マヤグチマガジン

NOと言えない典型的な日本人。同僚から、ほとんど興味のないジャンルの小説20冊を、無理…

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NOと言えない典型的な日本人。同僚から、ほとんど興味のないジャンルの小説20冊を、無理やり押し付けられた経験を持つ。キッパリと断ったはずなのに、何故?

記事一覧

【映画所感】 インフィニティ・プール ※ネタバレ注意

カルト女優、ミア・ゴスの魅力全開スタジオA24が制作、タイ・ウェストが監督したホラー映画『X エックス』(2022)と、その前日譚を描いた『Pearl パール』(2023)。 ホ…

【映画所感】 ゴジラ×コング 新たなる帝国 ※ネタバレ注意

笑っちゃうほどのご都合主義「いい意味で」とは、あえて付け加えない。 2014年のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』からつづく、モンスターヴァースシリーズは、もう完全に…

【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

“あのちゃんの衝撃”再び現在のフォーマットとは少し違って、朝の大喜利番組としてのテイストが色濃かった頃の『ラヴィット!』(TBS)。 2021年10月13日の放送は、同局…

【映画所感】 “極私的2023年鑑賞映画TOP10”

もうすぐ2月も終わり。花粉が本格的に跋扈する季節になってからの、昨年振り返り企画。 自分の“先送り体質”が心底嫌になります。 どうしようもなく自堕落な人間が、好…

【映画所感】 哀れなるものたち ※ネタバレ注意

成人向け“アルジャーノンに花束を”ものすごく乱暴な例えなのは百も承知。 しかし、成長しきった器の中で、純粋無垢な脳みそがいちから育っていく有り様は、オールタイム…

【映画所感】 笑いのカイブツ ※ネタバレ注意

お笑いに取り憑かれたカイブツ=ツチヤタカユキの狂気に満ちた半生 NHKで2006年から2016年にかけて放送されていた視聴者投稿型の大喜利番組『着信御礼!ケータイ大喜利』…

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【映画所感】 サンクスギビング ※ネタバレ注意

アメリカの感謝祭=サンクスギビング(11月の第4木曜日)に起こった悲劇。翌年、さらなる惨劇となってよみがえる 惨劇の引き金となった、郊外の大型商業施設での暴動事件…

【映画所感】 市子 ※ネタバレなし

毎年この時期になると、今年観た映画を反芻し、自分なりのトップ10なんかをつらつらと考えたり、偉そうに意見を求めたりしている。 そこへ来て、この『市子』。 “青天の…

【映画所感】 首 ※ネタバレ注意

1980年に突如としてはじまった漫才ブーム。 もちろん、それまでにも寄席番組やお笑い番組は放送されていたし、漫才や落語をテレビで観る機会も多々あった。とくにここ関西…

【映画所感】 月 ※ネタバレ注意

鑑賞後すぐにでも、誰かに聞いてもらうなり、文章にしてみせるなりしないと、自分が保てないような映画 絶えずスクリーンから「おまえならどうする?」と、問いかけられて…

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【映画所感】 ゴジラ−1.0 ※ネタバレ注意

VFX職人、山崎貴の集大成 プロ野球・日本シリーズ第5戦を終え日本一に王手をかけた直後、阪神の岡田彰布監督はインタビューで「次戦では今年の集大成を見せる」と発言した…

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【映画所感】 イコライザー THE FINAL ※ネタバレ注意

ザコだと思っていたら、実は“殺人マシーン”だった! 「エンタメあるある」なジャンルムービーの中において、もっともスカっとするストーリーといっても過言ではない『イ…

【映画所感】 BAD LANDS バッド・ランズ ※ネタバレ注意

オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺グループの原資をめぐるコンゲーム 我が国で最もディープな街といっても過言ではない、大阪・西成のあいりん地区。清濁ごった煮の街で繰…

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【映画所感】 1秒先の彼 ※ネタバレ注意

2021年公開の台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイク ちょうど2年前のレビューがこちら。 『1秒先の彼』というタイトルのとおり日本版は、台湾版オリジナルとは男女の…

【映画所感】 告白、あるいは完璧な弁護 ※ネタバレ注意

痺れる脚本、息を呑む演技この2つのポイントを的確に衝いてくる快作『告白、あるいは完璧な弁護』を遅まきながら鑑賞。 数ヶ月前に観た劇場予告で、主演がキム・ユンジン…

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【映画所感】 死体の人 ※ネタバレなし

怪優、奥野瑛太を心ゆくまで愛でる映画 果たしていつ頃から、奥野瑛太を意識しだしたのだろう? 2020年初頭に劇場で観た、『37セカンズ』。 奥野瑛太は、女性用風俗の男…

【映画所感】 インフィニティ・プール ※ネタバレ注意

【映画所感】 インフィニティ・プール ※ネタバレ注意

カルト女優、ミア・ゴスの魅力全開スタジオA24が制作、タイ・ウェストが監督したホラー映画『X エックス』(2022)と、その前日譚を描いた『Pearl パール』(2023)。

ホラー・ガチ勢の溜飲を下げたこの2作品において、圧倒的な存在感を放っていた、怪優ミア・ゴス。

ラスボス感ありありのフルネームからして、その後の役者人生では、つねに勝者の側にいるにちがいないと、勝手に妄想してしまう。

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【映画所感】 ゴジラ×コング 新たなる帝国 ※ネタバレ注意

【映画所感】 ゴジラ×コング 新たなる帝国 ※ネタバレ注意

笑っちゃうほどのご都合主義「いい意味で」とは、あえて付け加えない。

2014年のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』からつづく、モンスターヴァースシリーズは、もう完全に東宝の日本版とは一線を画すものになった。

ファミリー向けの娯楽作品と、完全なるシリアス路線。

とくに本作は、1960年代から70年代にかけて粗製濫造された、所謂子ども向けの“プロレス・ゴジラ”を、そのまま踏襲しているかのよ

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【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

“あのちゃんの衝撃”再び現在のフォーマットとは少し違って、朝の大喜利番組としてのテイストが色濃かった頃の『ラヴィット!』(TBS)。

2021年10月13日の放送は、同局のバラエティ『水曜日のダウンタウン』のドッキリ企画との連動だった。

アクの強い芸人たちが遠隔で繰り出すトンデモ大喜利回答を、リアルタイムで連発するために、生放送の現場に送り込まれた刺客が、あのちゃんだった。

結果、独特の気だ

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【映画所感】 “極私的2023年鑑賞映画TOP10”

【映画所感】 “極私的2023年鑑賞映画TOP10”

もうすぐ2月も終わり。花粉が本格的に跋扈する季節になってからの、昨年振り返り企画。

自分の“先送り体質”が心底嫌になります。

どうしようもなく自堕落な人間が、好き勝手に映画を語っておりますが、それでも興味がおありの方は、どうぞ自己責任でお付き合いください。

2023年1月1日〜12月31日までを区切りとして、「誰が言うとんねん!」なお叱りをいただくであろうことは重々承知の上、早速ランキングし

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【映画所感】 哀れなるものたち ※ネタバレ注意

【映画所感】 哀れなるものたち ※ネタバレ注意

成人向け“アルジャーノンに花束を”ものすごく乱暴な例えなのは百も承知。

しかし、成長しきった器の中で、純粋無垢な脳みそがいちから育っていく有り様は、オールタイムベストなSF小説と共通項が多いように感じた。

R−18ということから推察される通り、単に日々の生活と鍛錬、学習によって運動機能と知性が爆発的に発達していくだけではない。

成長に伴い芽生える、自身の“性”への関心と欲求に抗う術を持ち合わ

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【映画所感】 笑いのカイブツ ※ネタバレ注意

【映画所感】 笑いのカイブツ ※ネタバレ注意

お笑いに取り憑かれたカイブツ=ツチヤタカユキの狂気に満ちた半生

NHKで2006年から2016年にかけて放送されていた視聴者投稿型の大喜利番組『着信御礼!ケータイ大喜利』にて、最高位“レジェンド”の称号を手に入れたツチヤタカユキ。

「1日に1000個のボケを考える」を自らに課し、バイトそっちのけ、寝る間も惜しんで、高校時代からネタを絞り出すこと6年。見事、目標を達成してみせる。

その過酷な生

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【映画所感】 サンクスギビング ※ネタバレ注意

【映画所感】 サンクスギビング ※ネタバレ注意

アメリカの感謝祭=サンクスギビング(11月の第4木曜日)に起こった悲劇。翌年、さらなる惨劇となってよみがえる

惨劇の引き金となった、郊外の大型商業施設での暴動事件。

脳みそ筋肉なバカップル高校生。

ブラックフライデーの大売り出しを血眼の形相で待ちわびる、欲望むき出しの消費者たちを煽りに煽る。

結果、全員が消費者から暴徒へと豹変。すべてが取り返しのつかないことに。

冒頭のこの阿鼻叫喚を見ら

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【映画所感】 市子 ※ネタバレなし

【映画所感】 市子 ※ネタバレなし

毎年この時期になると、今年観た映画を反芻し、自分なりのトップ10なんかをつらつらと考えたり、偉そうに意見を求めたりしている。

そこへ来て、この『市子』。

“青天の霹靂”とは、まさにこのこと。晴れわたった空で突然光ったカミナリに、脳天を貫かれる。

木っ端微塵に砕け散った気持ちを、地面にうずくまりながら、せわしなく両手でかき集めている自分。

その様子をぼぉ〜っと俯瞰している自分。

観終わった

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【映画所感】 首 ※ネタバレ注意

【映画所感】 首 ※ネタバレ注意

1980年に突如としてはじまった漫才ブーム。

もちろん、それまでにも寄席番組やお笑い番組は放送されていたし、漫才や落語をテレビで観る機会も多々あった。とくにここ関西では。

マイク一本だけで、思いの外視聴率が稼げることに気づいたテレビ局制作サイドが、『花王 名人劇場』(関西テレビ)や『THE MANZAI』(フジテレビ)を通じて夜のゴールデンタイムに、しかも全国ネットで漫才の放送を開始する。

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【映画所感】 月 ※ネタバレ注意

【映画所感】 月 ※ネタバレ注意

鑑賞後すぐにでも、誰かに聞いてもらうなり、文章にしてみせるなりしないと、自分が保てないような映画

絶えずスクリーンから「おまえならどうする?」と、問いかけられているようで、ひとときも気が休まらない。

2016年7月に神奈川県相模原市で発生した「相模原障害者施設殺傷事件」(津久井やまゆり園事件)が、本作『月』のモチーフで、原作は辺見庸の同名小説。

大量殺人を犯すことになる元施設職員、通称さとく

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【映画所感】 ゴジラ−1.0 ※ネタバレ注意

【映画所感】 ゴジラ−1.0 ※ネタバレ注意

VFX職人、山崎貴の集大成

プロ野球・日本シリーズ第5戦を終え日本一に王手をかけた直後、阪神の岡田彰布監督はインタビューで「次戦では今年の集大成を見せる」と発言した。

翌日、公開初日に本作『ゴジラ−1.0』を鑑賞。

今年の阪神タイガースの集大成を見極めるより一足早く、山崎貴監督作品の集大成を拝ませてもらった。

※阪神タイガース、38年ぶりの日本一おめでとうございます!

で、本作『ゴジラ−

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【映画所感】 イコライザー THE FINAL ※ネタバレ注意

【映画所感】 イコライザー THE FINAL ※ネタバレ注意

ザコだと思っていたら、実は“殺人マシーン”だった!

「エンタメあるある」なジャンルムービーの中において、もっともスカっとするストーリーといっても過言ではない『イコライザー』シリーズ。

最新作にして最終作…?

今回の舞台は、アメリカ本土を遠く離れ、イタリアはシチリア地方の漁師町。

デンゼル・ワシントン演じる元CIAの凄腕工作員、ロバート(ロベルト)・マッコールは、瀕死の重傷を負ったところを、

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【映画所感】 BAD LANDS バッド・ランズ ※ネタバレ注意

【映画所感】 BAD LANDS バッド・ランズ ※ネタバレ注意

オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺グループの原資をめぐるコンゲーム

我が国で最もディープな街といっても過言ではない、大阪・西成のあいりん地区。清濁ごった煮の街で繰り広げられるフィルム・ノワールが心底熱い。

原作小説は黒川博行のクライムノベル、『勁草』(けいそう)。

原作では男性となっている主人公を、本作『BAD LANDS』ではあえて女性に変更。

安藤サクラ演じる詐欺師(手配師)・橋岡ネリが

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【映画所感】 1秒先の彼 ※ネタバレ注意

【映画所感】 1秒先の彼 ※ネタバレ注意

2021年公開の台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイク

ちょうど2年前のレビューがこちら。

『1秒先の彼』というタイトルのとおり日本版は、台湾版オリジナルとは男女の設定を逆にした構成で、盛夏の京都を舞台に話が進む。

岡田将生と清原果耶のW主演に、脚本は宮藤官九郎(以下、クドカン)。

リメイクという足枷の中、クドカンがどんなふうに“らしさ”を披露してくれるのか興味津々。

出色のアジアン・

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【映画所感】 告白、あるいは完璧な弁護 ※ネタバレ注意

【映画所感】 告白、あるいは完璧な弁護 ※ネタバレ注意

痺れる脚本、息を呑む演技この2つのポイントを的確に衝いてくる快作『告白、あるいは完璧な弁護』を遅まきながら鑑賞。

数ヶ月前に観た劇場予告で、主演がキム・ユンジンだということを知り、俄然期待値が高まったいた。

キム・ユンジンとくれば、なんと言っても『LOST』。

2004年〜2010年にかけて放映されていた、アメリカのテレビドラマ(シーズン1〜6)で、監督・脚本・制作を務めたJ.J.エイブラム

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【映画所感】 死体の人 ※ネタバレなし

【映画所感】 死体の人 ※ネタバレなし

怪優、奥野瑛太を心ゆくまで愛でる映画

果たしていつ頃から、奥野瑛太を意識しだしたのだろう?

2020年初頭に劇場で観た、『37セカンズ』。

奥野瑛太は、女性用風俗の男性キャスト、というかセラピスト役だったはず。

“男娼”というチープな表現とは一線を画した役回りを、相手の想いに必要以上に踏み込むでもなく、突き放すでもなく、淡々と演じていた印象だった。

ワンシーンだけで、観客の気持ちとシンク

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