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T2が使う、発達に凸凹がる子どもと関わるときに使う4つのスキル

 発達に凸凹にある子どもと関わるときに、絶対に使わないといけない、4つの方法があります、その原理と実際の使い方を以前に書きました。それ再掲します。重要なスキルです。少し長いですが、読んでください。             
 T2は、絶えずこのスキルを使います。これが使えないとT2はできません。このスキルがなくて、奴隷のようになっているT2や、注意ばかりして嫌われているT2をよく見かけます。

     Ⅰ 人間発達の2つの方法ー脳の学び方
 人間が発達していく方法は、2つあります。それは、脳の構造に2つのタイプがあるからです。つまり、脳の学び方に2つあるということです。
 ①お母さんやお父さんの関わりを受け入れて、言葉や知識や道具の使い方、ルール・常識・マナーなど(今後、発達の栄養と表記)を学んでいくタイプ。このような脳の特性を持った子どもを、平均タイプの子ども(今後、平均タイプと表記)と言います。
 ②お母さんやお父さんの関わりの中で、自分に都合のいいところだけ受け入れて自分独自に発達の栄養を学んでいくタイプ。このような脳の特性を持った子どもを、発達に凸凹のある子ども(今後、凸凹タイプと表記)と言います。 
    Ⅱ 発達の栄養の学び方
 平均タイプと凸凹タイプの発達の栄養の学び方の違いを、『シジミチョウを見つけた親子』の会話で具体的に書きます。
平均タイプの場合
子「アッ、茶色い蝶々がいる。」
母「それはね、シジミチョウというのよ。」
子「変な名前。どうして?」
母「しじみという貝にそっくりだからよ。」
子「触ったら、手に何かついた。」
母「その茶色いのはね、鱗粉と言うのよ。」
子「リ・ン・プ・ン」
母「そう、鱗粉はね。蝶々が飛ぶために必要なの。鳥に捕まったときにも、すべってうまく逃げられるらしいよ。」
子「ママ、何でも知っているね、大好き。」
母「色々聞いてくれるあなたも大好きよ。」
このようにしてシジミチョウの知識が溜まってまっていくのです。

凸凹タイプの場合

子「アッ、茶色い蝶々がいる。」
母「それはね、しじみ…。」
子「シーっ、黙っといて。蝶々が逃げちゃうでしょう。アッ、触ったら手になんかついた。」
母「それはね、りんぷ…。」
子「ほっといてよ。ママ、向こうに行って。何だろうこの茶色いの。気持ち悪う~。」
母「こっちの言うこと何も聞いてくれないあなたなんか、大嫌い。」
子「ああ、大きな声を出すから蝶々が逃げてしまったでしょう。ママなんか大嫌い。」
こうして、茶色い気持ち悪い蝶々としか学ばずシジミチョウの知識を学びそこねてしまうのです。

     Ⅲ 発達の器にたまる栄養
 発達の栄養は、信頼関係のある周りの大人(保護者)とコミュニケーション(これを「やりとり」と呼ぶ)することで発達の器に溜まって行きます。では、凸凹タイプの子どもが、発達の栄養をうまく学べない原因はどこにあるのでしょう。

「やりとり」で発達が伸びていく

 まず、平均タイプの場合を書きます。 乳幼児期は、無条件に世話をしてくれる大人(母親が多い)に信頼関係を持ちます。それは、世話されることによって感謝とともに愛情が愛着の器に溜まるからです。そしてその愛情をもとに、世話されながら原始的な「やりとり」が行われ発達の栄養が発達の器に溜まります。その時、同時に発達の栄養をくれたことに感謝して愛情が愛着の器にたまります。その愛情をもとに、また「やりとり」が行われて発達の栄養が発達の器に溜まって行くのです。このように「やりとり」をすることで、発達の栄養と愛情の良い循環が起こるのです。

 凸凹タイプは、この発達の栄養と愛情の良い循環が発生しにくいのです。つまり、「やりとり」が発生しにくいのです。それは、『シジミチョウの』例で見たように、凸凹タイプが「やりとり」したいことしか「やりとり」しないからです。つまり凸凹タイプは「やりとり」が一歩通行になってしまうのです。
 それは、もはや「やりとり」とは言えません。そのため、発達の栄養が溜まりにくいのです。ということは愛情も溜まりにくく、親子が信頼し合えないとう状態になります。つまり、子どもは親が嫌いで放っておいてと思っているし、親は子どもが好きになれないで世話をする気になれない状態になるのです。これでは、発達の栄養が発達の器に溜まるはずがありません。

     Ⅳ 発達の栄養を与える4つの方法
 教育委員会の発達相談員をしているときに、WISC検査でえた知見や田中昌人さんの発達保障論などを参考にして、凸凹タイプに「やりとり」を発生させて発達の栄養を与える方法を開発してきました。「想像」「共感」「覚えて」「すみません」という4つの方法です。2つの事例で、その具体的な使い方を紹介します。比較して理解しやすいように、平均タイプの場合と凸凹タイプに4つの方法を使わなかった場合と四つの方法を使った場合を書きます。子は子どもの、先は先生の略語です。


二桁わる一桁のわり算がわからない事例
①平均タイプの場合

一斉学習でわり算を学んだ後、練習問題に取り組んでいる。
子「先生、よく分からないのでもう1回教えてもらえますか?」
先「いいですよ。どこが分かりにくいですか?」
(わり算のわからないところについて「やりとり」が行われる。中略)
先「どうですか?もう大丈夫ですか?」
子「分かりました。ありがとうございました。」
これで、愛情もわり算の知識もそれぞれの器に溜まっていきます。

②凸凹タイプに4つの方法を使わない場合
一斉学習でわり算を学んだ後に練習問題に取り組んでいたが、分からないので仕方なく消しゴムで遊び出した。それを先生が見つけた。
先「何しているんですか?今は問題を解くときで、遊ぶときではありません。」
子「うるさいな。今からするとこ。ほっといて。」
先「なんですか、その口の聞き方。消しゴムは没収です。放課後に職員室に取りに来なさい。」
子「何で取るんだ。それは、俺のだぞ。返せ。ドロボウ。」
先「いいえ、返しません。問題をやってください。」
これでは、怒られた事実と先生に対する反感しか残りません。更に、わり算の知識も獲得できていません。

③凸凹タイプに4つの方法を使った場合
一斉学習でわり算を学んだ後に練習問題に取り組んでいたが、分からないので仕方なく消しゴムで遊び出した。それを先生が見つけた。
先「どうしたの?わり算が分からないから消しゴムで遊んでいるのかな?(「想像」)」
子「…、そう、分からん。」
先「分からないのは辛いね。(「共感」)そういうときはね、先生を呼んで『分からないからもう一度教えてください』とお願いするのよ。分かった。覚えてくださいね。(「覚えて」)」
子「分かった。覚えた。」
先「じゃ、今からわり算をもう一度教えてあげるからお願いしてください。(「すみません」)」
子「すみません、もう一度教えてください。」
先「いいわよ。お任せください。」
4つの方法を使うと、凸凹タイプの子どもでも愛情を溜めつつ、分からないときにどうしたらいいかという方法と、わり算の2つの知識を学ぶことができました。

クラスの水槽を割ってしまった事例
①平均的タイプの場合
子どもが、すまなそうな顔をして職員室にやってくる。
子「先生、すみません。教室で遊んでいたら水槽を割ってしまいました。」
先「あなた達にケガはありませんでしたか?」
子「ありません。この後、どうしたらいいですか?」
先「ガラスが危ないので、片付けてしまいましょう。あなたも教室に一緒に来て手伝ってください。今回は大目にみますが、次からは外で遊んで下さいね。」
子「分かりました。次から外で遊ぶようにします。」
愛情を溜めつつ、物を壊したらどう行動したらいいかという知識を獲得することになりました。

②凸凹タイプに4つの方法を使わない場合
たまたま教室に来た先生が、クラスの水槽が割れているのを発見する。
先「誰ですか、水槽を割ったのは。」
子「知りません。僕たちではありません。」
先「あなた達しかいないじゃないですか?」
子「知らないおじさんが来て、割って出て行った。」
先「学校に、知らない人は入れません。あなた達が割ったんでしょう。正直に言いなさい。」
子「うるさいな。僕たちじゃないと言っているでしょう。信じてくれないんですか?僕たちは、嘘つきですか?」
先「分かりました。放課後、保護者の方に来てもってこのことを聞いてもらいます。それから、どうするか、みんなで話し合いましょう。」
これでは、先生対する不信と物を壊しても親が出てきて何とかしてくれるという間違った解決方法を学んだことになります。

③凸凹タイプに4つの方法を使った場合                たまたま教室に来た先生が、クラスの水槽が割れているのを発見する。先「あなた達ここで遊んでいて、この水槽を割ってしまいましたね。(「想像」
子「…わざとではありません。」
先「わざとではないのは信じます。(「共感」)でもね、物を壊してしまった時には先生に報告に来るのが学校のルールです。『すみません。先生、水槽を割ってしまいました。ごめんなさい。』と言いに来るのです。分かった?覚えてくださいね。(「覚えて」)」
子「分かった。覚えた。」
先「じゃ、練習でいいので一度きっちり言ってみてください。(「すみません」
子「すみません。水槽を割ってしまいました。」
先「仕方ありませんね。次からは外で遊んでくださいね。」
これで、凸凹タイプの子どもでも、愛情を溜めつつ物を壊したときにどうしたらいいかを学ぶことができました。

      Ⅴ 「やりとり」を促す4つの方法のまとめ
 発達に凸凹がある子どもに「やりとり」を促す4つの方法をまとめます。

  想像…相手の行動・言葉から、要求や考えていることを想像し、
     それを「~ではないか?」と言語化する。
  共感…相手の感覚や考えに共感して「そうだね、~だね。」と
     言語化する。
  覚えて…発達の栄養を覚えてもらって、それを復唱させる。
  すみません…覚えたことを「すみません」をつけて一度実行してもらう
       (頼ませてから、支援するのが原則)
 
 これらの4つの方法を使うと、凸凹タイプと「やりとり」ができるようになり、愛情や発達の栄養がそれぞれの器にうまく溜まっていきます。

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【参考文献】 


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