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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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2017年7月の記事一覧

アーネスト・ヘミングウェイ 『全短編Ⅰ』

★★★☆☆

 言わずとしれた大作家ヘミングウェイの短篇集です。1996年に新潮社から出版されたもので、ハードカバーだとⅡまであり、文庫版では3冊になっているようです(さらに、収録順も微妙に違うようです)。
 ヘミングウェイの死後、遺族によって編纂された完全版だそうで、ヘミングウェイが滞在したキューバの地にちなんで"フィンカ・ビヒア版"と呼ばれています。
 翻訳者は高見浩。いろいろ訳されていますが

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アリス・マンロー 『善き女の愛』

★★☆☆☆

 2014年に刊行されたアリス・マンローの9冊目の短篇集。オリジナルは1998年に発表されたそうで、マンローは当時60代だったそうです。

 いつも褒めてばかりいるので、今回は気になったところを挙げたいと思います。マンローの小説には、個人的に気になるところがあるんです。それは登場人物の把握しづらさです。

 マンローの短篇にはしばしばたくさんの人物が登場します。それも5、6人が一気に

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橘玲 『幸福の「資本」論』

★★★☆☆

 6月に発売になった橘玲の新刊です。幸福(の土台となるもの)を3つの資本から設計するというコンセプトで書かれています。
 この手の本はどういうジャンルになるのでしょうね。マニュアル本ではないし、ビジネス本になるのでしょうか。

 本書では幸福の条件を「自由」「自己実現」「共同体=絆」の3つに定め、それぞれが3つの資本である「金融資産」「人的資本」「社会資本」と関係していると説きます。

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須原一秀 『自死という生き方』

★★★☆☆

 こちらも前回と同様、小説ではありません。健康にも金銭的にも何も問題がないにもかかわらず、65歳で自死を選んだ元教授の著書です。

 正直なところ、この著者が好きかというとそれほどでもないんですけど、65歳で積極的に自死を選んだという事実に興味を引かれました。死を選ぶに足る問題がないにもかかわらず、人生に幕を引く。その理由を知りたいと思ったわけです。

 端的に言うと、もう人生を十分

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