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ブータンの学校の進級システム、試験について

クズザンポーラ!(こんにちは)
今日は、ブータンの学校の試験(2019年時点)について紹介します。

ブータンの学校は、新学期が2月始まり、11月終わりの2学期制。
2月〜6月の1学期、7月は夏休み。
8月〜11月の2学期。11月半ば〜2月の始めまで冬休み。

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休みが長いですが、みんな実家に帰って農作業の手伝いをしたり、のんびりと家族で過ごします。

夏休み前の6月末と、冬休み前の11月半ばに年に2回の大きな試験があります。
Midterm examとFinal Examです。

ブータンは実はとても学歴社会で、ClassPP(PrePrimary)に在籍する子でも、この2回の試験の成績が芳しくなければ留年します。
何年でも、何回でも留年します。
そして留年者は”Repeater”と呼ばれます。

Class PP〜Class3までの低学年の子どもたちは、
ゾンカ語(国語)・英語・算数の3科目の筆記試験です。

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 カンニング防止のため間隔を空けます。

Class4からは社会科や理科のような科目も増えます。
ゾンカ語以外は英語での記述になります。
日々の授業も、ゾンカ語の授業以外は全て英語で行われています。


私が勤めていた学校は、農村の中にある学校でした。6割が農家の子、3割がParoのArmy Campから来ている子、1割が教員の子どもでした。
まず、農家の子どもたちは、両親がほとんど英語が話せません。また、定期的な現金収入がある家が少なく、衛生や、教育に対する意識が高いとは言えませんでした。
Army(ブータン軍)の家は、国から豊かな援助を受けているため、子どもたちの身なりや持ち物を見るとArmyの子だなと分かります。また、親もエリートです。小さい子でも英語が堪能な子が多いです。
教員の子どもたちは、ほとんどが常にトップの成績です。
親が同じ学校で教員をしているので、入学時から全教員にとても可愛がられ、一目を置かれる存在です。
私の目から見ると、生まれる家によって大きな教育格差がある印象でした。

Midterm Examは教員の手作り、Final Examは国で統一されています。高学年になれば、丸つけも違う学校の学校で違う教員が行ったり、低学年でも担当外の教員が丸つけをしたりして、できる限り採点側に不正のないように工夫されていました。

ブータンの学校の教室は電気が通っていないところも多く、(私のいた学校はPrimaryだったからか、全ての教室に電気が通っていませんでした。)外の方が日差しで暖かいため、外で試験が行われます。
FinalExamのある11月はすでにとても寒いため、小さなクッションや下敷きに使うボードなどをそれぞれ持参して、試験を行います。

高学年Class5と6は、定規や分度器・コンパスなどを使用することもあり、机を使っていました。

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クラスごとにまとまる。終わった人から帰宅。

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ClassPPの子どもたちの「試験の練習」の様子。

入学したばかりのClass PPの子どもたちは、「テスト」というものを知りません。しかし、6月末に容赦なく試験は行われます。そのため、テストのためのテストを続けます。入学したてですが、母語ではない英語の試験もあります。

進級のかかっているFinalExamが行われる頃にはアルファベットを全て書けるようになっているので、問題のレベルもグンと上がります。齢6歳の子どもが解くには難しい英語の問題だなぁと思いますが、こうやって鍛えられているのでブータンの人たちは英語が上手です。
先生たちは声を張り上げて問題を英語で読み、子どもたちは必死に聞き取りながらテストに臨んでいました。画像5

難しい前置詞の問題も、絵を見ながら解きます。

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英語の試験。先生が問題を読みます。

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「B」から作られる言葉を4つ絵に表す問題。ここではスペルではなく、画力も問われています。

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何度も似た問題を授業で解いています。

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公用語であるゾンカ語は、主に西ブータンの話し言葉として使われています。教員であっても、全てを読んだり書いたりすることはとても難しい言語だそうです。英語の方が読み書きが簡単、しかも世界で通用するということで、ゾンカ語に苦戦する子どもたちがとても多いことが問題になっていると聞きました。

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試験の結果は、親が取りに来ます。FinalExamでは12月の国民の休日に、進級できるかできないかが分かります。緊張の日です。
成績は1位から最下位まで壁や教室のドアに張り出されます。(落第した子ももちろん張り出されます。)

1位〜3位の男女は表彰され、ちょっとした賞品をもらいます。クラスで成績一位の男女はクラスキャプテンとなり、教員の手伝いをしたり、クラスをまとめる仕事を任されます。

Class9と11になると大きな試験があり、高校に行けるか、大学に行けるかの将来が決まります。こちらは落第すると就職を考える必要があるので人生がかかっています。
年に2度のシビアな筆記試験で、学校生活の序列や進級が決まります。

どの国で生まれ育っても、子どもたちは一生懸命学び、目はキラキラしています。そして、それぞれの「やらなければならない」試験や課題に向かいます。どうか、一人ひとりの才能や良さが引き出される環境でありますように。子どもに向き合う大人たちはいつでも、現状や時代に合わせて、柔軟になりたいものです。

私は2019年7月までブータンの学校で働いていました。
ブータンの2020年度は2月に始まる予定でしたが、コロナウイルスの影響で「今年度は学校を開かない」と国が決めています。そのため、2019年10月に行われたFinalExamのあと、現在2020年9月、すでに約1年間学校は開かれておらず、授業は行われていません。

この現状の中で、それぞれの学校で工夫して課題が出されているようなので、それはまた別の記事で書きたいと思います。

Ai







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