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宇宙ビンズと古代神獣アラハバキ〜イラスト:ラムジー×小説:ジコマンキング

この物語は、惑星テコヘンがありとあらゆる星々を調査するために結成した「惑星調査団」に所属する能天気な宇宙人ビンズと、その友ベーリッヒの活動報告である。


遥か昔、とある惑星に神獣が住んでおり、人々に力を与え繁栄を促していた。しかし惑星に住む邪悪なる戦士たちによって力を失い朽ち果てる寸前、神獣は最後の力を使い自身を信じる者たちへ願いを託した。「いつかこの星を滅ぼす輩が現れる。その日までに我を復活させるのだ。」と。神獣は姿を消したが、民はその言葉を語り継ぎ、ある日復活の為行動を起こし始めた。


おはこんばんちは諸君!惑星調査団団員のベーリッヒだ!今相棒のビンズと共に惑星ジーラムに来ている。なんでもここ数日この惑星の周辺で、最近宇宙海賊や他惑星の輸送船団が行方不明になっている事件が相次いでいるらしい。生態系なども未だ不明な部分が多い為調査を命じられた。澄んだ空気、見渡す限りの大自然、そして凶暴生物が1匹もいない!喜ぶ私、暇そうにその辺の木の実を頬張るビンズ。ビンズ、前々から君に言おうと思ってたんだが、調査が終わってない食い物をポイポイと口の中に入れるんじゃない。せめて機械でスキャンしてから食え。私はビンズから紫色の果物をもらい渋々頬張る。うまぁ。なんかこう、ハリが違うというか、フルーツサンドにして食べたいなぁ。いや、そんな事より調査だ調査!惑星ジーラムは確かに不明な部分は多いが全てが解明されてない訳じゃない。確か第4期ナチュラル系惑星大全の50ページには神獣を信仰する先住民族、すなわちジーラム星人がいると記載があったはずだ。まずは彼らを探して話を聞いてみようじゃないか。話が通じる相手だといいけど。私がデータを確認しているとビンズがさっと緑の果物を私の口に入れてくる。うまぁ、なんかこう酸味のキレが違うよね。ていうか、さっきからくれる食べ物、スキャンしてるよね?ね?


我々は木の身を食べつつ森を探索する。辺りを見回しても相変わらず異常は見当たらない。もし宇宙船が墜落していたら救難信号が出ててもおかしくないんだが、それらしい反応も出てない。するとビンズが立ち止まり光線銃を取り出す。私の持っているスキャナーにも反応がある。生命体反応だ。数は1、最低サイズは我々より少し小さいくらいか。そして目の前から何かが走ってくる。オレンジ色の肌をした異星人の少女だ。服装はかなり原始的で顔には模様がある。いかにも先住民族っぽい。なるほど、彼女がジーラム星人という訳か。資料が少ないからどんなもんかと思ったが、凶暴な種では無さそうだ。その証拠に彼女は我々に何か問いかけてくる。お、宇宙共通語で会話出来るのか。

おじさんたち、ここからすぐに離れて!

おっと、初対面の女の子にこんな事言われたの初めてなんだが。いや危険な惑星ならわかるが、誰が見ても危険度が低い場所だ。ビンズも彼女を無視して前に進もうとするが彼女は引き止める。やけに必死だなぁ。するとビンズは立ち止まり、ポケットからビスケットを取り出して食べると、彼女にもそれをあげた。彼女は興味津々でビスケットを見つめてる隙に我々は前に進む。ごめんねお嬢ちゃん、進まないといけない理由が出来てしまったんだ。そう、我々が前に進むと僅かだが救難信号を検知した。子供がひとりでうろつける範囲など限られている。恐らくこの先に彼女たちの集落がある。彼らなら何か知っているはずだ。我々が進み彼女が急いでこちらに駆け寄ってくると同時にそれはあった。大勢のジーラム星人が住む集落だ。地面にだけでなく大木の上にも家がある。そして集落の中央には青銅で出来た柱のようなものもある。我々が集落に入ろうとした途端ジーラム星人は槍や剣を持ってこちらに集まってくる。私は大声でジーラム星人を落ち着かせる。

誤解しないで!テコヘン惑星調査団の者です!責任者はいますか!?

すると奥から腰のやたら曲がった老人が現れる。明らかに長のビジュアルだな。長は仲間に武器を下ろすように指示してニッコリと微笑む。

テコヘンのお方、失礼しました。あなた方なら大歓迎です!お話はわしの家でゆっくりと、、、。


我々は歓迎されたのか集落で1番大きい建物、すなわち長の家に招かれた。集落の外観とは裏腹に内観はとてもしっかりとした作りだ。良い木の香りがする。長は我々に座る為の布を召使いたちに用意させ、ついでに食べ物も持ってきてくれた。子豚の丸焼きに雑穀米、果物のジュースなんかだ。運ばれるやいなや、ビンズはそれをムシャムシャと頬張り始める。私が相棒の粗相を詫びると、長は笑っていた。

なんとお懐かしい。わしが若い頃もあなた方のようなテコヘン人がこの星へ調査に来まして、同時に我々も色んな事を学ばせて貰ったのです。我々は特に言葉を学びました。宇宙共通語は、とても使いやすい。

そうだったのか。きっとナチュラル系惑星大全の関係者だったんだろう。しかし驚いたな、宇宙共通語が簡単とは言えたった数十年でここまで根付くとは。意外と真面目な種族なのかも。私が機械で救難信号を確認すると、やはり反応が近くなっている。私は長にこの辺りに宇宙船が落下しなかったか聞くと、長をはじめ召使いたちも首を傾げる。あれ、何も知らないのか。隣の相棒はそんな事はどうでもいいと言わんばかりに丸焼き食べてるし。仕方ない、今日はここに泊まらせてもらおう。明日次のエリアを確認すればいい。私は丸焼きを頬張り思わず「うまぁ。」と口に出してしまった。なんでこの惑星の食べ物は皆んな美味いんだ?



ん、なんだ?朝か?飯をひたすら食べていたのは覚えてる。あれ、世界が逆さまに見えるぞ。私が完全に目を覚ますと、我々は集落の中央にある青銅の柱の前に逆さ吊りにされていた。しまった、薬を盛られていたか!装備も奪われている!ビンズも隣で苦い顔をして逆さ吊りにされている。お前、その顔と腹は食い過ぎの顔だろうが!よく見れば我々だけじゃない。明らかにジーラム星人とは違う種の異星人が何人も柱の周りに吊られている。しかも我々を囲むようにジーラム星人は謎の儀式をしている。私は全力で長を呼んだ。すると長が柱の前に立ち語り始める。

きみたちテコヘン人は確かに我々に多くのものを与えてくれた、とても感謝している。しかし、我々と星の存在が知られて宇宙海賊や異惑星の住人が度々押しかけるようになった。テコヘン人とは違い、中には我々を奴隷にしようと画策したり、同胞を殺して略奪をする者もいた。その度に人が減り、集落が減り、気がつけば誰にも見つからないであろう森にまで追いやられた、我々の星なのにだ。そこで我々は古代より語り継がれてきた伝承を実行する事にした。かつて悪の戦士によって滅ぼされた偉大なる神獣アラハバキ様を蘇らせると!

話が長い。

ビンズ!我慢しなさい!

アラハバキ様はこの星の守り神。復活すれば我らを脅かす者どもを一掃してくれるだろうと。そう考え我々は青銅の柱を作り、毎日祈りを捧げた。アラハバキ様は信仰や精神のエネルギーを糧に生きる存在。だが、我々の祈りでは時間がかかり復活には至らなかった。そんなある日、アラハバキ様の声が我々に響き知恵を授けてくれたのだ。我々は惑星にくる宇宙海賊をその知恵で倒し武器を奪い、やがて惑星の周辺を飛び回る宇宙船をも撃ち落とせるようになった。

なんて事を!宇宙海賊はまだしも無関係の宇宙船まで!いや待て、そのアラハバキとやらが知識を授けた訳ってまさか、、、!

ベーリッヒ君といったな。君は勘がいい。我々の目的は侵入者の排除だけではない。侵入者をアラハバキ様の生け贄とする為だ。

するとビンズはカンカンに怒る。

ふざけんなよジジイ!アラハバキ様とやらのおかげで侵略者を退治出来る様になっただけで十分だろうが!オェ、、、。

食い過ぎの後に逆さ吊りは厳しいだろうな。ビンズの言う通りだアラハバキが何者かは知らないが、彼らはもう十分に惑星の自衛が出来ている。なぜそこまで神獣の復活を望む?

ベーリッヒ君、我々は考えたのだ。この星にやってくる連中が消えないのは根本を絶ってないからだと。例え今が安全でも、明日また侵略者どもが来るかもしれん。なら、こちらから仕掛けるまで。

馬鹿な!神獣を使って他の惑星を侵略する気か!限度があるぞ!私は長に止めるよう呼びかけるが彼は聞く耳を持たず民に儀式を続けるよう命令する。そして柱の前に立ち自らアラハバキに呼びかける。

偉大なる神アラハバキ様!!本日の生け贄をお持ちしました!どうか、復活の糧としてお受け取りくださいませ!

すると柱から出る濃い紫色の光がまるで触手のように動き回り、逆さ吊りにされた人々の口に入っていく。私やビンズの口にも入ったが、特別痛みや嫌悪感はなく、ただ単純に体力を奪われるような感覚に襲われる。そして光が消えた後、私は異様な脱力感に襲われた。良かった、気分は酷いもんだが死んではいない。その後周りの人達の拘束が解かれ何処かへ連れてかれようとしていた。長は慣れた口調で民に命令していた。

こやつらはアラハバキ様の養分だ!墓場へ連行しろ!体力が回復次第、またエネルギーを献上させるのだ。

なんて奴らだ、、、、。待てよ、回復次第って事は、ここにいる異星人達は何回もこれを繰り返しているのか?という事は長のいう墓場にはまだ沢山の異星人達が捕らわれているらしいな。私の拘束をジーラム星人達が解こうとした瞬間、横で騒ぎが起こった。なんと拘束を解いた瞬間に、ビンズが素手でジーラム星人を相手に戦っていたのだ。あいつ、体のエネルギーをあんなに吸われても動けるのか。いや、というより体の疲れよりも卑怯な手で捕まった事に怒っているのか。よくわからんが、ビンズが次々とジーラム星人を飛び蹴りで倒していくこの状況には流石の長も驚いていた。

なぜだ!なぜあやつは元気なのだ!!まさかあやつは。未知の生命体なのか!?

あ、いや、人の2倍以上元気なだけだと思います。私はビンズに元気なら助けてくれと頼むとビンズは変な事を言った。

あぁ!?なんでお前そんなにぐったりしてるんだ?光が口に入っただけだろうが!お前そんなに軟弱だからオロロロロ、、、!

うわ、元気だと思ったら吐き出しやがった。そりゃあんだけ食べてそんなに暴れたらな。結局ビンズは吐いた瞬間に取り押さえられる。だが不思議だ、ビンズだけなぜあんなに動けたんだ。エネルギーを吸い取られたのは確かなのに、、、。

知りたいかテコヘンの小僧。

あ、なんだ?逆さ吊りにされ過ぎて幻聴が、、、。いや違う、何かが語りかけてきたんだ!ジーラム星人達もまさかという顔をしている。

そうだ、我は復活に十分な力を得た。その証拠に今、お前達の前に姿を見せよう。我は神獣、アラハバキなり!


青銅で出来た柱はまるで生きた粘土のようにグニャグニャと体を変形させる。それと同時に空には暗雲が立ち込め、雷鳴と地響きがそこかしこから響く。戦車2〜3台分の体に鋭い鱗、手足の爪はまるで歪んだ刃物のよう。2本のツノは天に向かって反り上がり、尻尾は人が作った鈍器のような形状。その姿はまるで鎧を着た竜という表現が似合う。青銅は神々しくも何処か邪悪な気を放っており、神獣と呼んで良いか疑問に思うほどだ。逆さ吊りにされながら見てもそれくらいおぞましいといえる存在なのだ。

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しかしこんな姿でもジーラム星人達は復活を祝うが如く、深々と頭を下げる。長はアラハバキの前に出て頭を下げた。

アラハバキ様!この度はご復活おめでとうございます!!

貴様らの働き、見事であった。褒美として、貴様らが敵の侵略に怯えぬ暮らしを約束しよう、、、。

ありがたやありがたや、、、!

その瞬間、長の腹をアラハバキの爪が切り裂いた長は腹を押さえて倒れ込む。なんだ、何が起こってるんだ?長は民に抱えられながらもアラハバキに問う。

ア、アラハバキ様、、、!なぜ、この様な事を、、、!

安心するがいい、腹は切ったがまだ殺しはせん。ゆっくりと時間をかけて苦しませてくれる。その邪魔は、侵略者どもにはさせん。さぁ、次は誰で遊ぼうか。

おいおいおい!何が星の守り神だ!今のところそんな要素無いじゃないか!アラハバキは近くにいたジーラム星人を睨みつけると、睨まれたジーラム星人は見えない何かに押しつぶされて息耐える。

力の加減を誤った様だ。これ程までに難しかったとは。さて、我輩の力加減がどこまで下手くそなのか、もう少し試させてはくれぬか、我を信仰せし民たちよ。

その瞬間ジーラム星人達は一斉に逃げ始める。え、ちょっと!誰か私の拘束を解いてくれ!アラハバキは超能力が使えるのか、落雷や衝撃波の様なもので人々を蹂躙していく。何という奴だ!ジーラム星人に同情する訳ではないが、自分を信じてくれた者たちへ出来る所業じゃない!するとビンズが隣で落ちていた弓と矢を使って応戦していた。矢は当たるもののアラハバキにはまるで効いていない。するとアラハバキが私の拘束を解いて顔を近づいてくる。青銅で出来た化け物だと思っていたが、生暖かい息をする奴だ、何と気味が悪い。

貴様の考えは読めるぞベーリッヒ。

なんだ!なぜ私の名前を!私は何も言ってないぞ!

いや、貴様の恐怖の念を通じて伝わってくるのだ。我の糧は主に人々の恐怖や欲望だからな。だが、そこにいるビンズという奴には恐怖というものが他者よりはなかった。だから我にエネルギーをほとんど吸収されなかったのだ。おまけに思考も読みづらい。ビンズとやらの情報は貴様から超能力で得た知識だ。

なんか納得。しかし超能力まで使えるとはな。

しかしこの星の連中は愚かだ。何千年も前の嘘を語り継いで来たのだから。

嘘だと?そうか、やっぱり悪の戦士に倒された話は逆だったんだな!本当の悪はお前だったんだろ!

ほぉ、ちっこい割には頭が良いなベーリッヒよ。

悪の戦士に正義の守り神が倒されているのに、ジーラム星人はここまで生き延びているからな。守り神が消えて無防備なのにだ。

流石だ。そう、我が輩がジーラム星の戦士たちに倒されたのは事実だ。我がかつてジーラム星人に繁栄の為の力と恵を与えると同時に、奴らの欲望や恐怖を吸い取り力を蓄えジーラム星人を滅ぼそうとしていた事を偶然にも知ったのだ。やがて戦いとなり結果は相討ち。ジーラム星人に授けた力が予想以上に強大だったのだ。我とした事が糧を得る為焦り過ぎた。そして朽ちる前に嘘の伝承を流すよう画策したのだ。そうすれば邪魔者のいない世で復活を果たせるからな。

昔からお前はそうなのか?神としてジーラム星人と共に平和な世の中で暮らそうとは考えなかったのか!

考えが浅いなベーリッヒの小僧。我は人のマイナスエネルギーが生み出した産物だ。人の欲や恐怖が濃いほど我は力を増す。我は何よりも大きな恐怖としてこの世界に君臨したいのだ。昔はジーラム星人に多くの力を授けてしまった為に敗北した。しかし今回は与えたのは僅かな知恵のみだ。随分待たされたが、今の我が輩を超えるものはこの惑星には絶対に存在しない!次はジーラム星人をとことん追い詰めて、最後の一滴までマイナスエネルギーを得るのだ。助かりたい、何かにすがりたい、幸せになりたい、そんな感情が我を満たす!聞いているのかビンズ!ぬっ!

ビンズはいつの間にか光線銃を身につけており銃口をアラハバキに向け発砲していた。あいつ、いつ奪い返したんだ?するとビンズの隣には我々がこの惑星で最初に会った少女がいた。ビンズがアラハバキの気をひいている間に、少女は私にスキャナーや光線銃などの道具を返してくれた。そうか、この子が持ってきてくれたのか。

これおじさん達のでしょう?

ありがとう!さ、ここは危険だ!君は逃げるんだ!私とビンズでアラハバキを倒す!

私は彼女を逃す。その時アラハバキは巨体で走り回りビンズを捕まえようとするが、ビンズは体操選手顔負けの身のこなしでそれを回避して的確に光線銃を当てていく。

なんという事だ、これ程までに強い戦士がいるとは、、、!

神様にしては弱すぎるんじゃない?さっきから俺の攻撃全部当たってるじゃねえか!

ぬぬぬ、なんという事だ!我が輩がここまで苦戦するとは、、、!

私もビンズと共に光線銃で応戦するが、先程の勢いが消えアラハバキがうずくまる。

ひぃ、ひぃ!なんと強いんだ!この数千年で時代がここまで進歩していたとは!助けてくれぇ!

ビンズがヘラヘラしながらもう1発撃つと、光線がアラハバキに当たる瞬間に静止し、何倍も強大な光線となって我々の方に戻って足下で爆発する。我々は吹き飛ばされ地面を転がる。なんだ今のは、たった1発の光線がミサイルみたいになったぞ。

演技が大根ですまないなテコヘンの諸君。例え現代兵器であろうと我を倒す事は不可能!そんな玩具など効かんのだ!我は恐怖、我は欲望、永遠に消えることなき力そのもの!

ビンズが諦めずアラハバキのツノを撃つとそれはへし折れ地面に落ちる。アラハバキはわざとらしく悶え苦しむが、そのツノは足から吸収され体の表面をグニャグニャと移動して頭に這い上がり、やがてツノが再生された。アラハバキは我々をあざ笑い、明らかに余裕そうだ。ビンズは抵抗を続けるがアラハバキは超能力を使いビンズを宙に浮かせる。アラハバキが拳を少しずつ握るとビンズがまるで何かに締め付けられてるようになる。

いくら恐怖が無くても、絶対的力の前でいつかはほころびが出る!さぁ、相棒に助けを求めよ!我に恐怖せよ!お前の生きたいという、苦しみから逃れたいという欲や恐怖が我の糧となるのだ!

ビンズは締め付けられ、冷や汗をかきながらもアラハバキに笑顔を見せる。

俺は負けてねぇ。

貴様、まだ強がるかぁ!

強がりぃ?俺は笑顔を見せてるし、余裕を持ってお前と話してる。お前は俺を宙に浮かせているだけだ!さぁ殺して見ろよ!

おのれ、まだベラベラと、、、!

やめろビンズ、それ以上挑発したら!

どうした、あと一握りすりゃあお前の勝ちだ!出来ないんだろ、俺が死んでマイナスエネルギーを少しでも吸えなくなったら、お前は力を得られない。世界征服前に意地でもこの星にいる奴らから搾り取りたいらしいなぁ。エネルギーが足りないとそんなに怖いか?そうだろうなぁ、ちょっとでも足りなかったらどこぞの戦士さんにまたぶっ倒されちゃうからなぁ!!

アラハバキは激怒しビンズを超能力で地面に叩きつけ踏み潰そうとする。

貴様からもらうものなど何もないわぁ!!

やめて!!!

今の声はどこから?向こうの茂み、私が逃した少女がアラハバキを止めようとしたんだ。私が驚いたのは彼女の勇気だけではない、少女の言葉を受けてアラハバキは頭を抱えたのだ。

ぐわぁ!!なんだ、この感覚、は!!

今のうちだ。私は少女と共にビンズを抱えてその場から逃げる。良かった、見た感じビンズは軽傷だ。その途中でアラハバキの声が遠くから響いてきた。

無駄なあがきだぁ!我は、何人たりともこの星から出さぬ!貴様らは我の糧なのだぁ!!


我々は無事アラハバキから逃れる事ができた。私は歩きながら少女と話をする。途中ビンズが果実を拾い頬張っていた。吐くと腹が減る気持ち、わからんでもない。

ありがとう、君のおかげで助かったよ。君、名前は。

、、、エイナ。

そうか、エイナちゃんか。ところで、我々迷子になってたりしてない?

大丈夫、案内したいところがあるの。


我々がエイナによって連れられて来た場所はジーラム星人が「墓場」と呼んでいた場所。そう、彼らが墜落させた宇宙船の残骸が集まってる場所だ。なるほど、救難信号が1箇所しか出ていなかった理由がこれで解けた。ジーラム星人がここに隠してた訳か。我々が残骸のひとつである巨大な宇宙船の中に入ると、そこには大勢の人々が囚われていた。ぐったりしている、服装的に宇宙海賊らしき奴もいる。先程アラハバキにエネルギーを吸われて辛くも逃げ延びて来た人も何人かいるようだった。するとエイナは我々に頼み込んだ。

お願い!今残っている人たちを連れてこの惑星から逃げて!ひとりでも多く助けるの!

ダメだ!アラハバキは野放しに出来ない!それに君はどうするんだ!

私はここに残る、、、!長たちはひどい事したかもしれないけど、私の家族だから、、、!

するとビンズはここまで来る途中で拾ったであろう果実をエイナに手渡して頭を撫でる。

俺たちの仕事は惑星を調査すること。勇気あるやつを放って逃げる事は、業務内容に含まれてない。そうだろ相棒。

普段働かないやつが何言ってんだか。ビンズは私に果実を投げ渡し、私はそれを頬張る。

その通りだ。調査報告に「逃げた」なんて書きはしないさ。


私とビンズは宇宙船内の格納庫を探した。宇宙海賊の宇宙船なら残ってる筈なんだ、戦闘機のひとつやふたつ!我々が格納庫を見つけてこじ開けるとそれはあった。やったぞ!幸いにも一機無事なやつがあった!私は戦闘機のコクピットを開こうとしたが鍵がかかっている。するとビンズはその辺に落ちていた金属板を手に持ちそれを鍵穴にグリグリと押し付けると鍵が開いた。公務員が変なピッキングで戦闘機をこじ開けるんじゃあない!私はビンズに動力などを確認させる。

どうだ!動きそうか!

コクピットが臭え。明らかに旧式の装備だし、うわ戦闘機スペックがたった800?嫌だ、スペックは2000以上じゃないと乗りたくねぇ。

我慢しろ!スペック数値が2000以上ある戦闘機の方が珍しいわ!ほら、芳香剤見つけて来てやったぞ!

安い!香りが安い!

その光景を見ていたエイナは笑っていた。あ、いや、笑わせようとしてる訳ではないんだが。私はエネルギー補給のためついでに見つけた缶詰も頬張りながらビンズに作戦を説明する。

いいか、やつは視界に入ってる範囲にしか超能力での攻撃が出来ないはずだ!ビンズの不意打ちに驚いていたのは超能力を使ってのガードが出来なかったからだ。私は地上から、ビンズは空からお互いが視界に入らないよう移動して攻撃、、、!

ビンズは私の作戦を完全に聞かず発進してしまった。私は通信機でビンズにキレる。

人の話は最後まで聞かんかい青のり野郎が!気をつけろ!マイナスエネルギーを吸ったアラハバキは巨大化してるかもしれん!

私は武器を携え格納庫にあった1人乗り用のホバーバイクに乗ろうとするとエイナが寄ってくる。

おじさん、、、!

君は皆んなとここにいるんだ!アラハバキは別方向に行ったジーラム星人を先に狙う筈だからここの方が安全だ!

あの、おじさんは怖くないの?

、、、。めちゃめちゃ怖いさ。だけど、毎日こんな感じだから。エイナ、君の勇気は無駄にしない!ベーリッヒ、出動!

私は恐怖で一杯になりつつもエイナを不安にさせまいと張り切って出動する。


私はホバーバイクに乗りながらアラハバキの行方を追った。奴はきっと他のジーラム星人を怖がらせてエネルギーを集めている筈だ。私がスキャナーで付近を調べると高エネルギー反応をキャッチした。するとビンズが乗っている戦闘機が既にアラハバキと戦っているようだった。いや、まて、これは、、、。私が少し上を向くと、そこには山のように大きくなったアラハバキがいた。こんな短時間で巨大化していたとは。アラハバキが凄いのか、それとも追い詰められているジーラム星人達の恐怖が凄まじいのか。ビンズは戦闘機のバルカン砲でアラハバキを攻撃するがびくともしなかった。私もアラハバキの足下をマシンガンやバズーカで攻撃するがそれでも怯まない。アラハバキは私とビンズをあざ笑う。

ハハハハ!赤子よりもか弱いわ!貴様らがどのような作戦で挑もうと、強大な武器を持とうと同じことだ!

くそ!さっきくらいの大きさだったら対抗できたのに!するとアラハバキはビンズに撃たれているにもかかわらず私の方を見た。

ほぉ、我の超能力が視界に入っている者にしか放てない事を知っておったようだな。だが、こういう攻撃が出来ることを忘れたか?

アラハバキが手から煙の様なものを出すと、私の真上には今よりもさらに黒雲に覆われ、まるで矢の様に鋭い落雷が何回も無差別に降り注ぐ。

貴様はそれで遊んでいるがいい!!我はハエの相手をする。

あおぎゃああああ!!計算が狂いまくりだぁ!!私は全速力で落雷を避けながら走るが、1発の落雷が偶然近くの地面に落ち、私は避けようとした拍子に転倒する。私を襲う落雷は消えたが、足がうまく動かない。まずい、このままじゃビンズが。すると私の周りにこの場まで逃げていたであろうジーラム星人達が大勢いた。どうやらここに隠れていた様だ。ジーラム星人の1人が私に弱音を吐いた。

長は重症だ。我々はアラハバキに騙され、この惑星が滅ぶのを待つしかないのだろうか。

そんな事はない!諦めるな!私は足を怪我したが、バズーカなら持てる!ほら!戦える人は協力してくれ!武器を持って戦うんだ!使い方はアラハバキから学んだんだろう?ならあいつを見返してやることができる訳だ!ほら!

私がナイフや銃を渡しても彼らは受け取ろうとしない。

わかった。無理強いはしない!だがせめて思い出してくれ!皆んなが本当に望んでいた事を!!そうすれば、アラハバキがもっとデカくなるなんて事はなくなる!お願いだ、エイナとビンズの勇気を無駄にしないでやってくれ。

私は武器を携え足を引きずりながらも走り、アラハバキの足に攻撃する。アラハバキはそれを見下ろしてヘラヘラと笑い始める。

貴様にはさっきの小娘やビンズの小僧ほどの勇気も力もない!むしろ怯えが強かろうに、なぜ我に抗う?

私はバズーカの弾を切らしてマシンガンで応戦する。

ああ怖いさ!我々は軍人も戦士でもない!この惑星を救う義理もない!むしろ慰謝料を貰いたいくらいだ!だけど覚えとけ!我々惑星調査団がお前の様な強敵を前にしても諦めない理由がある!

マシンガンの弾が切れ、私は光線銃で応戦する。アラハバキは私を超能力で吹き飛ばし、私はついに倒れ込む。もう、立てないか。ああ、体が生暖かい、血がたくさん出てるのか。いつぶりだろうなぁ、こんなに無茶をしたのは。アラハバキの顔にビンズの放ったミサイルが当たるが、まるで気づいていないかの様にあしらいアラハバキは私に問う。

では聞こう。お前が諦めない理由はなんだ?

無意識だった。私は経験した事ないくらいスッと立ち上がりアラハバキに銃口を向け言葉に出していた。

未来へ繋ぐためだ。

私は光線銃の引き金を引き、アラハバキの顔に光線を当てるとアラハバキは急に怯み出した。

ぐわぁ!なんだ、今の攻撃は、、、!

すると気を逸らしていたためかビンズの攻撃もアラハバキに当たる様になっていた。

馬鹿な!我が体は鉄よりも硬い!なのになぜ、、、!

すると茂みからエイナが駆けつけ、エイナは大声でジーラム星人に呼びかける。

皆んな!私たちにできる事をしよう!!

私はエイナに逃げる様言ったが、私はその場で尻餅をついてしまった。くそ、もう体をうまく動かせない、、、!するとエイナは私の手を握りながら礼を言った。

ありがとう、戦ってくれて。

するとビンズが無線で私に呼びかけてきた。

攻撃がさっきより効く様になったぞ!お前何かしたのか?

私は体がプルプル震えてもしっかりとした声で答えた。

私なりの、勇気を見せただけさ、、、。

するとエイナをはじめジーラム星人の何人かが静かに祈り始める。そうだ、意外と簡単な事だったんだ。ジーラム星人が1番望んでいた事。侵略でも、憎むことでもない。それは「平和な明日」だ。それだけで良かったんだ。ジーラム星人が1人、また1人と祈ると、アラハバキの山のような体が少しずつ縮んでいくのがわかる。

な、なんだ、、、!力が、抜けてゆく!まさか、恐怖や欲がジーラム星人からなくなったというのか!同じだ、昔我と戦った戦士も同じ力を、、、!

私は力を振り絞りアラハバキに言い放つ。

欲も恐怖も、完全に消える物じゃない!だけどここにいる皆んなは、平和と明日を求めて祈ってるんだ!アラハバキ、お前が望む世界と力は、この惑星にはもうない!

ふざけるなぁ!我を恐れよ!命乞いをしろ!我の糧として生きろぉ!

アラハバキの願いは叶わず、彼の体は少しずつ小さくなりひび割れていく。欲や恐怖よりも、願いが勝った瞬間だ。だが、アラハバキはまた余裕そうに笑い始める。

ふふふふ!フハハハハハ!この惑星にまだ、強き欲望を持った輩が近くにいるぞ!!そいつのエネルギーを吸い取り、また強靭な体を、、、!

アラハバキは何かを見つけその場所に走ろうとしたがすぐに止まった。そう、まさしく欲望の権化と化したビンズが戦闘機でアラハバキに突撃していたのである。アラハバキはそれに大層驚く。

お、お前は、、、!?

よぉ、長い話は終わった様だなぁ。ちょっとやってみたかった事があってさぁ、付き合ってくれよ。

ビンズは戦闘機の座席を射出させ脱出し、戦闘機はそのままアラハバキに突っ込ませた。

それ、やるよ。

おのれ下等生物がぁあああああ!!!

戦闘機は無人のままアラハバキに激突し、そのまままるで花火の様に爆散したのであった。ビンズはパラシュートでゆらゆら揺れながら我々に手を振る。

宇宙海賊に修理代請求されても、俺絶対払わねぇからなぁ!!

なんの宣言だよ。まぁ、良くやったぜ、相棒。


その後各惑星から救助隊やら警察やらが来て色々大騒ぎだった。そりゃそうだ、宇宙海賊が大勢いるし、ジーラム星人達も悪い事をしたからな。長や種の重役達は軒並み逮捕された。長は手錠付きで医療班に搬送されていたが、運ばれながら我々にずっと謝っていた。きっと彼らなら罪を償ってまた故郷の土を踏めるさ。情状酌量の余地は大いにある。我々も彼らの罪を軽くできる様出来るだけの事はしよう。ビンズは皆んなが処理やら何やらで忙しそうなのに、1人大瓶に果実と砂糖、アルコールを入れて果実酒を作っていた。3ヶ月後の楽しみを作っているのか、後日私もいただこう。我々は自分達の宇宙船に乗り込もうとすると、エイナが見送りに来ていた。

おじさん達、ありがとう。ごめんね、大したお礼出来なくて。

するとビンズは1人宇宙船の中に入っていく。

ベーリッヒ、ガキの相手は任せた。

なんだあいつは。まぁいいや。彼女には伝えないといけない事があるしな。私は彼女に目線を合わせて話す。

我々は多くの星々を旅して、世界の不条理を多くみてきた。今回の一件もそうだし、私はつい最近大切な友を失い、仲間の死を聞くのは良くあることだ。だがそんな状況でも私の側には相棒がいるし、我々の調査結果を待っている人々が多くいる。だから頑張れる。君にはこの惑星と惑星に住む仲間がいる。彼らの未来の為にも、今回起こった出来事を伝え続けて欲しい。アラハバキを復活させない為にも。エイナ、次は君の番だ。

私は彼女にそう言い残して宇宙船に乗り込み発進する。宇宙船の中から見える彼女の声は聞こえなかったが、何度も「ありがとう」と言っていた事はすぐにわかった。彼女が平和な未来を築いてくれる事を信じて、我々はまた新天地へと赴くのであった。



かつて、とある星で邪悪なる神獣が民を苦しめていた。民が絶望した時、2人の英雄が神獣に立ち向かった。彼らの勇気はその星の伝説となり、いつまでも語り継がれるのであった。

宇宙人ビンズと古代神獣アラハバキ


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イラスト:ラムジー様(Twitter:@ramuzizizi)

小説:ジコマンキング

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いかがでしたか?この度はラムジー様のイラスト「古代神獣アラハバキ」を題材に小説を書かせていただきました!ラムジー様の描いた怪獣、本当にかっこいいので爆散させてしまい申し訳ないくらいです💦この度はコラボいただきありがとうございました!

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( https://twitter.com/ramuzizizi?s=21&t=aFpeveSs0DBmB6-gFJPnlA )


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