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AI無知倫理学マガジン創刊のお知らせ

はじめに

 このnoteは #AI倫理 に新たな視点をもたらすことを目的に立ち上げられました。これまで、AI倫理に関してはハードカバー書籍五冊分以上に相当する技術解説や記事を提供してきましたが、当初の計画では全ての記事をAI倫理関連にする予定でした。そのため、 #AI無知倫理学 マガジンの発行を見落としていたことに、最近になって気が付きました。そこで、読者の皆様により読みやすい形で提供するため、『AI無知倫理学マガジン』を創刊し、これまでの散在していたAI倫理関連記事をマガジンフォルダーにまとめることにしました。

 筆者である武智倫太郎は #情報工学 の専門家で、 #システム開発者 かつ #経営者 でもあります。金儲けを目的とすれば、『AIで一夜にして富豪に! 生成AIの秘密』や『成功保証付き! AI事業の成功法則』、『誰でもできる! AIで不労所得を得る究極の方法』、『27歳でリタイア実現!AI事業家の成功軌跡』などのAIブームを煽るコンテンツの作成も可能です。

 しかし、筆者は意図的にこのような内容を避け、多くの人が関心を持たないAI倫理の深層に焦点を当てています。なぜ利益につながらない記事を書き続けているのかについては、以下に詳しく説明していますので、是非ご一読ください。

困難な課題に取り組む楽しみ

 1990年代初頭の日本のバブル景気崩壊前後において、日本人のメンタリティに大きな変化が生じたと感じています。バブル崩壊後の『 #失われた30年 』とも呼ばれる時期を経験した現在40歳未満の方々は、物心ついた頃から日本が凋落する様子のみを目の当たりにしているので、日本が発展するイメージを掴むのが難しいと感じている人も多いでしょう。

 本稿では筆者の1990年代から2010年代にかけてアメリカでの生活経験、その後の #ASEAN諸国 #湾岸諸国 #アフリカ諸国 での長期滞在を通じて培った外国人の視点から日本がどのように見えるかについての私見を述べます。

 日本人の美徳の価値観が崩壊し始めたのは、1990年前後のバブル景気の影響が大きいと考えます。バブルの上昇期には、特に不動産投資や株式投資など、様々な分野で容易に利益を上げることができていました。当時の日本のマスメディアは、『東京23区の不動産価値だけでアメリカ全土が買える』と報道し、日本が世界一の国だと盛んに伝えていました。

 このような環境では、まじめに働くことがばかばかしく思え、楽して儲ける方法に人々の関心が集まり、それまで多くの日本人が大切にしてきた、『誠実』、『努力』、『勤勉』、『忍耐』、『謙虚』、『義理』、『節操』、『家族愛』、『協調性』、『自己犠牲』、『持続性』、『自然愛』、『教養』、『責任感』、『潔さ』、『責任感』といった『美徳の概念』が根本的に損なわれた印象があります。

 近年、日本の若い世代がよく使う『 #ライフハック 』、『 #タイパ 』、『 #コスパ 』、『 #不労所得 』といった言葉の端々に見られる共通のテーマは『どうすれば楽して儲かるか』という根本的な概念です。これらのテーマを扱う教材やノウハウがよく売れていますが、前述の『美徳の概念』が根底から壊れており、多くの販売されている本やnoteのコンテンツは、『誠実そうに見せかけるテクニック』や『顧客から信頼を得るノウハウ』などを扱っています。これらは内容がない人が、あたかも内容があるかのように見せ掛けるための表面的な技法に過ぎません。

 私はこのような情報を発信している人や、それを読む読者や視聴者を信頼や尊敬することはありません。楽して何かを成し遂げようとする人々は、物事の本質に辿り着くことは決してなく、逆に浅薄なテクニックを身につけることで大きな信用を失っています。

 もっと自分の立場で考えれば分かり易いはずですが、『武骨で不器用だけど本当に頼りになる誠実で信頼できる人』と『誠実で信頼されるテクニックに長けているだけで中身のない人』とでは、あなたはどちらと付き合いたいかを考えるとわかるでしょう。

日本人に著しく欠如している倫理の概念

 多くの日本人は #西洋哲学 #中国哲学 #道徳 、国内外の #歴史 #文化 #文学 #芸術 には高い関心を持っていますが、 #倫理 に関してはほとんど興味がありません。このことは、日本語のネット上の情報や出版されている書籍を分析すると顕著に見て取れます。

#エシカル 消費や #環境配慮 といった言葉が流行語になっている一方で、その多くは本来の倫理や #倫理観 から逸脱していることが見受けられます。これは、中身がないのに、中身があるかのように見せ掛けるテクニックの流行と本質的に同じです。

 五大陸の様々な国で生活経験を持つ私の視点からは、日本における個々人の倫理観は優れていると感じます。しかしながら、日本の文化は集団主義や和を重んじる傾向が強く、社会全体の調和や秩序を重視することが多いです。その結果、個人的な倫理的判断よりも、社会的な規範や期待に従うことが強調されることが多いように思います。

 企業や官僚、政治家の理念や倫理観に関して、彼らが倫理的だと考えている日本人は少ないでしょう。また、マスメディアや金融証券機関を含む大企業の #倫理観の欠如 #モラルハザード も目に余るものがあります。

 日本の教育システムは、行政と立法の影響が大きいですが、日本の学校の授業では、歴史や文化などの学問は広く教えられていますが、倫理学や道徳は避けられる傾向があります。特に、実践的な倫理教育や #批判的思考 を奨励するカリキュラムが少なく、倫理に対する興味や関心が育ちにくい環境です。

 日本の宗教観は、神道や仏教など多様な信仰が共存しており、これらの宗教や哲学は日常生活に深く根ざしていますが、倫理よりも道徳や生き方の哲学に重点を置いていることが多いです。そのため、倫理学が独立した学問として注目されることは少ないのかも知れません。しかし、社会の変化と共に、これらの伝統的な価値観も時代とともに進化し、新たな倫理的問題に対応する必要があります。

 また、日本社会では、社会的規範や暗黙の了解が強く働いており、これらが個人の行動指針となることが多いです。しかし、終身雇用制の崩壊などの社会的変化により、これらの暗黙の了解は通用しなくなっています。このような時代には、明確な倫理的な指針がより重要となります。

 日本の近代化は、西洋の技術や制度を積極的に取り入れることに重点を置いてきましたが、その一方で、倫理学のような抽象的な学問には関心が低い傾向があります。また、戦後の急速な経済成長や社会変革の中で、実用的な知識や技術が優先され、理論的な学問に対する関心が薄れがちです。

 さらに日本社会には、古くからの習慣や伝統が根強く残っています。これらの慣習はしばしば道徳的な指針として機能し、西洋的な倫理学を学ぶ必要性を感じさせないこともあります。しかし、グローバル化の影響により、多文化間の交流が増加している現代においては、日本独自の倫理観だけでなく、国際的な倫理観や異文化への理解が重要となっています。

 日本の企業や文化イベントが伝統的な意味を逸脱したビジネスになっていることも、倫理観の変容に影響を与えていると言えます。例えば、 #バレンタインデー #ホワイトデー #母の日 #父の日 #七夕 #ハロウィン #クリスマス などは、本来の意味とは異なる形で日本社会に定着し、伝統的な倫理観や道徳観を変える一因となっています。 #敬老の日 #勤労感謝の日 は、昭和23年に国民の祝日に関する法律で定められました。しかし、私は、特定の日に限定して老人を敬ったり労働者に感謝したりするのではなく、年間を通じて常に感謝の気持ちを持つべきだと強く感じています。

 日本の教育システムにおける倫理教育の欠如は、多くの日本人が倫理的問題への関心を持たない一因となっています。しかし、AIの普及に伴い、これからの時代においては、困難な倫理的課題に取り組む能力がより重要になります。AI倫理は現代の最も困難な課題の一つであり、この分野での知識と理解は、将来の社会において不可欠です。

 日本人の多くが倫理問題に対して関心を持たない理由は様々ですが、倫理的な課題に真剣に取り組むことは、個人の成長にとっても社会全体の進歩にとっても重要です。倫理的な問題を避けるのではなく、直面し、解決する能力を身につけることが、これからの社会において重要な役割を果たすでしょう。

『ライフハック』、『タイパ』、『コスパ』といった簡単な解決法に頼るのではなく、困難な課題に取り組むことで得られる成長と成果を目指すべきです。このような挑戦こそが、個人の能力を高め、より豊かな社会を築くための基礎となります。

 ウエイトリフティングやボディービルディングの世界で言われる『No Pain, No Gain』の精神は、倫理の分野にも適用されます。痛みを伴う努力を避けることで、本質的な成長や成果を得ることはできないのです。

 困難な問題から逃避する安易な考え方を持つ人々は、AIの普及によって社会的に不要な人材と見做されるリスクが高いです。簡単な仕事や発想ほど、AIによって代替され易いことは明らかです。そのため、AI社会を生き抜くためには、『一時的に楽をするテクニック』を求めるのではなく、長期的な視点で倫理的な課題に取り組む姿勢が、現代社会において特に重要となります。

 生成AIを用いて簡単に利益を得るといった浅はかな考えを持つ人々は、数年後にはその存在が忘れ去られる可能性がありますが、その状況に至った本人たちは、自分たちが社会から不要とされた理由に気づかないかもしれません。このような問題にどのように対処すべきかを学ぶことが、この『AI無知倫理学マガジン』の核心です。

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