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ガン告知について

①ロングセラー

闘病を扱ったロングセラーを読んだ。著者は東大教授だった人で、宗教学者。戦後、GHQが靖国神社を破壊しようとした時、反対して靖国神社を守った人のひとりとして知られている。50代でガン告知を受け、60代で亡くなった。


②告知

この書は1960年代の話で、当時の日本では、本人にはガン告知はせず、家族にしか告知しなかった。だが、著者は在米だったので、アメリカで告知を受けた。

 夫人の後書きに「主人の人生は短かった。」とあるが、当時の日本人男性の平均寿命は60歳代だったので、現在から見れば短くはあっても、当時としては、それ程短いとは言えない。だが、ガン告知のショックと闘病の苦悩を率直に記述しており、ロングセラーとなっている。当時のガン治療の水準で10年生きられたのは、なかなかに凄いことらしい。本人の執念と医師の努力の賜物である。

著者は宗教学者だったものの、宗教には頼らないと書いている。宗教に頼らないのは別によいのであるが、宗教の研究は、この人の実存とは無関係だったらしい。

著者は、また「人生は別離の連続だが、死は最大の別離である。」とも書いている。それは正しいとは思うが、そのくらいのことは、ガンにならなくてもわかることで、もう少し深い考察を書いて欲しかったと思う。

ただ、この本をきっかけにガン告知について考えた。

私の父は胃ガンの告知後、1ヶ月ほどで亡くなった。1ヶ月では何もできなかった。自分の最期を知って準備するのがいいという意見も承知しているが、ガンの場合だけ強調されているように思われる。脳卒中なら、そんなことは言わないだろう。告知の問題は病気の種類によって、異なっているようだ。

いぜん私は呼吸器内科で検査を受けたことがあり、幸いにも、命に関わる病気ではなかった。その時、隣の診察室から声が聞こえてきて、「ガンです。長期に渡る喫煙が原因です。」と医師に告げられると、隣室の患者の声は聞こえなくなった。やはりガン告知は、ショックらしい。

ガンだったのは、なぜ隣室の人で、私ではなかったのか。不条理な苦痛という言葉があるが、ガンになるかどうかは運次第だというしかない。だが、心の準備は、重い病気になる前からしておく方がよいことは確かであるように思われる。


お読みいただき、ありがとうございました。


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