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  読書感想文たち

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ぼくが書いた読書感想文たちをまとめています。ちなみに「がんばって、大人になって」という作品はありがたいことにポプラ社様主催の「かがみの孤城読書感想文コンテスト」にて賞をいただいて… もっと読む
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記事一覧

水底フェスタ/辻村深月〜読書感想文〜

水底フェスタ/辻村深月〜読書感想文〜

最初に明言しておくと、
水底フェスタは間違いなく恋の物語である。



どうしようもなく魅力的な女性に出会ったら、人はどうなるだろうか。

容姿が飛び抜けていいとか、スタイルが抜群だとか、そんな話じゃなくて

どれだけ後悔してもいいから、
ひどいことになっても、
誰かに押さえ込まれて
捕まっても構わないから、
今この瞬間彼女に触れたい。

そんな感情に心を支配されるような、謎めいた魅力のある女性

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カラスの親指/道尾秀介〜読書感想文〜

カラスの親指/道尾秀介〜読書感想文〜

詐欺を生業にして生きる、2人の中年男性がいた。

ひょんなことから彼らの生活に、色白で可憐な少女が加わることとなる。

さらにはその少女の姉、姉の恋人、変わった柄をした仔猫が加わり、いつのまにか5人と1匹に。

そんなみんなで楽しく平和な詐欺師ライフを送って生活、、なんてできるわけもなく、彼らの生活を脅かす"ある存在"が現れた。

見た目も特技もすべてバラバラ。
しかし出自を辿れば粒ぞろいのこのメ

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傲慢と善良/辻村深月〜読書感想文〜

傲慢と善良/辻村深月〜読書感想文〜

30歳をすぎた男女が、結婚相手が見つからずに焦っている。

それだけ言ってしまえば
「なんだそんなこと。よくある話だ」
「30歳なんてまだまだ若いよ」
という意見が聞こえてきそうだ。

では、その男女が
婚活で出会っている、いわば結婚前提のはずの2人組だとしたら?
恋愛に疲れ切っているのに、どうしても今の相手との結婚には踏み切れないでいるとしたら?
さらにはその相手が、忽然と姿を消したとしたら?

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ペッパーズ・ゴースト/伊坂幸太郎〜読書感想文〜

ペッパーズ・ゴースト/伊坂幸太郎〜読書感想文〜

悲観と楽観、教師と生徒、能力と暴力、猫と野球…

父の言葉、母の想い、自分の理想、だれかの期待、司会の煽り…

先行上映された猫を2人組の殺し屋で創作小説し、国語教師がニーチェのカンフーをヘディング…

私は今、なにを読んでいる??

とにかく、私は、他人の未来が見えるんです。〜檀千郷〜中学校国語教師の檀千郷。
彼は、ある条件下で他人の明日が少しだけ見える特殊能力を持っている。

父から受け継いだ

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ソロモンの犬/道尾秀介-読書感想文-

ソロモンの犬/道尾秀介-読書感想文-

天気予報にもなかった突然の土砂降り。
雨宿りのために、秋内はカフェに立ち寄る。

マスターにコーヒーを注文し、旧型のテレビを眺めた。

ニュースが流れている。
ちらつく画面でも、口の動きだけで何を言っているのかわかる。
秋内には、わかる。

するとそこに、大学の同級生である京也、ひろ子、智佳が偶然にも来店した。

4人でテーブルを囲むと、京也が囁く。

なにも言葉を返さないひろ子、智佳に代わって、

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マリアビートル/伊坂幸太郎〜読書感想文〜

マリアビートル/伊坂幸太郎〜読書感想文〜

東京駅から北上する東北新幹線。
車内では〈殺し屋〉たちによる静かな死闘が繰り広げられていた。

幼い息子の仇討ちを企てる、元殺し屋「木村」。
優等生の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。
闇社会の大物から密命を受けた、腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。
とにかく運の悪い、気弱な殺し屋「天道虫」。

狙う者と狙われる者が交差する車内。
新幹線という限られた空間で、〈殺し屋〉たちの運命が動きだ

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氷菓/米澤穂信〜読書感想文〜

氷菓/米澤穂信〜読書感想文〜

岐阜県のとある進学校・神山高校。
珍奇な部活が多く、毎年の文化祭に全力を入れている、曰く"普通の学校"。

特別棟4階の端にあるのは古典部部室。

4人の高校1年生が、今日もここを舞台に
薔薇色か、あるいは灰色の高校生活を謳歌する。

やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に。上記をモットーにかかげるのは
主人公・折木奉太郎。
同校の卒業生でもある姉・折木供恵の勧めで、

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ただいま神様当番/青山美智子〜読書感想文〜

ただいま神様当番/青山美智子〜読書感想文〜

「わし?わし、神様」
「お願いごと、きいて」

目の前に謎の老人が現れ、突然そう言われたら。
しかもじぶんの腕にデカデカと神様当番なんて文字が書かれていて、お願いごとを聞かないとそれが消えないと言われたら。

私ならたぶん、「なんで自分ばっかり!」なんて言って、すごく落ちこむ。

何かが欲しい、誰か。1番目の主人公・水原咲良。
彼氏はおらず、友人は結婚し、合コンに呼ばれてもあくまで数合わせ。
大好

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琥珀の夏/辻村深月 〜読書感想文〜

琥珀の夏/辻村深月 〜読書感想文〜

夏と言われれば、何を思い浮かべますか?
という質問を、過去に何度かされたことがある。

私は去年から、この質問に「琥珀の夏だ」と答えることにした。

夏の終わりを感じたときの、あのなんとも言えない切なさ。

この後の人生、あと何十回も夏を体験するだろうに、まるでもう二度と会えないものとの別れ告げるかのような寂しさ。

その寂しさを感じる前に、
夏がまだまだ終わらないうちに、
琥珀の夏を読みたいのだ

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読書感想文 "medium 霊媒探偵 城塚翡翠"

読書感想文 "medium 霊媒探偵 城塚翡翠"

ああ、ぼくは今いい本を読んだんだな。
感想を一文で書くならこれだけで十分だ。

本を読み終わり、閉じ、裏表紙のあらすじを改めて読む。話の内容を全て知ってから読むあらすじは、また一味違う。

それからもう一度表紙を見直す。
本を閉じ、あらすじを読み直し、表紙を眺める。
この一連の動きは、読書に満足したぼくがよくとる行動だ。

本格ミステリが好きなぼくにとって、タイトルの時点で「霊媒」と入っているとど

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その日、朱音は空を飛んだ#読書感想文その3

その日、朱音は空を飛んだ#読書感想文その3

○まだまだ!!読書感想文、第3弾をお届けしたいと思います、暦です!

毎回毎回、読書感想文にスキやコメントなど、本当にありがとうございます。まだまだがんばります!

第3弾でご紹介するのは、、

「武田綾乃著・その日、朱音は空を飛んだ」

青春小説界のニューエース、武田綾乃さんの作品です!

え、武田綾乃さんといえば、「響け!ユーフォニアム!」じゃないの?と思う方も多いと思いますが、ぼくはまずこち

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天使の囀り#読書感想文その2

天使の囀り#読書感想文その2

第2弾!!というわけで、読書感想文第2弾です!
前回の読書感想文、読んでいただいて本当にありがとうございます!

いやぁ、同じような記事を書いてる方からのスキってすごい励みになるものですね。

がんばらなきゃ!というよりか、もっと発信したい!という思いが湧いてきました。
ぼくも誰かをそんな思いにできるよう、がんばって読み書きしていきたいと思います!

あ、前回の読書感想文、念のためこちらに貼ってお

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冷たい校舎の時は止まる#読書感想文その1

冷たい校舎の時は止まる#読書感想文その1

○さあ!!!さっそく読書感想文、もとい紹介文を書いていこうと思います!

最初にご紹介するのは、

「辻村深月著・冷たい校舎の時は止まる」

辻村深月さんといえば名作の宝石箱のような方ですが、まずはデビュー作であるこの作品を紹介しない手はないでしょう!

上下巻に分かれているからといって、
文字数が多いからといって、
恐 れ る こ と は な い ! ! !

辻村深月さんを信じましょう! 

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がんばって、大人になって

がんばって、大人になって

読み終わったとき、この世にこんな物語があったのかと思い、同時にこの世にこんな物語を書ける人がいるのかと思う本。
それがかがみの孤城である。

私は小中高大と学校に通ってきて、いじめられたことや学校に行けなくなった経験はない。
平々凡々、ネットで「普通の人生」と検索したら、私の人生が紹介されていてもおかしくないような道を歩んできた。

ただ学生時代の苦い思い出といえば、スポーツと恋愛だ。私はこの2つ

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