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【書評エッセイ】人間による美しい経営。

2019年5月、イタリア中部ウンブリア州のソロメオ村で、ひっそりと開催された、この村に本社を置く高級カシミヤ製品メーカーの創業者ブルネロ・クチネリを囲む三日間の対話集会に集まったのが、ジェフ・ベゾスを始めとしたツイッター、セールスフォース、リンクトイン、ドロップボックスなど名だたるIT企業の創業者やCEOなど15名だったいう。

そのブルネロ・クチネリさんの本が、今回ご紹介する本書である。

しかし、この企業の根幹にある経営理念はこれらのIT企業のそれとはちょっと違っている。

人間性をベースにした、哲学・芸術・美に根差す経営である。

今最先端の上記のIT企業経営者たちが、はるばるイタリアの片田舎まで出かけてまで学びたい経営がクチネリさんの経営なのだ。

クチネリさんの根底に流れているのは、子供時代の周りの自然、そして両親からの教えである。

その土台の上に、古代ギリシャ・ローマ帝国・ルネッサンスなどの哲人の教えを幾層にも積み上げている。

いつも通り「素敵な箇所」をKindleでハイライトしながら読んでいると、すべてハイライトしてしまいそうな勢いだったので、「特別素敵な箇所」だけにハイライトすることにした。

その一部をバラバラと引用してご紹介させて頂く。

人々は文明の発展によって星や空を見上げることをやめ、毎日を漠たる不安の中で生きています。しかし大空に虚心に向き合えば私たちの小さな一日一日が、道徳的にも一市民としても、精神的にも経済的にも、幸福な明日に繋がっていると感じることができます。
君のビジネスマンとしての倫理と才能に高い信頼を置いている。それだけで十分な理由でしょう。お金のことは気にせず、いつまでも今のように穏やかに働いて欲しい。我々の希望はそれだけです。
その間、私はひとりで父の教えを思い出していたのです。本物の人間にならなければ他者の尊敬など得られない。勇気を持って、真剣に、裏表なく行動しなさい。それが自分自身と他者の尊厳を守ることになる。大きな夢がもたらす人間の心の変化は何と素晴らしいものでしょうか。
夫であり父であるという体験は、強く、美しいものです。
誠実さは倫理的に価値があるだけでなく、ビジネスをシンプルに進めるのに役に立ちます。

サイトを覗いてみた。

素敵なアイテムがたくさんあるが、ジャケットが50万円ぐらいしているので、そっとページを閉じた。

このタイミングでこの本に出会えてよかった。

「お前は、この本絶対読め」と勧めてくれた読書メンターのみなさんに感謝。

この本は、改めて仕事について考える機会を与えてくれた。


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