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読書感想 『美容は自尊心の筋トレ』 長田杏奈 「自分を大事にする、具体的な方法」

 美容、という言葉の響きは独特で、他の単語と間違えにくく、そして、昭和生まれの男性にとっては、とても縁遠い言葉だった。

 最近になって、肌にニベアの「青缶」を使うようになったものの、それだけの小さすぎる経験では、とても理解できないことが、「美容」という二文字に入っていて、そして、広がっていることに、いろいろなことを知るたびに、分かっていたような気になっていた。

 だけど、そこからさらに、もっと大事なことまで、この本は、これだけ「美容」に縁遠い人間にまで教えてくれたように思った。

『美容は自尊心の筋トレ』  長田杏奈 

 美容というと、男性だと、どうしても「お化粧」みたいなことに狭く考えてしまうが、それが、とても固い考えで、どこかとらわれていて、「美容」は、まずは、自分を大事にすること。それを繰り返し伝えてくれているように、読んでいると、思えてくる。

 それも、ただ正論を振りかざすように語ってしまっては、受け取る側の気持ちを構えさせてしまいがちだから、どうすれば、少しでも柔らかく伝わるのか。それこそ、(実感として分からないので、表現が下手ですが)、化粧水が肌に染みていくようなことを目指しているようにも感じた。

 だから、とても正しいことを、もしくは冷笑の餌食になりそうなことを、あえて、「フーテンの寅」(昭和時代に一世を風びした渥美清の、憎めない少し道を外れた男性)の口調も交えて、書いている。

 「バカを言っちゃあいけねぇよ。自分のことブスなんて言うもんじゃねぇ。世の中にちょうどいいブスなんかいねぇんだよ。おまえさんもあたしも、生きとし生けるもんは、みんな美しいんだ」。私は、筋金入りの全員美人原理主義者だ。これは気休めや綺麗事ではない。人を雑に見ているからでも、美意識のタガが緩んでいるわけでも決してない。人間をよくよく見つめて育ち、美容ライターとして目と神経を磨き鍛えた結果、美の抽出精度が高くなったのだ。自分の審美眼を誇りに思っているし、あわよくばおすそ分けしたいと目論んでいる。

 これが事実として伝わっていくことで、その方が、確かに世の中は、ほんの少しでも生きやすくなるような気がするのは、この言葉の真剣度が、やはり高いと言うことかもしれない。

美容のダークサイド

 当たり前だけど、生きていると、どんな人にも、いろいろと大変なことがあるのは、少し想像できるようになる。

 美容ライターという仕事に関しては、全く知らないので想像するしかないのだけど、考えたら、美しさについては、通常レベルよりも、感じたり、考えたりすることも多いだろうし、その土俵に嫌でも自分もあげられてしまうようなこともあって、楽しいことばかりでもないのではないか。と思うのは、こうした文章からも伺うことができる。

 確かに「美容」にも、ダークサイドはあると思う。あるホームパーティで20代の女の子がK―POPのガールズグループのMVを流して、彼女たちの魅力について熱心に語ってくれたことがあった。お人形のような綺麗な顔にすらりとした容姿で、バキバキに踊って歌う眩しい姿を「美の暴力」と表現していた。圧倒的な美は、ときに私たちを魅了しながら、一方で打ちのめすことがある。 

 こうしたことだけでなく、美しく生まれたことによって生じる大変なこと。自虐のこと。若さの価値などについて。そうした美に関する、決して明るくない部分なども描写されているので、美容についてのポジティブな表現も、さらに説得力が増すように思った。

自分を大事にする、ということ

 「美容」というと、より美しく見せるといった方法なのだと思いがちだし、確かにその側面はあるのだろうけど、著者の視点は、そのもっと基本的なところを、丁寧に伝えてくれている。

美容は、自分をやさしく扱う練習

 気がついたら、二の次になりがちな自分自身に対して目を向けること。それは、自分を大事にする、ということになるのだけど、普段は、抽象的になりがちな、そのことを、具体的なことを通して、身につけていくのが「美容」なのかもしれない。

 たとえ自分の見た目が気に入らなくても、ないがしろにせずに心の声に耳を傾け、面倒を見てあげよう。鏡を見て120%満足したり、人前で自信が持てるようにならなくても、自分を大切にすることはできる。

美意識という力

 著者は、について、幅広い話題に触れながらも、さらに、機会があれば、そうした価値観や意識全体を、自分自身で更新することを促しているように思える。

 そして、著者自身が、その長い過程をたどったことによって、こうした見えにくいものまで見えるという、そんな段階まで、到達しているのかもしれないと思わせる。

 困っている人にやさしく手を差し伸べたり、帰り道の風の気持ちよさや夜空に浮かぶ月に目を細めたり。そういう思いやりやみずみずしさは、本人には見えない雰囲気や空気感としてその人の魅力を構成している。そして、毎日どうにか生きているというだけでも、命の健気さと尊さがキラキラと舞っている。やさぐれた日々が続いても、運や状態が悪いだけで、本来的な美しさ自体は損なわれていないから、どこからでも立て直すことができる。私は写真が下手なので証拠を見せられないけれど、みなさんには写真や鏡では捉え切れない美をもっと信じて、大船に乗ったつもりで胸を張ってもらいたい。

 大げさかもしれませんが、私は、とても美しい表現だと思いました。

お勧めしたい人

 もちろん、自分を大事にするという意味での「美容」に関して、お勧めのコスメや、道具(この言い方は違っていたら、すみません)の必要不可欠な情報も紹介されています。

 また、僭越かもしれませんが、性別を問わず、「自分を大事にすること」が分からなくなっている方にも、読んでいただきたい1冊だと思います。




(他にもいろいろな記事を書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。



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