マヤグチマガジン

NOと言えない典型的な日本人。同僚から、ほとんど興味のないジャンルの小説20冊を、無理…

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NOと言えない典型的な日本人。同僚から、ほとんど興味のないジャンルの小説20冊を、無理やり押し付けられた経験を持つ。キッパリと断ったはずなのに、何故?

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【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

“あのちゃんの衝撃”再び現在のフォーマットとは少し違って、朝の大喜利番組としてのテイストが色濃かった頃の『ラヴィット!』(TBS)。 2021年10月13日の放送は、同局のバラエティ『水曜日のダウンタウン』のドッキリ企画との連動だった。 アクの強い芸人たちが遠隔で繰り出すトンデモ大喜利回答を、リアルタイムで連発するために、生放送の現場に送り込まれた刺客が、あのちゃんだった。 結果、独特の気だるい雰囲気を全面に押し出した喋り方で、“不思議ちゃん”の形容そのままのあのちゃん

    • 【映画所感】 “極私的2023年鑑賞映画TOP10”

      もうすぐ2月も終わり。花粉が本格的に跋扈する季節になってからの、昨年振り返り企画。 自分の“先送り体質”が心底嫌になります。 どうしようもなく自堕落な人間が、好き勝手に映画を語っておりますが、それでも興味がおありの方は、どうぞ自己責任でお付き合いください。 2023年1月1日〜12月31日までを区切りとして、「誰が言うとんねん!」なお叱りをいただくであろうことは重々承知の上、早速ランキングしてまいります。 では、惜しくも10位に入らなかった次点の作品から。 【次点】

      • 【映画所感】 哀れなるものたち ※ネタバレ注意

        成人向け“アルジャーノンに花束を”ものすごく乱暴な例えなのは百も承知。 しかし、成長しきった器の中で、純粋無垢な脳みそがいちから育っていく有り様は、オールタイムベストなSF小説と共通項が多いように感じた。 R−18ということから推察される通り、単に日々の生活と鍛錬、学習によって運動機能と知性が爆発的に発達していくだけではない。 成長に伴い芽生える、自身の“性”への関心と欲求に抗う術を持ち合わせない女性の、奔放な冒険譚にストーリーの中心が置かれる。 天才解剖医・ゴッドウ

        • 【映画所感】 笑いのカイブツ ※ネタバレ注意

          お笑いに取り憑かれたカイブツ=ツチヤタカユキの狂気に満ちた半生 NHKで2006年から2016年にかけて放送されていた視聴者投稿型の大喜利番組『着信御礼!ケータイ大喜利』にて、最高位“レジェンド”の称号を手に入れたツチヤタカユキ。 「1日に1000個のボケを考える」を自らに課し、バイトそっちのけ、寝る間も惜しんで、高校時代からネタを絞り出すこと6年。見事、目標を達成してみせる。 その過酷な生活は、常人には到底理解し得ないもの。 今どき、純朴な高校球児でも敬遠するような

        【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

          【映画所感】 サンクスギビング ※ネタバレ注意

          アメリカの感謝祭=サンクスギビング(11月の第4木曜日)に起こった悲劇。翌年、さらなる惨劇となってよみがえる 惨劇の引き金となった、郊外の大型商業施設での暴動事件。 脳みそ筋肉なバカップル高校生。 ブラックフライデーの大売り出しを血眼の形相で待ちわびる、欲望むき出しの消費者たちを煽りに煽る。 結果、全員が消費者から暴徒へと豹変。すべてが取り返しのつかないことに。 冒頭のこの阿鼻叫喚を見られただけで、十分幸せな気分に浸れる。 スクリーンで繰り広げられるトラジェディは

          【映画所感】 サンクスギビング ※ネタバレ注意

          【映画所感】 市子 ※ネタバレなし

          毎年この時期になると、今年観た映画を反芻し、自分なりのトップ10なんかをつらつらと考えたり、偉そうに意見を求めたりしている。 そこへ来て、この『市子』。 “青天の霹靂”とは、まさにこのこと。晴れわたった空で突然光ったカミナリに、脳天を貫かれる。 木っ端微塵に砕け散った気持ちを、地面にうずくまりながら、せわしなく両手でかき集めている自分。 その様子をぼぉ〜っと俯瞰している自分。 観終わった直後の状態を言語化しろと問われれば、このように答えるしかない。 要するに、心こ

          【映画所感】 市子 ※ネタバレなし

          【映画所感】 首 ※ネタバレ注意

          1980年に突如としてはじまった漫才ブーム。 もちろん、それまでにも寄席番組やお笑い番組は放送されていたし、漫才や落語をテレビで観る機会も多々あった。とくにここ関西では。 マイク一本だけで、思いの外視聴率が稼げることに気づいたテレビ局制作サイドが、『花王 名人劇場』(関西テレビ)や『THE MANZAI』(フジテレビ)を通じて夜のゴールデンタイムに、しかも全国ネットで漫才の放送を開始する。 もちろん、揃いの背広で、ふたりの掛け合いを中心とした、既存の演芸スタイルではなく

          【映画所感】 首 ※ネタバレ注意

          【映画所感】 月 ※ネタバレ注意

          鑑賞後すぐにでも、誰かに聞いてもらうなり、文章にしてみせるなりしないと、自分が保てないような映画 絶えずスクリーンから「おまえならどうする?」と、問いかけられているようで、ひとときも気が休まらない。 2016年7月に神奈川県相模原市で発生した「相模原障害者施設殺傷事件」(津久井やまゆり園事件)が、本作『月』のモチーフで、原作は辺見庸の同名小説。 大量殺人を犯すことになる元施設職員、通称さとくんを磯村勇斗が狂おしく演じてみせる。 さとくんが、新人職員で元作家の堂島洋子(

          【映画所感】 月 ※ネタバレ注意

          【映画所感】 ゴジラ−1.0 ※ネタバレ注意

          VFX職人、山崎貴の集大成 プロ野球・日本シリーズ第5戦を終え日本一に王手をかけた直後、阪神の岡田彰布監督はインタビューで「次戦では今年の集大成を見せる」と発言した。 翌日、公開初日に本作『ゴジラ−1.0』を鑑賞。 今年の阪神タイガースの集大成を見極めるより一足早く、山崎貴監督作品の集大成を拝ませてもらった。 ※阪神タイガース、38年ぶりの日本一おめでとうございます! で、本作『ゴジラ−1.0』。 物語も佳境に入った終盤、敷島浩一(神木隆之介)が駆る、前翼型の局地

          【映画所感】 ゴジラ−1.0 ※ネタバレ注意

          【映画所感】 イコライザー THE FINAL ※ネタバレ注意

          ザコだと思っていたら、実は“殺人マシーン”だった! 「エンタメあるある」なジャンルムービーの中において、もっともスカっとするストーリーといっても過言ではない『イコライザー』シリーズ。 最新作にして最終作…? 今回の舞台は、アメリカ本土を遠く離れ、イタリアはシチリア地方の漁師町。 デンゼル・ワシントン演じる元CIAの凄腕工作員、ロバート(ロベルト)・マッコールは、瀕死の重傷を負ったところを、この港町に医院を構える老医師に助けられる。 血で血を洗う裏稼業で疲弊しきった心

          【映画所感】 イコライザー THE FINAL ※ネタバレ注意

          【映画所感】 BAD LANDS バッド・ランズ ※ネタバレ注意

          オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺グループの原資をめぐるコンゲーム 我が国で最もディープな街といっても過言ではない、大阪・西成のあいりん地区。清濁ごった煮の街で繰り広げられるフィルム・ノワールが心底熱い。 原作小説は黒川博行のクライムノベル、『勁草』(けいそう)。 原作では男性となっている主人公を、本作『BAD LANDS』ではあえて女性に変更。 安藤サクラ演じる詐欺師(手配師)・橋岡ネリが、大阪の街を疾風怒濤のごとく駆け巡ることで、裏社会の屋台骨がグラつきだす。 性

          【映画所感】 BAD LANDS バッド・ランズ ※ネタバレ注意

          【映画所感】 1秒先の彼 ※ネタバレ注意

          2021年公開の台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイク ちょうど2年前のレビューがこちら。 『1秒先の彼』というタイトルのとおり日本版は、台湾版オリジナルとは男女の設定を逆にした構成で、盛夏の京都を舞台に話が進む。 岡田将生と清原果耶のW主演に、脚本は宮藤官九郎(以下、クドカン)。 リメイクという足枷の中、クドカンがどんなふうに“らしさ”を披露してくれるのか興味津々。 出色のアジアン・ファンタジーを、どこまでフザケて再構築してくれるのか… 結果、杞憂に過ぎなかっ

          【映画所感】 1秒先の彼 ※ネタバレ注意

          【映画所感】 告白、あるいは完璧な弁護 ※ネタバレ注意

          痺れる脚本、息を呑む演技この2つのポイントを的確に衝いてくる快作『告白、あるいは完璧な弁護』を遅まきながら鑑賞。 数ヶ月前に観た劇場予告で、主演がキム・ユンジンだということを知り、俄然期待値が高まったいた。 キム・ユンジンとくれば、なんと言っても『LOST』。 2004年〜2010年にかけて放映されていた、アメリカのテレビドラマ(シーズン1〜6)で、監督・脚本・制作を務めたJ.J.エイブラムスの名前を全世界に知らしめた、メガトン級の作品だ。 飛行機の墜落事故で、無人島

          【映画所感】 告白、あるいは完璧な弁護 ※ネタバレ注意

          【映画所感】 死体の人 ※ネタバレなし

          怪優、奥野瑛太を心ゆくまで愛でる映画 果たしていつ頃から、奥野瑛太を意識しだしたのだろう? 2020年初頭に劇場で観た、『37セカンズ』。 奥野瑛太は、女性用風俗の男性キャスト、というかセラピスト役だったはず。 “男娼”というチープな表現とは一線を画した役回りを、相手の想いに必要以上に踏み込むでもなく、突き放すでもなく、淡々と演じていた印象だった。 ワンシーンだけで、観客の気持ちとシンクロ。彼から放たれる衒いのない波動に、平常心ではいられない。 『37セカンズ』の

          【映画所感】 死体の人 ※ネタバレなし

          【映画所感】 ザ・ホエール ※ネタバレなし

          嗚咽が漏れて、立ち上がれない。 −−−不覚。 体重272キロの男、チャーリー(ブレンダン・フレイザー)に感情移入してしまったから? −−−断じてちがう。 失われた家族の絆、再生の物語? −−−そんな安っぽいものじゃない。 ただただ、“言葉の力”に圧倒されただけ。 それだけ。 常軌を逸した肥りかたをしたチャーリー。 彼の日常生活は、リビングのソファの上ですべてが完結する。 英語講師のチャーリーは、オンライン授業で学生たちにエッセイ(文章)の書き方を教え、生計

          【映画所感】 ザ・ホエール ※ネタバレなし

          【映画所感】 ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー ※ネタバレ注意

          1996年生まれの阪元裕吾監督。 インディーズ時代から、バイオレンスとアクションに青春を捧げ、しがらみや制約をものともせずに、肉体表現の精度を研ぎ澄ましてきたのだと思う。 これまでの作品を全部観たわけではないが、商業映画以前の『スロータージャップ』や『ハングマンズ・ノット』に内包された狂気や残虐性は、ときに正視できないほどに突き抜けていた。 自分が阪元監督の商業映画で最初に鑑賞したのは、『ある用務員』(2020)だった。 裏社会のボスの一人娘(女子高生)のボディガード

          【映画所感】 ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー ※ネタバレ注意