例えば「解放感から始まる異世界転生」。「大きなイベント → 解放感」から始まる物語には説得力がある|「女がコンビニで豪遊する話」
三葉「21世紀マンガスタディーズのお時間です。傑作マンガをご紹介し、その面白さの秘密に迫ってまいります」
清水「はい」
三葉「本日取り上げるのは……こちら!」
おかだきりん「女がコンビニで豪遊する話」
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登場人物紹介
・清水:マスター・オブ・アニメ。年100作以上のアニメを見続けて20余年。マンガも大好き。『ジョジョ』のスタンドの中で1番好きなのは『スタープラチナ』。
・三葉:清水とは中学からの友人。最近ハマっている曲は『ささみさん@がんばらない』の「Alteration」。神様のイタズラ。
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三葉「いかがです?面白いでしょ!」
清水「ほぉ、一見エッセイ風のマンガですね」
三葉「そうですね。そしてこれが実話なのかわかりませんが……すごくリアルに感じるんですよね!」
清水「確かに」
三葉「『あー、こういうことあるよねー!』みたいな!」
清水「ふむ」
三葉「でね、この『リアル感』……『共感』とか『思わず膝を打ってしまう感』なんて言葉でもよいのですが……とにかく、どこからそう感じるのか考えてみたんですよ」
清水「ほぉ」
三葉「本作でいえば、『大きなイベント』は卒論発表ですね。発表が終わり、強烈な解放感を覚えているのが冒頭のシーンです」
清水「ふむ」
三葉「また、『普段とは異なる言動』に該当するのはコンビニでの豪遊。最後の『ついうっかり眠ってしまい、翌朝起きるとすべてを忘れていた』というオチが『何らかの出来事』です」
清水「なるほど」
三葉「でね、本作とまったく同じように『卒論発表 →解放感 →コンビニで豪遊』という経験を持つ人はあまり多くないかもしれませんが、『解放感から変な言動をしてしまった』ことがある人って結構多いと思うんですよ」
清水「ふむふむ」
三葉「具体的なエピソードは人それぞれだとしても、そのベースにある構造=『物語の仕組み』には普遍性がある。だからこそ『あるあるー!』と共感を得やすい……と、このように考察した次第です」
清水「なるほどねぇ」
やってみよう!
三葉「ここからは……みなさんご存知!『やってみよう』のコーナーです」
清水「はい」
三葉「前述の『物語の仕組み』を使い、私たちも物語を作ってみましょう」
清水「承知しました」
三葉「読者のみなさんもぜひご一緒に妄想を!」
【やってみよう①】運転免許取得
三葉「では、まずは私のアイデアからご披露しましょう」
清水「どうぞ」
三葉「テーマは……運転免許取得!」
三葉「『大きなイベント』が『念願の運転免許取得』、『普段とは異なる言動』が『負けるとわかっていながらお金を使いまくる』です」
清水「うん、それはわかるんですが……えー、『ダメな台だとわかっていながら財布の中身をすべて使い切るまでやめられない』なんてこと、あり得ます?ダメだと思ったら他の台に移動するのでは?いや、私はギャンブルをしないので詳しいことはわかりませんが……」
三葉「ふっ!」
清水「?」
三葉「ギャンブルのイロハも知らん小僧が!口はばったいわ!」
清水「!?」
三葉「いえね、パチンコでも競馬でも競輪でも競艇でも、あるいはカジノでも何でもよいのですが、間違いなくこういう心理は存在しますよ」
清水「ほぉ……断言しましたね」
三葉「ええ。だってコレ、私の実体験ですから」
清水「……実体験かよ……」
三葉「もう10年以上前の話ですがね……当時の私はセミプロレベル。手前味噌で恐縮ですが、台の調子を見抜くことなんて朝飯前。そんな私がアホみたいな台にジャブジャブお金をツッコむ……まぁ、正気の沙汰ではありません。ズバリ『解放感』ゆえの『普段とは異なる言動』といえるでしょう」
清水「……ハハァ……」
三葉「もうね、勝つとか負けるとかどうでもよい気分なんですよ。強いて言えば『散財したい気分』。お金を使うことが気持ちよいと言いますか……」
清水「……はぁ」
三葉「『よっしゃ、負けた負けた!おかげさんで財布が軽いぜ!さぁて、帰ってひと眠りするか!』なんて小ざっぱりした気分でして」
清水「……うーむ。じつに男らしいですね」
【やってみよう②】ゲームセンター
清水「続いて、私がまいりましょう」
三葉「待ってました!」
三葉「なるほど!ゲーセン!」
清水「そうそう。いかがです?」
三葉「わかる気がします」
清水「でしょ?……まぁコレ、私の実体験なんですけどね」
三葉「……うん、そんな気がしていましたよ」
物語の始まりとしての「解放感」
三葉「ところで……」
清水「ええ」
三葉「本作は短編なので、『普段とは異なる言動 → 何らかの出来事』で終わっていますが」
清水「ふむ」
三葉「コレ、長編作品の冒頭にもなると思うんですよ」
清水「ほぉ!」
三葉「例えば、本作であれば……」
清水「『朝、目を覚ますと部屋ごと異世界に転移していた』とか、そういうことですか?」
三葉「そうそう!」
清水「あるいは前述の『ゲームセンター』であれば、『たまにはプリクラでも撮ってやろう』と思い立つ。撮影後、カーテンをめくると……なんということでしょう!そこは異世界でした!……とか」
三葉「……隙あらば異世界転移しますねぇ……」
清水「まぁ、それが昨今のラノベやアニメの流行りですから。トレンドは積極的に取り入れていかないとね」
三葉「……とにかく、『普段とは異なる言動』ゆえに、非日常的な事件に巻き込まれたり、普段は接点を持たない人との関係が生まれたり……いかにも物語が始まりそうでしょ?」
清水「確かに」
【やってみよう③】受験
三葉「再び『やってみよう』のコーナーに戻りますが……『解放感』を覚えるシーンといえば、他にも様々考えられますよね」
清水「ふむ。例えば『受験』なんてわかりやすい例でしょう」
三葉「うん。1年、人によってはそれ以上勉強づくめになるわけですからね。そりゃ解放感は大きいでしょう」
清水「ええ」
三葉「そして、受験に成功し、解放感からハメを外すなんてこともあるでしょうね」
清水「ふむ」
三葉「その結果、過去へタイムスリップしてしまう」
清水「ほぉ」
三葉「辺りを見回すと……そこは1年前の世界だった!再び受験勉強の日々だ!……とか」
清水「……地獄じゃないですか」
三葉「そして1年後。何とか再び合格するが、またもや強烈な解放感を覚えて……」
清水「いやいや、そこは自制しましょうよ」
三葉「人間ってのはね、そんなに合理的にはできていないんですよ」
清水「うーむ……」
三葉「かくして彼は何度も何度も受験勉強を繰り返すのでした……なんてね」
【やってみよう④】出産
三葉「他にはいかがでしょう?」
清水「んー……『出産』なんてどうです?」
三葉「ほぉ……」
清水「いえね、経験がないのでわかりませんが……赤ん坊が無事に生まれたら、多幸感と共に大きな解放感を覚えるんじゃないかな、と」
三葉「なるほど。その解放感ゆえにじっとしていられず、出産直後、看護師の目を盗んで病院を抜け出してしまうわけですね」
清水「えー……」
三葉「生まれたばかりの赤ん坊を小脇に抱えて走る新米ママ!」
清水「新生児の安否が気になりますね……」
【やってみよう⑤】配偶者の死
三葉「ああ、そうだ!」
清水「どうしました?」
三葉「『解放感』のきっかけになるイベントとしては、『配偶者の死』もアリですね」
清水「『配偶者の死』ですか……」
三葉「いや、残酷な話ですが……現実的にこういう感情はあり得ると思いますよ。特に夫が先立った場合でしょうね。『夫が死んでも、あまり悲しがっているようには見えない妻』とか。『寧ろウキウキしている風に見える妻』とか。『夫と同じ墓には入りたくないと言い出す妻』とか。少し脇にそれると、『熟年離婚』なんて言葉もありますしね。あるいは一昔前の流行語で『ぬれ落ち葉家族』とか」
清水「うーむ……男としては耳が痛いですねぇ」
三葉「夫の死後、妙に若々しくなった奥さんが大冒険しちゃうんでしょうね……」
【やってみよう⑥】子どもの結婚
清水「最後に、もう少しハッピーな話をしません?」
三葉「ふむ」
清水「そうだな……『子どもの結婚』はいかがでしょう?親からすれば1つの区切り。まさに感慨無量の時ですよね」
三葉「あー、確かに!」
清水「大きな解放感を覚えても不思議はないでしょう」
三葉「なるほどなるほど。で、その解放感ゆえに熟年離婚に至るわけですね」
清水「……」
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(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)
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