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「ラー油」の底力。

 いつのころから、まったく記憶にないのだけど、気がついたら食卓には「ラー油」があった。

 それは、自分が小さい頃、まだ実家にいたときも、ずっと「ラー油」は自然にそばにあって、少し冷静に考えたら、カタカナと漢字の組み合わせも不自然だけど、あまりにもずっと使ってきたから、「辣油」と書くことを知っても、その漢字が難しいし、今でも「ラー油」という表現が自然なままだ。


ぎょうざ専用

「ラー油」の存在が不思議なのは、料理に対して意識や技術が高いと違ってくるのかもしれないが、私にとって「ラー油」は、使用頻度が低いのに、ずっと家にあることだ。

 家でぎょうざを、昔は母親に作ってもらい、今は妻に用意してもらっているけれど、その時だけ、私はしょうゆを小皿に入れて、そこに「ラー油」を入れる。かなり多めに入れることもある。妻は、そこにお酢を多めに入れているのだけど、私はあまり入れない。

 だけど、ぎょうざを食べるときに、「ラー油」がないと物足りない気持ちになるのは、幼い頃から、自然な習慣としてずっと続けてきたからに違いない。

 それでも不思議なのは、このほぼ「ぎょうざ専用」の調味料とも言える「ラー油」という存在は、他の料理にはあまり使わないという意味では、ぜいたく品とも表現できるのに、なぜか、どこにでもあるような印象があることだ。

 個人的には育ってきた家庭もそれほど裕福とは言えなかったし、現在は、私の経済力が足りないせいもあって、かなり貧乏なままだ。

 それでも、「ラー油」は台所にあって、なくなったら買い足している。

 ある料理専用の調味料が、ずっと家にあるのは、豊かなことでもあるのだけど、そのことを忘れるくらい自然に家にある。

 考えたら、すごいことだと思う。

「食べるラー油」

 こうした記事によると、「ラー油」には意外と複雑な由来があったりするし、2000年代からは、「ラー油の進化」とも言えることがあったようだった。

 転機になったのは1990年代。六本木にある四川料理のお店のオーナーシェフが、香り高いラー油を開発しました。

 しらしめ油(菜種油を精製した油の商品名)に陳皮、八角、花椒、桂皮などを入れて、あらかじめ油に香りをつけておき、唐辛子の粉は水ではなく桂花陳酒というキンモクセイの香りのするお酒で練ります。

 そうして作られたラー油はルビーのような深い赤色で、辛いけれども香りと旨味が強く、「飲めるラー油」となるのです。

(「Retty」グルメニュースより)

 こうした外食のことは、知らなくても仕方がないかもしれないが、家庭用でも変化があったことまで、無知なままだった。

 家庭用のラー油は、2000年代に入ってから大きく変わります。

 2000年に発売された、石垣島の辺銀食堂の「石垣島ラー油」が、じわじわと口コミで人気を集め、マスコミ等で紹介されたことなどをきっかけに2004年頃から流行しました。

 これらのラー油のブームにより、外食でも内食でもラー油に対する使い方の意識が変わっていきました。

 単に餃子のタレに使うだけではなく、さまざまなものに少し加えてみるようになっていったのです。いわゆる「ちょい足しブーム」ですね。

(「Retty」グルメニュースより)

 こうしたブームも知らないままだったのは、やはり恥ずかしながら貧乏なゆえの情報への弱さも関係あるとは思うものの、そんな人間にも確実に届いたのが「食べるラー油」だった。

 そうした中で登場したのが、2009年に発売された桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」です。
 フライドオニオンとフライドガーリックがたっぷり入った、「具材を食べるラー油」は爆発的ヒットとなりました。

(「Retty」グルメニュースより)

 この時のことは覚えている。興味を持って購入しようとしても、売り場から姿を消す、という表現が本当だと思ったからだ。

 今でも、時々食べたくなるけれど、それはブームではなく定番として定着したような印象もある。

ぎょうざの力

 だから、定番だけではなく、今は思った以上の「食べるラー油」のバリエーションがあるようだけど、これだけ定着したのは、やはり、「ラー油」が、ぎょうざの時にしか使わない調味料だった時代から、ずっと食卓にあり続けてきた、という底力があってこそだと思う。

 それでも、どうして「ラー油」だけが、専用調味料として、ずっと強かったのかは、本当のところはよくわからないものの、それは、やはり昔から今も、ぎょうざが、驚くほど多く食べられ続けてきた、ということなのもしれない。




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