見出し画像

異世界で記憶を失い、神罰を受ける!!|『ボーン・アイデンティティー』(2)

画像1


テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「ボーン・アイデンティティー」をベースに新しい物語を妄想します。

※「ボーン・アイデンティティー」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「ボーン・アイデンティティー」は、記憶喪失で、その上なぜかヤバい組織から命を狙われる主人公が、「自分の正体」と「組織の正体」を明らかにすべく奮闘する物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「ボーン・アイデンティティー」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


画像2


画像3


画像4


画像5


三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『ボーン・アイデンティティー』 ~『異世界で記憶を失う』編」です。


画像6


嘉村 異世界!


三葉 ストーリーをご紹介しましょう。舞台は異世界です。「異世界」と言っても様々なタイプがありますが……ここでは典型的な異世界、つまり「中世ヨーロッパ風の街並みに、剣、魔法、ドラゴン」なんて具合の世界をご想像ください。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして、主人公は若い男性です。物語冒頭、彼は意識を失い、道端でぶっ倒れている。

嘉村 ほぉ。

三葉 親切な村人が通りかかり、声をかけてくれたおかげですぐに目を覚ましたものの……嗚呼、何と言うことか!主人公は、すっかり記憶を失っていました。

嘉村 「ボーン・アイデンティティー」同様、主人公が「オレには過去の記憶がない!」と気づくところから始まるわけですね。

三葉 ええ、その通りです。彼は、自分が何者かわからない。自分がなぜ道端で倒れていたのかわからない。さらに……不気味なことに、彼は常人離れした「スキル」を所有していました。

嘉村 「スキル」……「ボーン・アイデンティティー」の主人公(ボーン)は、「なぜか複数の言語を操ることができる」「なぜかメチャクチャに強く、素手の戦いはもちろん、銃や刃物でも誰にも負けない」といった「スキル」を持っていましたが、「案①」の舞台は異世界ですから……。

三葉 はい。「信じられないほど多様な魔法を使いこなすことができる」「魔力量が常人の2万倍で、実質的に魔法を使いたい放題」なんてのがいいですかね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 つまり、主人公は「チート能力」を持っていたのです。


三葉 さらに……村人が目を丸くした「こりゃまた随分いい服を着ているね」「服?」「ああ。素晴らしく柔らかい布に、立派な裁縫。そして美しい色。こんな上等な服は初めてみたよ」。なるほど。言われてみれば、主人公は随分と高そうな服を着ていました。村人が腕を組む「こりゃ、オレのような一般人が着られる代物じゃないよ。ニイサン……一体何者だい?」。

嘉村 ほぉ。

三葉 「何者だい?」か……主人公は思わず苦笑する。オレが訊きたいよ。まったく、オレは一体何者なんだ!

嘉村 ふむふむ。

三葉 自分が誰で、一体何をしていたのか。なぜ記憶がないのか。なぜ常人離れした能力を持ち、そして高価な服を着ているのか。……何もわからない!主人公は不安です。恐怖すら感じる。さらに、彼には家族や友人の記憶もない。よって、孤独感にも苛まされる。

嘉村 確かに、突然記憶を失ったら怖いでしょうねぇ。「突如、広い世界にたった1人放り出された感覚」とでも言うか……。

三葉 主人公は村人に礼を言うと、グッと恐怖を堪え、歩き出しました。彼は服屋を訪れ、自分の着ている服について質問するつもりです「どこで生産されたものだろうか?」「どこで売っているものだろうか?」。どこででも入手できる代物ではないようなので、自分の正体につながるヒントを得られるかもしれません。無論その保証はありませんが……試すしかあるまい。何しろ、いまは他に手がかりがないのだから。

嘉村 なるほど。

三葉 そしてこの後、主人公はあちこち渡り歩くことになります。例えば、服屋で「この柔らかな布は○○村の特産品ですよ」と聞けば、○○村を訪れる。そして○○村で「この裁縫は□□村オリジナルのものですね」とヒントを得れば、□□村へ移動する……という具合ですね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 また、旅の途中、彼は多くの善行を施します。

嘉村 善行……?

三葉 ええ。例えば、山賊に狙われている村を偶然通りかかり……山賊を退治!奴隷としてこき使われる少女を偶然見かけ……救出!

嘉村 あー、なるほど。

三葉 あるいは、こんな出来事もありました。とある村の宿屋に泊まった時のことです。宿屋の娘が愚痴をこぼした「畑が遠いから、野菜を運ぶのが大変なの。何度も往復するのよ」。主人公が言う「ふーん。リアカーでもあると便利だろうにね」「……リアカー?」「リアカーと言うか、大八車と言うか……えーと、この辺りでは別の呼び方をするのかな。ホラ、板の左右に車輪を付けてさ、それを引っ張るわけ。一度にたくさんの荷物を運べて便利だろ?」「えーと……車輪?」。そう、娘は車輪を知りませんでした。

嘉村 ……ん?

三葉 最初は、娘が冗談を言っているのだと思った。しかし、宿屋の主人もおかみさんも、他の客も……誰1人として車輪を知らない様子。娘が言う「その……リアカーだっけ?私、見てみたいわ!」。翌日、村一番の大工がやってきた。主人公が簡単な設計図を描く。大工は首をひねりながらも、見事に作り上げた。主人公は荷台にたくさんの野菜を載せ、「ほらね。車輪があると、少しの力で運べるだろ」。娘が目をキラキラ輝やかせた「素晴らしいわ!嗚呼、本当に素晴らしい!」。宿の主人が叫んだ「あなたは村の救世主だ!」。大工は腕を組んだ「まさに天才の発想だぜ」。

嘉村 なるほど……。この世界には車輪が存在しなかったんですね。

三葉 ええ、その通りです。そして、「案①」の主人公の「スキル」について先ほどご紹介しましたが……。

嘉村 えーと。「多様な魔法を使いこなすことができる」とか「魔力量がほぼ無尽蔵」でしたよね。

三葉 はい。しかし、主人公にはもう1つ「スキル」があったのです。すなわち……彼はこの世界には存在しない物事を、なぜか知っていた!

嘉村 ははぁ。

三葉 例えば、車輪。あるいは「遠近法」などの技術や、「保険」といった概念もそうです。いずれもこの世界には存在せず、誰1人として知らなかった。しかし……主人公は知っていた!なぜかはわからぬが。

嘉村 ふーむ。

三葉 さて、話を進めましょう。主人公は自分の正体を知るべく、人助けをしつつ旅を続けました。ところが……間もなく、異形の者から襲撃を受けるようになる。

嘉村 異形の者……?

三葉 ええ。一見人間のようでありながら、彼らの背には翼が生えている。そして、自由自在に空を飛び回る。

嘉村 ほぉ。

三葉 そんな連中が、数日に1度の頻度で襲いかかってくるのです。連中は、主人公を殺す気満々です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公は問うた「なぜオレを狙うんだ?」「お前ら、一体何者だ?」。しかし……彼らは口を割らない。主人公と言葉を交わす気はさらさらないようです。致し方がない。主人公は応戦する。

嘉村 ふむ。

三葉 彼らは強い。そこらの冒険者では歯が立たぬほどの強さです。とはいえ、主人公には圧倒的な魔法スキルと魔力がある。真っ正面から渡り合って負けることはない。が、連中もバカではないようです。1対1では敵わぬと見るや、束になって襲いかかる。あるいは、主人公を待ち伏せする。寝静まった頃に襲いかかる。無関係の村人を巻き込み、戦いを有利に運ぼうとする。

嘉村 なるほど。知性があるんですね。

三葉 そうなってくると、さすがの主人公も苦戦します。彼は敵に警戒し、できる限り連中に見つからぬようこっそり行動するようになる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて……自分の正体を知るべく、人助けをしつつ、そして敵と交戦しつつあちこち転々として回る主人公ですが……旅の伴侶がいてもいいですよね。

嘉村 ほぉ。

三葉 例えば、こんな具合。……主人公が敵の襲撃を受けた。相手は大群です。これはしんどい。主人公が逃げ出す。偶然通りかかった者が、主人公を匿ってくれる。2人はすぐに意気投合する。とはいえ、主人公は旅の途中です。感謝を述べ、立ち去……ろうとしたのですが、そうは問屋が卸さない。恩人が敵から襲撃を受けたのです。主人公を匿ったことで、共謀者だと認識されてしまったのでしょう。こうなっては仕方がない。いっそのこと、主人公と一緒に旅に出た方が安全でしょう。かくして、主人公には伴侶ができたのでした。

嘉村 「ボーン・アイデンティティー」でいうところのマリーですね。孤独な主人公にとっては、「たった1人の仲間 = 唯一心を許せる存在」。

三葉 そうですね。そして「ボーン・アイデンティティー」では、ボーンとマリーは恋愛関係になります。要するに、マリーは同作のヒロイン。「案①」の旅の伴侶も、まぁヒロインでもいいのですが……。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公と旅の伴侶の関係は、必ずしも「恋愛関係」である必要はないでしょう。「友だち」でもいいはずです。

嘉村 確かに。

三葉 例えば……「ONE PIECE」のウソップのようなキャラなんでいかがでしょうか?


嘉村 ほぉ。

三葉 常人離れした主人公の活躍ばかりでは、物語にメリハリがなくなりそうなので……。

嘉村 ええ。

三葉 「普段は主人公の足を引っ張るものの、時には主人公を助け、あるいは主人公を鼓舞するキャラ」がいるといいかなと思いまして。

嘉村 なるほど。

三葉 とまぁこうして、主人公は旅の伴侶と共に、時に人助けをし、時に敵と戦う。そして旅を続け……次第に自分の正体、敵の正体が明らかになっていきます。

嘉村 いよいよ、クライマックスが近づいてきましたね。

三葉 主人公は自分の過去を知り……強いショックを受けました。

嘉村 ほぉ……。

三葉 嗚呼、何てことた!そんな……まさか!嘘だろ!?嘘だと言ってくれ!

嘉村 よほどひどい過去だったんでしょうねぇ……。

三葉 すなわち……記憶を失う前の主人公は、ゲスで嫌らしい悪人でした。チート能力を使ってやりたい放題。チンピラ連中を集めて愚連隊を作る。勇者や冒険者をからかい、ボコボコにする。善良な人びとにインネンをつけ、金を毟り取る。あちこちの商店にショバ代を請求する。美女がいると聞けば駆けつけ、半ば強引にさらってくる。ハーレムを築く。それでも満足せず、夜這いをかける。

嘉村 うーむ、クソ野郎!

三葉 主人公は頭を抱える「もう過去のことなんて知りたくない!」。

嘉村 でしょうねぇ……。

三葉 しかし、すぐに彼は立ち直ります。腹を固める。どれほど辛くても、これはオレの……オレ自身の過去なんだ!逃げてはいけない。向き合うのだ。オレには、真実を知る義務がある。

嘉村 さすがは主人公。立派ですね。

三葉 かくして、彼は敵の本拠地にやってきました。そして敵を蹴散らし、敵のリーダーらしき女性と対峙した。主人公が訊く「なぜオレを狙うんだ?」。リーダーは驚く「なぜって……ハァ?あんた、わからないの?」「ああ。どうやら、オレは記憶喪失になったらしい。過去のことを何も覚えていないんだ」。リーダーがため息をつく「マジかー」。そして、リーダーの口から事の経緯が語られた。

嘉村 ふむふむ。

三葉 すなわち……主人公は異世界転生者でした。

嘉村 転生者!

三葉 ええ。彼は元々、私たちが生きるこの世界の住人でした。それがある時、異世界に転生したのです。

嘉村 つまり「案①」は、「異世界転生もの」だったんですね。


嘉村 あー……そうか。主人公が、「異世界に存在しない物事の知識」を持っていたのは、このせいか!つまり、あれは元の世界の記憶。

三葉 ええ、その通りです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして、話は転生前に及びました。異世界にやってくる前の主人公は……これが、じつに哀れな男だった!

嘉村 ほぉ……。

三葉 すなわち、顔は醜怪で、スタイルも悪い。短躯にして小太り。さらに、幼い頃から勉強も運動も苦手だった。

嘉村 ……。

三葉 性格は陰気で、人付き合いが苦手。友だちは皆無です。いわゆるイジメこそ受けなかったものの、彼はいつも孤独だった。無論ガールフレンドなぞできるはずもなく、彼は童貞です。

嘉村 ……なるほど。

三葉 とまぁそんな哀れな彼ですが……不幸は重なるものです。高校3年生のある日、彼はトラックにはねられた。

嘉村 あー……。

三葉 そして即死。死の直前、彼は思った「まったく……ロクデモナイ人生だったよ」。

嘉村 うーむ、確かに哀れ。同情してしまいますね。

三葉 そうですね。天界も同情しました。

嘉村 天界……!

三葉 主人公が目を覚ますと、彼の前には女神がいた。女神曰く、「マジでごめんね」。主人公には何の話かわからぬ。女神が続ける「あんた、これまでの自分の人生をどう思う?」「えっ……あの、じつにロクデモナイ人生だと……」「だよね!私もそう思う」。これには主人公もムッとする。女神が笑う「アハハッ。怒るなよー。すまんすまん」。

嘉村 妙にギャルっぽい女神ですね。

三葉 女神が言う「要するにさ、あんたら人間が一生を通じて経験する『幸福』と『不幸』の総量は、均等になるように設計されているのよ」「はぁ……」「『設計されている』っていうか、まぁ、私ら天界がそうなるように調整しているんだけど……ごく稀にさ、とんでもない『不幸』を負って生まれちゃう人間がいるんだなぁ、これが。下界の言葉で言うと……あー、『バグ』?そうそう、バグだ!つまりさ、あんたの人生はバグってわけよ」。

嘉村 「バグ」って……もうちょっと言い方ってものがありそうですが……。

三葉 まぁ、神ですからね。人間の心の機微なんてわからないんですよ。

嘉村 ふーむ。

三葉 「つっ、つまり……僕は、あなたたちのせいでロクデモナイ人生を送ったと……」「イエース!」「じょっ、冗談じゃない!酷いじゃないですか!」「いやぁ、きみが怒るのも無理ないよ。マジごめんね♡」。気が弱く、しかも女性に免疫のない主人公は口ごもる「えっ、えーと……そう謝られるとアレですが……」。

嘉村 主人公、弱っ!

三葉 とまぁそんなやりとりの後……「お詫びの印っつーことでさ、パンパカパーン!あんたを異世界に転生させることになりましたー!」「いっ、異世界!」「そうそう。しかもチート能力付き!」「チート能力!」「どうよ!」「さっ、最高ッス!」。

嘉村 なるほど。

三葉 かくして、主人公は異世界に転生した。……が、その後の彼の素行はあまりに酷かった。先ほど申し上げた通り、チート能力を使ってのやりたい放題です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 元来大雑把な天界ですが……主人公の言動はあまりにも酷い。目に余るものがある。さすがの女神も嘆息する「マジサイテー」。天界は決断しました。あの男は、世界にとって有害である。ぶっ殺せ!

嘉村 ふーむ。つまり、主人公を襲撃する「敵」の正体は……。

三葉 ええ、「天界からの刺客」です。

嘉村 と言うことは、いま主人公が対峙している敵のリーダーは……。

三葉 はい、「女神」ですね。

嘉村 ははぁ……。

三葉 そして、主人公が記憶を失ったのは、「敵 = 天界からの刺客」との戦いの中で頭を強打したためでした。一命をとりとめたものの、主人公は過去のことをすっかり忘れてしまっていた。

嘉村 なるほど……。

三葉 要するに……一見すると、「主人公 = 善」「主人公に襲いかかる敵 = 悪」に見えますが、実際には「主人公 = 悪」「主人公に襲いかかる敵 = 神 = 悪を罰しようとする善」だったのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 「ボーン・アイデンティティー」と比較すると以下のようになります。


画像7


三葉 いまや真実が明らかになりました。そして……主人公は強いショックを受けた「ううっ……元の世界ではいいとこなしの哀れな人生を送り、最期もやっぱり哀れなものだった。それを憐れんだ天界によってチート能力を授けられ、そして転生したかと思えば、今度は調子にノリまくって神罰を下されようとしている」。主人公は赤面する「うぉー!オレは恥ずかしい!自分が恥ずかしい!人間として恥ずかしい!」。

嘉村 ……。

三葉 主人公は「もう放っておいてくれ。オレは1人、ひっそり暮らすよ……」と言い残すと、肩を落として去っていきました。女神が呟いた「あまりに哀れで、殺意が失せちゃったよ……」。で、物語は幕を閉じます。

嘉村 ふーむ。確かに「ボーン・アイデンティティー」の構造を応用したストーリーではありますが、随分とまぁアレですねぇ……。

三葉 以上、「『ボーン・アイデンティティー』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


続きはこちら!!

---🌞---

関連

---🌞---

最新情報はTwitterで!

---🌞---

 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!