り込んでいたのもポイント高いです。

ただし、全5話であることが一番の失敗

ただ、『ソツなくまとまっている』のもあくまで全5話完結、という縛りの中での話で。
平たく言うと、5話完結にしたことが本作の一番の失敗です。

この尺でまとめるためには、必要最低限の描写以外は切っていくしかない。
だからこそ、テンポの良いドラマには仕上がっている。
しかしながら、後半になればなるほど駆け足になっていくのはマイナスポイント。

何せ、各キャラに思い入れを持たせる時間があまりにも短い。
例えば、中盤の幻海師範の死は原作ではかなり印象的に描かれているシーンなんですが。
本作では、幽助たちと幻海が知り合ってからなくまるまでの時間が短すぎるんですよね。
で、幻海と戸愚呂の戦いも描かれないから全然心が動かされない。笑

戸愚呂が死後に幻海と邂逅するシーンも原作通り丁寧に描かれていましたが、とってつけた感がすごい。
梶芽衣子の若返りCGの違和感もすごいので、コレじゃない感倍増です。

僕は原作を読んでいるのでまだ脳内で設定を補完できるんですが、それができない初見の人達にとってはどう写るんでしょうか。不安。

幻海関連に限らず、この描写不足による残念感はドラマ全体に漂っています。
蔵馬が妖狐の姿に戻るシーンもそもそも人間状態の蔵馬をそこまで見慣れていないから変身した感が薄いし、飛影が包帯を外す意味も解説がないと意味不明なのでは?

そもそも、何故全5話なんでしょうか。
暗黒武術界編前までで話を切っちゃえば良かったのに。
続編を出せる程のヒットを最初から期待していなかったから話数制限の中でやれることをすべてやったのか、制作費が足りなかったのか…イマイチ解せないですね。


美術が優秀、キャラクタービジュアルをうまく補助(ただし数人は許容できない)

あと、本作はセットのクオリティがめちゃくちゃ高かったですね。

特に、幽助達が住んでいる皿屋敷市の街づくりが秀逸。
生活感はあるのに絶妙な異世界感もあって、浮世離れしたキャラクターがいても割と馴染む。
美術部のレベルの高さをひしひしと感じましたね。

発表後に悪い意味でネットをざわつかせたキャラクタービジュアルですが、動いていると案外悪くありませんでした。

幽助は短ランと制服の色に違和感がありましたが、何気にヘアメイクが優秀ですね。
漫画の髪型の解釈がうまいし、激しい動きや雨風によって髪が乱れている時もあってリアリティがありました。

桑原も同じく。さすがにイケメン過ぎ感はありますけど、現代的・現実的に解釈するとこんな感じになるんでしょう。

スチール見たときは一番ヤバいと思った飛影でしたが、映像観たら案外平気でした。
一番気になったのは本郷奏多の腕の細さでしたね。

ただし蔵馬、おめーはやっぱダメだ。
「南野秀一」は人間界に馴染むための仮の姿のはずなんですが、妖狐の姿の方がまだまともに見えるぞ。
やっぱ赤髪赤制服はキツいって。

あと、戸愚呂弟の100%も結構ヤバかったです。
顔以外がデカ過ぎるし、顔だけめっちゃ綾野剛そのままなので違和感すごい。
スジとかシワを入れて、質感を体の他の部分に寄せれば良いのに。

ぼたん・コエンマの霊界コンビのビジュもうーん、って感じ。
コエンマは町田啓太の圧倒的イケメンさでカバーしていましたが、古川琴音はキャラ的にもちょっとしんどかったですね。


アクションは確かにすごいけど、ラストバトルは既視感あり

アクションは、全編に渡ってかなり良い出来でしたね。
序盤から幽助が強過ぎるのはちょっと違和感でしたが、殺陣っぽくなくてちゃんと喧嘩バトルしているのは好印象。
1話から5話に向かって幽助の動きが徐々に洗練されていくのもリアリティあり。
剛鬼とのバトルとか、「キャプテン・アメリカ」みたいなアクションしててびっくりしました。
日本でも頑張ればここまでアクションできるんだ、っていう。

蔵馬・飛影絡みのシーンはCGの質感がやや疑わしいところもありましたが、二人の戦闘スタイルをうまく表現できていたと思います。

ただ、戸愚呂とのラストバトルは完全に実写版「るろうに剣心」での剣心・斉藤・左之助・蒼紫VS志々雄にしか見えなかった。
絶対見せ方参考にしてるだろ、アレ。

霊丸とか、霊能力の演出もまあ許容範囲。
ただ、なんで桑原の霊剣も青いんだろう。
原作とかアニメではオレンジだったよね?

あと、全然関係ないんですけど北村匠海って声がカッコ良いんですね。
「霊丸!」っていう時の声の感じがアニメっぽいのにちゃんと実写にハマってたし、日常会話の口調もサマになっててすげえなと思いました。

キャスト陣はみんな頑張っている

北村くんをはじめ、キャスト陣はみんな頑張ってました。
飛影を演じた本郷奏多は声色とかもアニメを意識しているのが伝わってきたし。
志尊君もかなりプレッシャーがあったと思いますが、蔵馬としての立ち振る舞いが中々堂に入っていました。

心配していた桑原役の上杉柊平も、泥臭さをうまく表現していました。
実写になっても、桑ちゃんはやっぱ愛されキャラ。

戸愚呂(兄)の滝藤賢一もハマり役。
喋り方がクセになるし、観ているうちにサイズ感も見慣れてきます。

個人的に案外微妙だったのは、幻海役の梶芽衣子。
ビジュアルはぴったりなんですが、キャラクターがちょっと幻海と違うような気がしてしまいました。

一方で、ベテラン勢で光っていたのは稲垣吾郎。
本当、この人は目に光がない悪役が似合う。
真面目な顔して一番イカれてる役がバッチリはまってました。


というわけで、成功が失敗かでいうと一応成功側には入りそうな本作。
シーズン2がもしあるなら、全5話すべてを”魔界の扉編”に費やしてほしい。
魔界に行ってからの話も一気にやるなら、全体の話数自体を増やしてほしいですね。

ネットの評判は賛否で言うと賛の方が多い気がします。
まあ、原作で一番人気が高い暗黒武術界編を今回消化してしまったので続編があるかは微妙ですが…

全5話と短尺なので、気になった方は是非ご覧になってみてください。
割とあっさり観れちゃいますよ。

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